【UFC111】鉄壁GSP×穴のなくしたハーディ
27日(土・現地時間)、ニュージャージー州ニューアークのプレデンシャル・センターで行なわれるUFC111「St-Pierre vs Hardy」。実力者が集まるウェルター級で突きぬけた強さを示すUFC世界ウェルター級王者ジョルジュ・サンピエールに英国からダン・ハーディが挑む一戦がメインだ。
【写真】盤石の強さを見せ続けるGSP。「ハーディは最強のチャレンジャー」というのは社交辞令か (C) ZUFFA
昨年7月、チアゴ・アウベスの挑戦を退けて以来8カ月振り、4度目の王座防衛戦に挑むGSP。一度は失った世界王座を取り戻し(07年12月にマット・ヒューズを破り暫定王者となり、08年4月にマット・セラを下し王座統一)、ジョン・フィッチ、BJ・ペン、チアゴ・ピッチブル・アウベスと最強のチャレンジャーを相手に圧倒的な強さを見せつけベルトを守ってきた。
打撃戦で対戦相手のバランスを崩すと、今や五輪レスラー級の強さを見せるテイクダウンでグラウンドの攻防へ。パウンドを巧みに使い、相手を動かしながらポジションを奪取、さらに打撃を加えていく。
GSPの、常に互角以上のポジションをキープするスタイルによって、挑戦者は打撃のダメージを受け、不利な状況から脱出するために体力を消耗し続ける。まさに付け入る隙のないファイトを、最強のチャンレンジャー相手に見せてきた。
その鉄壁の強さの裏側で、「一つのミスで全てを失う」という気持ちを常に持ち続けている。絶対的な自信を持って挑んだセラとの防衛戦で、右フックをテンプルに受け、まさかのTKO負けを喫したGSPは、以来、心技体の全てに整った、さらに完璧なファイターに成長した。
実力者揃いのウェルター級戦線で、跳び抜けた存在となった王者に対し、今回の挑戦者ハーディは初めて「最強」という枕詞がつかないチャレンジャーといえるだろう。
日本の郷野聡寛を下してUFCデビューを果たすと、その後、4連勝で世界挑戦権を手にしたが、その対戦相手には世界王座挑戦経験者は含まれていない。挑戦者決定戦といえるマーティン・カンプマン戦を負傷欠場したマイク・スウィックを破ったことで巡ってきた棚ボタ的な挑戦ともいえる。
ウェルター級トップファイターのジョシュ・コスチェックなどは、公の場で「自分の方が挑戦者に相応しい」とコメントしているほどだ。
「僕はマーシャルアーチスト、ハーディは違う」とGSPも語るが、これはハーディのトラッシュ・トークに影響を受けた発言といえる。13歳でテコンドーを始め、格闘技の扉を開けたハーディは空手を経て、中国へ渡り、2ヵ月少林寺で修行を積んだ経験もあり、武道家という一面も持っている。
【写真】実は武道家の一面を持つダン・ハーディ。パンチ力、ガードワーク、武道への造詣、十分に強く、また興味深いファイターだが、GSPの前では果たして……(C) MMAPLANET
MMAを始めた当初は、完全なストライカーで、寝技で苦戦を強いられると、練習環境が整っていなかった英国を跳びだし、エディ・ブラボーの10thプラネット柔術の門を叩いた。07年に日本のケージフォースに来日した時は、打撃+ガードワークともに非凡なものを見せてきた。
UFCで戦うなかで、自ら上をとるテイクダウン力もつけてきたハーディ。苦手とする局面を徐々に克服してきた努力家でもある。対戦相手を罵倒するビックマウスは、あくまでもショーマンシップの表れ。実際は人当たりがよく、メディアの評判も良い。
そのハーディ、世界戦を前にロングアイランドのセラのジムを訪れ調整を続けていた。「彼の知識は凄いものがある」とセラに全幅の信頼を寄せている。
また、彼のコンディショニングコーチによると、ハーディのパワーは260ポンドのNFLプレイヤーに匹敵するとのことで、以前はライト級転向を考えていたとは思えないストレングスを誇るそうだ。セラも、そんなハーディの潜在能力を認め、「GSPはスタンドでハーディと戦うことはできない。そうなれば、どうなるか分かっている。だから重点的にグラウドの指導をしている」という発言を残している。
一方、GSPはジャクソンMMAではなく、ケニー・フロリアン、ネイト・マーコートをカナダに招いてキャンプを開き、この一番に備えている。
勝負は勝負、何が起こるか分からないし、努力家ハーディの力を認めないわけでは決してない。ただし、王者GSPには穴を見つけることができない。ひょっとすれば、試合中に完璧すぎる強さにも綻びが見つかる可能性も残っているが、その綻びは限りなく小さいとしかいいようがない。
■UFC111 全対戦カード
<UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R>
[王者]ジョルジュ・サンピエール(カナダ)
[挑戦者]ダン・ハーディ(英国)
<UFC世界ヘビー級暫定王座決定戦/5分5R>
フランク・ミアー(米国)
シェーン・カーウィン(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ベン・サンダース(米国)
ジェイク・エレンバーガー(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ジョン・フィッチ(米国)
チアゴ・ピッチブル・アウベス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ジム・ミラー(米国)
マーク・ボセック(カナダ)
<ウェルター級/5分3R>
ネイト・ディアズ(米国)
ローリー・マルカム(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ヒカルド・アルメイダ(ブラジル)
マット・ブラウン(米国)
<ライト級/5分3R>
カート・ペルグリーノ(米国)
ファブリシオ・モランゴ・カモエス(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
ロドニー・ワレス(米国)
ジャレッド・ハマン(米国)
<ミドル級/5分3R>
ホウジマール・トキーニョ(ブラジル)
トーマツ・デューエル(ポーランド)
<ウェルター級/5分3R>
マット・リデル(米国)
グレッグ・ソト(米国)