【KIT01】KINYABOYZ INVITATIONAL TOKYO 01直前、橋本欽也インタビュー─01─「正道があっての邪道」
【写真】KITの開催が迫ってきた橋本欽也氏、全ての言葉に柔術愛が詰まっている(C)KINYA HASHIMOTO
11日(日)にブラジリアン柔術の無観客&ライブ配信大会=KINYABOYZ INVITATIONAL TOKYO 01をKINYABOYZ JIU JITSU CLUBを率いて主催する柔術ライターの橋本欽也氏。
なぜ、ブラジリアン柔術のワンマッチ大会なのか。なぜ、ノーポイント・サブオンリー&延長ポイント先取制を敷いたのか。全てにおいて柔術愛に溢れまくっている橋本氏に話を訊いた。
──いよいよ日曜日にKINYABOYZ INVITATIONAL TOKYO 01の開催が迫ってきました。敢えて欽ちゃんと呼ばせていただきますが、もう欽ちゃんの柔術愛が詰まった大会です。改めてKIT01を開こうと思った、その想いを語ってください。
「コロナで柔術大会がない時に、ハイサムとイゴールがGTFにエントリーしました。あの時にハイサムはともかく、なんでイゴールがノーギなんだって思ったんです。それは柔術の大会がないから。なら柔術の配信大会をやろうと。
ハイサムなんてプロと同じでファイトマネーを貰って試合ができる選手です。そういう選手が条件とか関係なくて、試合に出たい。試合に飢えている。他にもそういう柔術家がいるはずです。
でもハイサムもイゴールも道着の選手です。道着の専門の人たちが、グラップリングに出る。それは柔術の試合がないからです。
それに海外では4月の半ばからFight to WinやKUMITEっていう柔術の配信大会が開かれてきました。日本もMMAでRoad to ONE、修斗、そしてグラップリングでGTFと無観客でも配信をしてきたじゃないですか。そこで柔術の配信大会をするなら、出場できるのかってイゴールに尋ねたら『ぜひ出たい』と。ハイサムも同じように言ってくれたんです」
──でも柔術の試合がないなら、自分で開こうと。
「その通りなんです。国内には柔術がなかった。僕が毎日更新しているブラジル・ブログもニュースがなくなりました。でも、自分で大会を開くことで話題も創れるじゃないですか。そういう気持ちも少なからずありました。日本の柔術が停滞していたので、何かをやりたいっていう気持ちですね。
ハイサムやイゴールにとってグラップリングはプライオリティじゃない。でも、試合をしている。ただ純粋に試合がしたい。練習の成果を出したいからグラップリングでも出た。なら柔術の試合を創ってあげないと。ホントにそこからです」
──つまりは柔術家がグラップリングに流れているじゃないかと。
「そうです。だってGTFのメンバーを見たら、柔術家が多くいたじゃないですか。ムンジアル、パン、アジア、全日本、そういう大会があったらグラップリングに出ていない。でもトーナメントがなくて柔術の試合に出られないから、グラップリングの試合に出ている。GTFは柔術家ありきで、優勝者は全員IGLOOの柔術家でした。MMAファイターじゃないです。
つまりは柔術家のグラップリングへの流出です。柔術家がグラップリングで活躍することは本来、僕は全然良いことだと思っています。でも、それは本職があってこそなんです。柔術ありきでグラップリングに出るのではなく。柔術がないからグラップリングに出るのは本末転倒だなって。そこが一番大きいです」
──でも日本の柔術界はムンジアルより、クインテットの方が盛り上がるじゃないですか。ルール云々でなく、フィロソフィーが違うのに。
「僕は見る人に合わせてまで、敷居を下げる必要はないと思っています。GTFでコンバット柔術をして、本来の柔術がない。それはナンセンスで。柔術本来の試合があれば良いけど、アレだけっていうのは違う。それはクインテットも同じかと。クインテットもコンバット柔術もあるのは良いけど、本来の柔術がないとダメなんです。
新日本プロレスがあってのFMWじゃないですか。FMWだけが目立っちゃうと、新日本プロレスがないモノになってしまいます。正道があっての邪道で、邪道ばかりじゃなりたたないですよ」
