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【UFC ESPN29】クレイ・グイダと戦う、マーク・マドセン─02─「オリンピアンはライフスタイル」

【写真】マドセンはオリンピアンという人種なんだろう (C)Zuffa/UFC

21日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFC on ESPN29「Cannonier vs Gastelum」クレイ・グィダと戦う、マーク・マドセン・インタビュー後編。

デンマーク史上最高のレスラーで、グレコリオ五輪シルバーメダリストのマドセンは、全てをやり切ったレスリング人生のあとに、なぜMMAに情熱を注ぐことができるのか。

そして彼が「グレコの有効性」について、同じくグレコの五輪銀メダリストでありUFCでもミドル級の頂点に輝いたマット・リンドランドはどのように答えたのか。

<マーク・マドセン・インタビューPart.01はコチラから>


──マークはグレコローマンレスリングで輝かしい戦績を残していますが、そのスタイルとしてフリーやフォークスタイルと比較すると、アンダーフックの取り合いで足を触わることができないグレコの技術はMMAレスリングのなかで有効性は決して高くないのではないでしょうか。

「グレコローマンがMMAで効果的でない……それは僕も、実際のところ深く考えてきたことなんだ。そして君が指摘したように、フリースタイルやフォークスタイルとは別物だ。この2つのレスリングが、MMAで実効性があることは明らかだよ。そしてグレコローマンレスリングからMMAに転向したファイターは、決して多くない。

それでもランディ・クートゥアー、マット・リンドランド、ダン・ヘンダーソン、ジョー・ウォーレンがいる」

──米国のレスラーはカレッジまで、フォークスタイルをやり込んでいるかと思います。

「確かにね。だから、僕はUSレスリングのヘッドコーチを務めているマット・リンドランドに尋ねたんだ。彼が僕の住む、デンマークの小さなレスリングコミュニティを訪れてきてくれた時に。『マット、グレコの技術ってMMAでは実際のところどうなんだろう?』とね」

──ハイ。リンドランドの答は、どのようなモノでしたか。

「即答だったよ。『グレコを疑っているのかい? 冗談だろう(笑)。グレコローマンはMMAにとってパーフェクトだよ』ってね」

──本当ですかっ!!!

「僕はフリースタイルも、フォークスタイルも経験がなかった。でも、キャプテンがフリースタイルやフォークスタイルのアタックからの防御方法を伝授してくれた。フリーやフォークとは違う。でもレスリングという解釈の下では、グレコもレスリングなんだ。だから、僕はグレコの技術をもとにフリースタイルやフォークスタイルに順応し、そういうレスリングがベースにあるファイターと戦うことが、とてもチャレンジングなんだよ」

──グレコのレスラーたちは、あの限定された攻撃対象のなかで、その穴を見つけていくことで、どのコンバットスポーツのファイターと比較してもフィジカルに優れているように感じます。

「グレコローマンレスリングの経験は、MMAファイターとして他のレスリングやグラップリングを習得するうえで、とてつもないアドバンテージになっている。打撃にたいしても、そうだよ。MMAは全てのマーシャルアーツが、混ざり合っている。そして僕はグレコローマンレスリングの黒帯だ。ボクシング、打撃、グラップリングでもグレコで得た圧力は絶対的に武器になる。

MMAは体を使って戦う、チェスゲームのようなものだ。そして僕はこのスポーツのなかで、ベスト・グレコローマンレスラーだ。UFCでは素晴らしいボクサー、フリースタイルレスラー、フォークスタイルレスラー、グラップラーが活躍してきた。そして、僕がUFCで戦うことによって、その戦いにベスト・グレコローマンレスラーが加わった。

だからこそ、クレイ・グイダと戦えることが楽しみでならない。彼のようなレジェンドを相手に、僕がやってきたことが通じるのか、否か。しっかりと準備してきたし、凄くエキサイティングだ」

──グレコという五輪スポーツで、全てをやりつくしたと思いますが、なぜMMAのようなハードなスポーツに、それだけのモチベーションを持って臨むことができるのでしょうか。

「オリンピアンのライフスタイルだよ。なぜ、その競技に夢中になるのか。それは個々の競技を愛しているからだ。僕の人生は、直接は金を稼ぐことができないレスリングと常にあった。レスリングマットで戦っていたのは、金のためじゃない。レスリングを愛していたからだよ。技術の習得、体力強化、食事、睡眠、休息、全てがレスリングのためだった。その頂点を決める戦いに挑むオリンピアンにとって、競技を続けることが人生なんだ。

今、僕はMMAファイターだ。MMAは五輪競技じゃない。でも、僕にとって人生なんだ。死ぬまで、僕はオリンピアンだ。それが僕のライフスタイルだから。レスリング、MMAで戦うこと、それが僕の生き方なんだよ。それってサムライ、武士道と同じだろう? そして僕は一つのスタイルを究めた。同じようにMMAを戦っていきたい。

MMAを戦うことで、本当に多くのことが学ぶことができる。それこそが僕のモチベーションになっているんだよ」

──マーク、今日はありがとうございました。では日本のファンに一言お願いします。五輪直後ということもあり、五輪レスラーのMMAへのチャレンジはいつになくファンの間でも注目されるかと思います。

「日本のレスラーたちのハードワーク振りは、僕は百も承知だ。そして、彼らは今回の結果を残すことができた。それを誇りに思ってほしい。五輪は4年に1度の祭典だ。ただし、それは1日、1日、4年間積み重ねてきた日々の結晶なんだ。歯を食いしばり、没頭し、全てを捧げてきた日々の。

そして日本の皆が素晴らしい五輪を開いてくれたことを祝福したい。こんな状況で、よくあれだけのオリンピックゲームを遂行してくれた」

──日本、東京に住む人間としては、五輪だけが市井の人々の状況とかけ離れていたことに対して、どの競技も素晴らしかったがゆえに整理はつかないというのが本当のところです。

「だからこそ、僕に日本の皆を祝福させてほしい、感謝しているんだ。そのような状況で日本の皆は五輪のホストを務め、やり切ってくれた。この危機的状況で、日本の皆の勇気、忍耐力が五輪を最高のモノにしてくれたんだ。胸を張って欲しいし、そしてオリンピアン・アスリートに誇りを持ってほしい」

■ UFN ESPN29視聴方法(予定)
8月22日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC FIGHT PASS

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