【Special】月刊、青木真也のこの一番、番外編─大坂なおみ問題─「仕事だから。互いのプライドがルール」
【写真】クレイ・グィダ戦後の日沖発、ドミニク・クルーズ戦後の水垣偉弥、エドゥアルド・フォラヤン戦後の青木真也──敗北のあとのインタビューは死者に鞭うつ行為なのか……青木に尋ねた (C)MMAPLANET
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。
青木が選んだ2021年5月の一番、第一弾……の前に、今回はプロテニス・プレイヤーの大坂なおみが問題定義した、記者会見の是非について青木に話を訊いた。
──青木真也が選ぶ2021年5月の一番の前に……大坂なおみ選手が会見を拒否したことについて、青木選手に話を伺わせて欲しいと思います。
「あぁ、でもそれはもう彼女の心の問題ではないですか。SNSでの発信力が強くなっていることは改めて、確認できましたけど」
──そこなんです。自分は決して自己発信が、全て真実だと思っていないです。メディアでありながら、メディアを信じるなとも思っていますが。とはいえ最初に彼女がSNSでアクションを起こした時、自分の記者という立場ではやはり考えることはありました。
「いや、あれ言うと仕事になんねぇじゃんって思いませんか(笑)」
──それでも青木選手を始め、数多くの選手の敗北直後に会見だけでなく、個別取材もしてきた人間として……あの行為は敗者に鞭打つ行為だったのかと自問自答しましたし、負けた選手に敗因を訊くことが「傷口に塩を塗る行為」だという意見を聞くと、「なら何もできねぇよ」と感じたのも事実ですし。
「敗因を聞かれるのは、当然だし。傷口に塩を塗ることにはらない。お互いに、仕事ですよ」
──これまでの習慣は古くて悪いものとされる。それが会見での取材になるともう取材できないし、気を遣ったばかりのモノになってしまう。別に浮気した芸能人の人格否定をするような話を、選手とするわけじゃないのに……。
「僕が試合に負けた時に、すぐにインタビューを申し込まれる。そこに応える。当たり前のことですよ。だって仕事なんだもん。なんか、都合良いですよ。権利、権利とか言い出すと。権利ばっかり主張するようになって、そこに同調してしてもねぇ」
──決め事があって、それを守らず罰金を支払う。あの罰金の額、年収の1/3、1/4という人もいるかと思います。
「その額を支払う、どれだけ大変なんだって人たちが実際にいるわけですからね。プロ意識と我がままは違います。もう心の病があると発表したから、彼女の行いに関しては口を挟みにくい空気が既にありますし」
──触れることができなくなりますよね。
「でも、我がままですよ。まず決められたことはやれよ。それに不満があるなら、話し合う。一方的に問題定義するようなことはルール違反です」
──共同会見は絶対にあるもので、それはきっと約束事です。そして個別取材は相手の了承がないと実現しないです。だからといって、それこそ相手を尊重しないで取材はできない。
「そこはお互いのプライドがルールですよ。互いを尊重することは大切で。でも、それ以上に取材を受けることは仕事だから。
高島さん、ファイターは勝つのだって仕事だけど、負けるのだって仕事ですよ。だから負けたからインタビューを受けないとか言っちゃうとダメなんですよ」
──これは私個人の考えですが、負けても話を聞きたくなる選手は確実に存在します。ただ、プロモーションも試合後の取材に関しては敗者をフィーチャーすることは、あまりないですよね。話を聞きたいのは、実は勝敗に依らないのに。
「結局、ドラマや物語って敗者のモノ。敗者のストーリーこそ聞くべきで、負けたから話をしないというのは勘違いしています。勝つのも仕事、負けるのも仕事。だから、いつも取材には答えないと。
ぶっちゃけていうと個別取材でなくて、Zoomで共同取材みたいなのがあるけど……アレ、僕だって無駄だって思っていますよ。通り一辺倒の質問しかなくて、やる意味があるのかなって思っています。でも、仕事だから」
──求められるから、その場がある。
「だから答えるんです。仕事だから」
──逆に合同会見で雛壇に選手が並んで、全く質問がこない選手もいるわけではないですか。自分は、アレは酷だなって感じるんです。
「でも、それですら座っていることが仕事ですよ。酷だろうが、座っていることを求められている。質問をされなきゃされないで、『仕方ない』って思ってその場に座っていることです。
それに今回の件はワイドショーとかのコメンテーターやMCが口にしているのは、大坂なおみにはこれまでの言動で複雑な問題が絡んでいて……。大坂なおみが女性でなければ、ああいう風な擁護はあったのかなって、ぶっちゃけ思います。
人種問題、男女平等とか色々あるじゃないですか、背景に。そんな彼女に乗っかっておけば、自分もオイシイというコメンテーターたちかと。フェミニズムに群がる男たちな感じがあって。なんか……正直、気落ち悪さがあります。
僕は自分の仕事に政治を持ちこむことはしない。だから、彼女のやり方もそういう発言をする人とも相容れないモノがあります。彼女のアレを認めると、『スポーツに竹島問題は持ち込むな』って言えなくなりますよね」
──BLMのとき、SNSで黒一色のメッセージを……というリクエストが実際にきました。その時、「日本人はアジア系の人たちを差別しているから、できない。まずは日本人が差別をなくさないと」って断ったんですよね。まぁ、これをここで言ってしまうことは政治に意見してしまうことになりますけど、キレーごと言うな。キレーごとを自らのPRにするな。MMAの記者なら、MMAのことを書け──というのは本当にありました。
「結局、BLMとフェミニズムも全て政治ですよ。僕は自分の仕事に政治を持ちこまない。
取材は仕事だから受ける。そして負けて一面を飾る人こそ、一流。以上です!!」