【ONE TNT04】フォラヤン戦完勝から13時間後の青木真也─01─「時間を掛けてきたものは、真似できない」
【写真】この試合後の表情からも青木自身にとっても、会心の勝利だったのではないだろうか (C)ONE
29日に開催されたONE119:ONE TNT04で、エドゥアルド・フォラヤンを1R4分20秒、腕十字で下した青木真也。
鮮やか、そして完成度の上がったファイトでの勝利から13時間後に現地で隔離措置中、最後のPCR検査を終えたばかりの青木に話を訊いた。
打撃の組み立て、テイクダウンの引き出し、そして腕十字という流れとこれからについて、共同会見とは少し違った青木の声をお届けしたい。
──フォラヤン戦の勝利から13時間ほど経過しました。
「昼間の試合ってやっぱり難しいですね。初めてだったし。コロナ禍でもあって、試合が終わって宿に戻ってきたのが朝の10時で(笑)。どう1日を過ごせば良いのか……生活リズムが狂っちゃいますよね。
試合に向けての調整も難しくて、これはどうしたものか。興味深いところでもありました。朝の調整も興味深いです」
──今の雰囲気も、試合当日とは思えない落ち着きようです。
「テンションも解放感も夜の試合の時と違いますね。なんか別競技かっていう感じで。夜に試合をがした時は朝まで寝られないタイプなんですが、そこは変わらなずここまでは寝ていないです。でも、普通に夜中になって眠ることになると思います」
──現地でリードカードは8時半の開始で、青木選手も9時半ごろには試合をしていた。そもそも会場入りは何時だったのですか。
「6時45分で、起きるのは5時半でした。エディ・アルバレスはインタビューで、米国にいるときと時間を変えないと言っていましたけど、彼の場合はそのままで良くて」
──ハイ、なんせ米国時間に合わせてイベントがあるわけですから。
「でも、僕はシンガポールと1時間の時差の日本で普通に生活していて、こっちに来てから早く寝るようにしたり調整が必要になってきて」
──時差はないけど、生活リズムを現地で変える必要がある。アジアの利点がなかったわけですね。
「ほんと、これどっちが良いんだろうってありましたね。調整にしても、日本にいる時には朝の8時から練習に来てほしいって言えないですからね。
それに栄養の接種の仕方とかも変わってきます。僕は最近では胃の中を空っぽにして試合がしたくて。そうなると、朝の試合だと朝食を殆ど取れなくて」
──夜の試合だとしっかりと朝食が摂れるので、当日のエネルギー補給で問題がでますね。
「ハイ。エネルギーを蓄えようと思うと、朝の3時とか4時に起きないといけなくなって。そうなると普段と生活リズムが違い、バイオリズムも違ってきますね」
──いやぁ、なかなか大変です。でも、そういう変化があったとは思えないほど、試合は完璧でした。
「どこまでいっても試合は恐怖を感じるし、怖いモノだと再確認できましたけどね」
──スタンドで非常に落ち着いていました。
「そこは開き直りというか、もう自分が信じた戦い方でやる──この宗教でやるんだって。MMAPLANETの岩﨑さんの武術で見るってヤツを読ませてもらいましたけど、腹が据わるということなんですかね。
岩﨑さんの理屈は、僕も分かっている理屈で。あのパンチを出させないというのは……相手にパンチを出させたのは、僕のミス。僕がプレッシャーをかけて、岩﨑さんのいう質量で上回って気圧せていたら、相手は出せないはずなんで。でも岩﨑さんの理屈でいうと完全に下がらせないといけないから、ケージのなかで実践できるかというのは別の話です。理屈としては凄く分かります。
僕も出させてしまったことは悪いけど、相手を褒めてほしい(笑)。
あの状態でよく出したな……みたいなところはあります。なんだかんだでフォラヤンはガッツがあると思いました」
──組みにいくまでがガムシャラ感がないです、今の青木選手は。
「ハイ、そこはゆっくり創って見えているというか。古い言い方ですけど、打・投(倒)・極というところには近づけている気はします。でも20年やって、ですからね(苦笑)」
──それはそこまで積んできた結果で、成果が出たのだから良いではないですか。ここまで続けてきたから、できるようになってきたという見方ができると思います。
「それは凄く良い見方をしてもらっています(笑)。もうチョット早い段階で、これができていたら身の振り方も変わっていたと思います。やっぱり蹴りや距離、時間が掛かることを選択してしまったので、そこは仕方ない部分ですかね」
──時間を掛けて身につけたものは、直ぐに失わないです。
「そうなんです。時間をかけてやってきたものは、相手が研究し辛いし、真似できないですよね。パッとできるものって、真似しやすいじゃないですか。だからなかなか真似をしづらいモノではあると思います」
──今回の試合、組む前よりも、組んだ後で離れられることが一番怖かったです。
「分かります。僕も嫌です。だからこそ、そうなることを想定して覚悟もしていて。そのために、いくつかの引き出しも用意していましたしね」
──あそこで飛びついてガード、フォラヤンが寝技に行きたくないから踏ん張る。その刹那、着地して小外という流れは、用意されていたものなのですね。
「もうジャンピンガードでもないですよね。2005年にマッハさんと戦ったときに、飛びつきガードしてポスチャーされると投げるとかやっているんです」
──修斗での桜井マッハ速人戦ですね。
「グラウンドに行きたく相手、ポスチャーに対してああいう動きは壁レスで練習中にもしていて。しっかり抱き着いてしまうと、相手の重心も真ん中にあるので着地しても簡単に倒せない。だから、引き込むようにする。そうすると、相手はポスチャーして重心が後ろになるから、着地して倒すことができます。
グラップリングがあるからこそなんですが、レスリングでもなく柔術でもない──MMAでしかない攻防だと思います」
──青木真也のMMAですよね。寝技に持ち込まれたくない相手、テイクダウンの対処をしてきた相手にアレができるのは。それと最後の腕十字、こういうと申し訳ないのですが青木選手らしくないフィニッシュでした。マウントから腕十字は。
「アレはもうエルボーですね。腕十字は外されると下になるからリスキーなんですけど、フォラヤンにそれだけの戦意は残っていなかったです。
ヒジで削っていたので。もう取ってくださいという精神状況だったと思います」
<この項、続く>