──なるほど、言わんとしていることは分かります。
「でも実際にクインテットは柔術より盛り上がっているんだから、僕が間違っているのかもしれないし。それにKITが有料配信してハイサムやイゴールの試合を視聴してもらえる数よりも、UFC Fight Passのクインテットの方がずっと彼らの試合を見る人は多い。それで彼らが有名になって、少しでも多くのファイトマネーを手にできるなら、それでも良いかって思うようになったんです。
クインテットには柔術が必要で。柔術家もクインテットが必要ならそれで良いかなかって」
──偉いっ!! もう真の柔術愛ですよ、欽ちゃん。その一方でJBJJFもSJJJFもワンマッチ大会は開けないモノだったのですか。
「やはり連盟という形があると、そこからはみ出るモノをやりにくいのではないかと。だから浜島さんはIF PROJECTを安井君にやってもらっていたんだろうし。そういうことだと思います」
──そこで欽ちゃんがKITを開く。では、なぜノーポイントにしたのでしょうか。そこまでポイントのある柔術が本流だという主義を持っているのに。
「それは11月になるとアジア大会や、全日本選手権が普通に行われるようになるからです。JBJJFが全日本選手を開くならイゴールもハイサムも出て、シュレック関根選手も出場するでしょう。なら、そっちの方が皆が見たくなりますよね。
これから連盟がトーナメントを開いていけるなら、通常のルールはそこにあれば良いと思ったんです。こっちはワンマッチ大会だし、同じルールにする必要はないですから。トーナメントが再開されなければ、通常のポイントルールにしたかもしれないですけど」
──ノーポイントになると、スイープという柔術特有のポイントがなくなってしまって、皆がスイープに耐えないというのがあるかと思うんです。
「そうですよね。ノーポイントだと、簡単に下になることは今回も出てくると思います。それに極めがなくても勝てるのが、柔術ですよね。だから時間切れの時は延長で最初にポイントを取った選手が勝つというルールにしたんです。
と同時に出場選手は皆、IBJJFルールの柔術で結果を残している選手ばかりです。サブオンリーに特化しているのではなくて。そういう選手がサブオンリーでどういう試合をするのか、そこも楽しみなんです。リマッチが多いのも相手のことが分かっていて、様子見なんてすることなく攻めていく。そういう動きのある試合になると思います。究極にやりたいのはノータイムリミットのオンリーサブミッションですけど(笑)。それが究極の柔術ルールだと思っています」
──自分は15分のポイント有り、グレイシーチャレンジのルールが実は柔術としては好きです。あそこでブシェシャに勝ったホジャー・グレイシーこそザ・柔術家。柔術家のなかの柔術家ではないかと。
「しっかりとポイントをとって、ポイントを取れられず、最後は一本勝ちする。普通の柔術をやり切る。ホジャー・グレイシーが柔術を一番体現していると思います。グレイシー柔術であり、ブラジリアン柔術を」
<この項、続く>
※KIT01視聴方法はコチラから
■KIT01対戦カード
<黒帯無差別級/8分1R>
リダ・ハイサム(CARPE DIEM)
イゴール・タナベ(IGLOO BJJ)
<茶帯ルースター級/7分1R>
吉永力(トライフォース)
イヤゴ・ウエノ(TREE BJJ)
<女子茶帯ライトフェザー級/7分1R>
ミレーナ・サクモト(TREE BJJ)
石黒遥希(CARPE DIEM)
<黒帯ライトフェザー級/8分1R>
塩田”GOZO”歩(パラエストラ八王子)
澤田真琴(DRAGON’S DEN)
<黒帯無差別級/8分1R>
毛利部慎祐(JUMP FIGHT CLUB)
白木”アマゾン”大輔(CARPE DIEM HOPE)
<黒帯ライトフェザー級/8分1R>
塩田”GOZO”歩(パラエストラ八王子)
澤田真琴(DRAGON’S DEN)
<マスター黒帯ライト級/5分1R>
村田良蔵(オーバーリミット札幌)
荒牧誠(マスタージャパン福岡&香港柔術)