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【ONE Full Blast】MMAピラミッドの頂点目指す──アフメッド・ファレス「夢はエジプト大会で世界挑戦」

【写真】日本のアニメファンで、ONE PIECEが特に好きな作品だそうだ。『僕はエジプシャン・アニメオタク』とインタビュー中に話していた(C) ONE

28日(金・現地時間)に放送されるONE 「Full Blast」で、エジプトのアフメッド・ファレスがエドワード・ケリー戦でONE初陣を戦う。

MMAカーストで最下層といっても過言でないエジプトから、初めて光るファイターが出てきた。ONE Warriors Seriesにおける鮮烈な勝利で、そんな印象を残したファレスに、MMAPLANETでは試合の2日前にインタビューをしていた。未知のファラオの国=エジプシャンMMAワールドから、中東を経てONEに到達したファレスにエジプトのMMA事情と自身のMMAファイター人生を訊いた。


──ONE本戦デビュー戦となるエドワード・ケリー戦が迫ってきました。今の調子はいかがですか。

「フィジカル的に最高だし、精神的にももう準備は十分にできているよ。ONEデビュー戦を迎えることができて凄く嬉しい。ONE Warrior Seriesでアラン・フィルポットという強い相手に一本勝ちできた。そのことでONEが僕の能力を世界に示す機会を与えてくれてハッピーだよ」

──正直言うと、申し訳ないのですがエジプト人ファイターはONEでもアンダードッグ的な起用が多く、選手もその状況に甘んじていたような気がしていました。そのこともありアフメッドのウォリアーシリーズでの動き、勝ち方は鮮烈でした。

「そう思われても仕方なかったと思う。エジプト人選手はONEでの戦績も良くなかったし、MMA自体がエジプトでは歴史が凄く浅い。だいたい僕らの国でMMAが始まったのが2010年ぐらいからだった。そしてONEに出場していたエジプト人選手はMMAファイターというよりも、ただのストライカーだたたり、ただのレスラーでしかなかったからね。

でも僕や新しい世代の選手は全く違う。僕らはエジプト国内だけでなく、国外でもMMAの経験を積んでいる。ONEで持たれているエジプト人ファイターのイメージを一掃したいと思う」

──その新世代エジプシャンMMAファイターのアフメッドは、なぜMMAを戦うようになったのでしょうか。

「僕は6歳の時に松濤館空手を始めた。それからボクシング、キックボクシング、ムエタイ、テコンドー、そして柔術と多くのマーシャルアーツの練習をしてきた。柔術を始めたのが17歳で、そこからMMAを始めたんだ」

──ベニハッサン村の壁画にあるよう紀元前21世紀からレスリングらしきものが行われていたエジプトですが、モハメッドのルーツはレスリングではないのですね。

「レスリングは今でもエジプト全土で行われていて、誰もが経験している。優秀なレスラーは生まれ続けているし、五輪でもメダリストは結構いるよ、カラム・イブラヒムのようにね。

■エジプト人五輪金メダリストレスラー
イブラヒム・ムスタファ 1928年アムステルダム五輪 グレコ・ヘビー級 
カラム・イブラヒム 2004年アテネ五輪グレコ96キロ級(※2012年ロンドンでは84キロ級で銀メダル。2004年に大晦日にK-1 Premiaumで藤田和之と対戦しKO負け)
※他、銀メダリストと銅メダリストを2名ずつ輩出。伝統的にウェイトリフティングが強く、近年ではボクシング、テコンドーで五輪メダリストが誕生している。

優秀なボクサーも柔道家もいたけど、完全なMMAファイターはいなかった。僕も特にMMAを意識していたわけでなく、より優れたマーシャルアーチストになりたくて、色々なスタイルを学んでいたんだ。

それが2010年にMMAに出会って、自分がやってきたことをミックスできるし、そういう点では誰よりも優れていると思った。MMAを知って、これはやるしかないという気持ちになったんだ。これ以上、僕のやりたかったことに合致したものはない。MMAこそ、僕が求めていたモノだと分かったんだよ」

