【ONE TNT04】フォラヤン戦へ、離日前日の青木真也─02─「ダウンは嫌だという教育は受けていない」
【写真】ロータス世田谷でのグラップリング練習が、試合前と試合後もさほど変わりがない。それが青木のMMAファイター人生でもある(C)MMAPLANET
29日(木・現地時間)に開催されるONE119:ONE TNT04でエドゥアルド・フォラヤンと対戦する青木真也インタビュー第2弾。
青木真也はなぜ、『ノー』と言わないのか。この価値観が生まれた背景を青木が語った。
<青木真也インタビューPart.01はコチラから>
──イベントを成立させるため、仕事として。
「ハイ。独特な興行文化で、そこは日本的な感覚だと思います」
──そんななか青木選手はファンが『エドゥアルド・フォラヤンよりもエディ・アルバレスとの試合が見たかった』という意見を持ったとしても、気にならないということですか。
「そのような声があり、気にならないことはないです。でも、そことは違う魅せ方や世界観を創れるぐらいの自信があります。相手が立たなくても自分を曝け出して創る方法や、相手で創っていく方法もあります。リベンジ戦、因縁の決着戦という創り方もある。
そこは色々な意見を言ってもらえるけど、多様性を持って創造していきます。それがベストを尽くすということなので」
──そこに付随する勝敗については、どのように捉えているのですか。
「試合だからアップダウンは絶対に存在します。そこでアップにならないからやりたくないっていうのは、色々なところで見てきたけど……それは嫌な気持ちになってしまうんです。
平田樹がGPに出ることになって、色んな反応があったじゃないですか。あれってもうアップダウンで、アップすることだけを見て、ダウンするのを恐れているから出る反応で」
──興行という全体利益のなかで、勝負という個人の利益が存在する。致し方ないことですけど、それを個人でなく集団の反応があったことはなんか怖かったですね、個人的にも。
「ダウンを嫌がると、成り立たないですよ。ダウンは存在するし、アップだけじゃないと嫌だってなると、ジェイムス・ナカシマ戦なんて受けていないですよ」
──今やセイジ・ノースカット戦にしても、青木選手の実績を若い選手が奪いに来るマッチメイクで。それはプロモーションとしては、ごくごく正常な流れかと思います。
「そういう仕事ですからね。役割です。ダウンは嫌だっていうのは、僕が教わってきたことにはないです。それが僕の受けてきた教育なんです。PRIDEからDREAMで、あの役割で教育されたこと……断ることはできなかったです。『この試合は嫌だ』なんていうことは許されていなかった。
ケガをして、眼窩底骨折しても試合をするのが普通。だから、ケガをしないようにしようという務めることが当たり前になって」
──それが正しいとは思えないですが……。
「ハイ。良いか悪いかではなく、そういう風に教育されたんです」
──以前は対戦相手を問わず、誰とでも戦う。それが普通という時代もありました。そういう時代を経たからこそ、自分の下の世代にそうはさせたくない。『ノー』といえる環境を創りたいという風に思った人々もいるかと思います。
「それができるようになった人は……多分、俺ぐらい詰められていないッスよ。マジで。俺ぐらい詰められていない。絶対、それは言えます。
シャオリンとやりたくないって言ったら、赤坂プリンスに呼ばれてずっと帰してもらえなかった。そういうことをされていない」
──……、……。
「あの時はマッハに負けた次の試合で。やられた後にシャオリンでって……『約束、違うじゃん!! ダウンを飲んだら、アップをくれるって言ったじゃん!!』みたいな(笑)。この仕事で落ちたら、つぎはアップ下さいねって言う話をしていましたからね。『それ、なくないですか!!』って。
そうやって詰められたから、もう嫌で……呼び出されても行かなかった。そうしたら練習が終わった時に、ジムまで来ていた──とか。そういうことされていないから、断れるようになるんです」
──それはもう監禁で、今や出るところに出ることができる話ですね。
「JZとの2回目の時は、赤坂プリンスに半日いましたから」
──つまり青木選手は、当時は「ノー」ということがあったということですね。
「言っていました。『この状況で、1カ月後になんて試合できないです』って言っても『いや、やれ』、『やらなきゃダメ』、『ダメだよ、何言っているの?』って延々と続きます。だから、最後は折れるしかない(笑)。それは実は何度もありました。
今は亡き赤坂プリンスに詰められるなんてことを、誰もしていないから。教育されていないから、断ることができるんですよ」
──それは都合の良い教えであり、教え子にとっての学びではないですね。
「もう白虎隊みたいなもんですよ。ならぬことはならぬものです──みたいな。そういうのがない他の人とは、感覚が違うと思います」
──その経験、今からするとあって良かったということなのですね。
「ハイ、あって良かった。絶対にあって良かった。それがなかったら、強くはなれなかった。あれがあったから、シャオリンと戦って、また強くなれたし自分の中のMMAが進化しました。
DREAMの最初のころは『嫌だ』といっても詰められて、結局はやることになる……どうせなるから、もう諦めて『誰がどうなっても絶対にやる』という風に変わりました」
──『ノー』が通ったことは、なかったですか。
「ない。1度もない。立ち位置的に僕はないんです。ノーが通った人は逆に中心でなかったと思います。対戦カードが興行の都合で変わるなんて多々あったんで。
長嶋☆自演乙戦だって、最初にフィックスされていたのは青木✖川尻だったし。『ハイ、やりま~す』って言っていたら、『へっ? そうなの?』なんてことがあるので。そんなことは毎年ありましたから」
──ノーと言える方が良いのですが、ノーと言えない状況は人間を強くするなと思い返すことはできます。
「フリーライターって、ノーって言っちゃうと次が来ないってことですよね」
──そこは本当にそうで。20代の頃にそれを経験していると、45歳になってもノーとは言えなかったです。
「断れるっていうのは──甘えか、裕福か。この2つですよね」
──もう、その通りだと思っていましたね、実際に私も。ただ今では断りますし、何のためにやるのか──自分の役割は、自分のためになるのか、そこを考えてノーというようになりました。同時に次の世代にはノーといえる環境で仕事をしてもらおうとは思っています。
「そこができるキャリア、ノーと言える自信がついたということでしょうね。それと信頼感、信頼感があるとノーもいえます。でも、僕は『ファイターたるもの逃げちゃだめだ』とかっていう漢気でなくて、仕事だから断らない。
タクシーの運転手をしたら、近くだから下りてくださいなんて言わないし。藤田和之さんや石澤(常光)さんが『穴を空けちゃいけない』とよく言われていて。そこも教えてとして、感じてきたというのはあります」
<この項、続く>
■視聴方法(予定)
4月29日(木・日本時間)
午前9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
■ ONE TNT04 対戦カード
<ONE世界ライトヘビー級(※102.01キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]オンラ・ンサン(米国)
[挑戦者] ライニア・デリダー(オランダ)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エディ・アルバレス(米国)
オク・レユン(韓国)
<ヘビー級(※120.2キロ) 5分3R>
ウマウ・ログログ・ケニ(セネガル)
キリル・グリシェンコ(ベラルーシ)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
青木真也(日本)
<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
エカテリーナ・ヴァンダリエヴァ(ベラルーシ)
<60.6キロ契約/5分3R>
コルビー・ノースカット(米国)
コートニー・マーチン(豪州)