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【Special】月刊、青木真也のこの一番:7月─その壱─平良達郎✖福田龍彌「ここ何年かで一番の期待感」

【写真】非の打ち所がない平良達郎のリクルートが問題になるのは、日本のMMA界も問題 (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年7月の一番、第一弾は7月4日に行われたShooto2021#04 から修斗世界フライ級選手権試合=平良達郎✖福田龍彌戦について語らおう。


──青木選手が選ぶ7月の一番、最初の試合は何になりますか。

「平良達郎✖福田龍彌ですね。平良選手はただただ強かったです。強い人の試合だと思いました。リスクを一切負わずにしっかりとテイクダウンをして抑えて、大きく構えている。横綱相撲というか。あの試合の創り方ができる人は、やっぱり凄いです」

──福田選手の得意とするところを出させず、立たれても離れず倒し直して最後は三角絞めを極めました。

「ハイ、強い人ができる独特の試合展開でしたね。色々な評価があると思いますが、僕が理想とする試合スタイルでした。彼はそういう意味でも、強いと感じました。それと現状で国内のMMAはバラけ過ぎていて、本当の実力は分からないという面はありますが……相手の福田選手はチョット可哀そうだというのはありました」

──可哀そうというのは?

「だって王座を獲得してから、1試合もしていないわけですよ。そこから最初の試合が1年後の初防衛戦というのは、気の毒でした」

──興行とはそういうモノかもしれないですが、あの試合は平良達郎のための試合でした。

「そこを含め、諸々が今に始まったことではないから、関西の選手たちも、現状を声にする必要はあるのなかっていうのはありますけど、ちょっと不運ですよね。それにしても福田選手はチャンピオンですからね……まぁDEEPに出て負けたから、というのはあるかと思いますけどね」

──他団体で出て負けると、プロモーターは使い辛いというのはあるかもしれないですが。

「なら、もともと暫定王座決定戦を前田吉朗選手と福田選手でやらせているんだから。その後でDEEPで負けたわけじゃないですよ。そこで勝った彼をそのままにしていた……というのは、どうかなっていうのはあります」

──外に出るなら勝ってこいというプロモーターの考えが、商売のためだけでなければ、プロモーターなのかマス大山なのか分からなくなりますね。

「ハイ、流派なのか競技なのか分からないということですよね。そこを曖昧にされると、選手として困りますよね」

──サステイン興行で試合が終わり、坂本(一弘サステイン代表)さんに頭を下げる選手がいる。それは榊原さんに頭を下げているのと同じなのか、大山総裁に押忍とやっているのか、あるいはシーザーさんに挨拶をしているのか……どれになるのか。

「あぁ、確かに。修斗はどっちなのかって」

──修斗が競技なら、アレは何なのか。

「修斗は競技っていう理屈でいえば、もう修斗はプロモーションですから。もう競技っていう理屈は通らない。とにかく福田選手は気の毒だし、平良選手もここで勝ったから、どうするの?  また宙に浮きますね」

──今後はUFCを筆頭に海外、RIZINという進路を考えているようですが、海外に関しては現状の日本は明確なステップアップ先が存在しないです。

「ハイ、この問題は皆が抱えているモノですね。平良選手も困っているでしょうね。UFCへすんなり行けないだろうし」

──このところ、UFCという機運が上がったのは上海のコンテンダーシリーズの存在だったと思います。秋口に行われると春ごろに出回り、結果なくなった。一気にこの話はトーンダウンしましたね。その時にコンテンダーシリーズがある、UFCが見えてきたと思っていた選手には、非常に間が悪い状態です。

「気運がないですよね。何をするにしても。ちょっと詰まってしまった感じがします。修斗のチャンピオンはONEへという約束があって、でも行っていないこともある。そういうことが重なって、平良選手がどうしたいのかも見えてこなくなりますね。

UFCに行きたいファイターが、この先にどうすれば良いのかという部分に関しては、もう見えないにも程があります。どうしたらや良いのか分からない……」

──そこはもう日本のMMA界全体の問題ですね。

「UFCに行きたいという気持ちで行ける時代ではなくなった。平良選手は勝ち方が素晴らしいし、ここ何年かで一番の期待感があるので……何とかして、UFCに行ってほしいのですが。

彼はただただ強いし、無敗でレコードも良いから一発で行けるかという淡い期待があった。その見方自体が、もう古いのかもしれないですね」

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