──その頃、どういう風にMMAを知ったのでしょうか。

「UFCを視てだよ。ホンモノだと思った。そしてGSPの大ファンになった。ぶっちゃけて言うと、結構ストリートファイトの経験もあったし、エジプトにはMMAに似たアンダーグラウンドファイトがあった。でもUFCのような競技ではなかったんだ。

その頃はまだエジプトでのMMA人気は高いモノではなかったけど、ジムもいくつかあって大会も開かれていた。2011年から僕も試合に出始めて、10連勝して10のフィニッシュ、9試合が1Rで勝っている。

当時はレベルも低かったし、僕と互角に戦える相手はいなかった。だから2013年に試合に出るのを一時的に止めたんだ。1年間、試合に出ないで他の選手の成長を待った」

──なんと……驚きの選択ですね。

「ちょうど他のコンバットスポーツからMMAに転じる選手が増えてきたから、2015年に再び試合に出るようにしたんだよ。そして11戦目にArabic Ultimate Fighting Championshipという大会でフェザー級チャンピオンになった。

これはエジプトで初めてのMMA王座だったんだ。対戦相手のハッサン・マンドールはレスリングの強豪で、キャリア3戦目だったけど、僕は初めてフィニッシュできず、仕留めるのに4Rまで時間が掛かった。僕のキャリアで初めてのタフ・ファイトだったけど、この試合で勝利し海外で戦うことを決めたんだ」

──まずはお隣というか、中東を目指しました。

「そうだね。でもまずはDesert Forceのカイロ大会に出たんだ。勝つことは勝てたけど、海外のレベルの高さを知った。このままじゃダメだと思ったよ」

──解決策というのは?

「しっかり練習仲間が必要だと思ったので、選手を集めてチームを創った。でもDesert ForceとBRAVE CFで3度負けた。エジプト国内にいると限界があると悟り、タイのジムで練習することを決めたんだ。

プーケット・トップチーム、タイガームエタイ、バンコク・ファイターで練習した。3つのジムで経験を積み、エジプトに戻ったんだ。その後もバーレーンのKHK MMAでたくさんのロシアンとも練習してきた。今ではエジプトだけでも凄く良い練習ができるようになったよ。

特に2019年ぐらいからMMAは急激に注目されるようになって、今後はもっと大きくなるはずだ。今は3、4つの国内大会もあるし、たくさんのファイターが育っている。僕も色々と経験を積んだし、エジプトで練習していても、世界でやっていけると思いONE Warrior Seriesと契約したんだ」

──HKHKジムで練習した経験があってなお、BRAVE CFからONEを選択したというのは?

「BRAVEは良いプロモーションだよ。でも特定の選手をチャンピオンにしたいという力が働いていると感じたんだ。それは僕にとっては好ましい状況じゃない。ONEは世界中から選手が集まってきていて、勝っていけば誰にでもチャンスが回ってくる。

MMAを勝ち抜くにはメンタル面が整っていることが重要になってくるから、ONEで戦うことに喜びを感じている……この気持ちがあって僕はより強いファイターになれると思っている。僕がONEで成功することで、もっとエジプト人選手にチャンスが広がることを信じているよ」

──そのための大切な一歩、ケリー戦への自信のほどは?

「打撃でもグラップリングでも、レスリングでも僕の方が上だ。スピードも僕の方がある」

──では金曜日には、どのような試合がしたいと思っていますか。

「アフメッド・ファレスというエジプト人選手が、どの局面でも秀でているコンプリートファイターだと証明したい。ONEフェザー級で結果を残し、ONEエジプト大会でフェザー級王座に挑戦する──それが僕の夢なんだ」

■視聴方法(予定)
5月28日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE Super App

■ONE Full Blast対戦カード

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
セーマーペッチ・フェアテックス(タイ)
クラップダム・ソー・チョー・ピャッウータイ(タイ)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
カンタラジ・シャンカル・アガサ(インド)
シェ・ウェイ(中国)(中国)

<キック・ウェルター級/3分3R>
サンティーノ・ファーベーク(オランダ)
マイルス・シムソン(オランダ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
アフメッド・ファレス(エジプト)
エドワード・ケリー(フィリピン)

<57.7キロ契約/5分3R>
アンソニー・ドゥ(米国)
ホイ・リアン(豪州)

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