【World NO GI 2019】ルースター級、澤田伸大─01─「ノーギのほうが疲れないよねって」
【写真】単身米国へ向かう澤田だが、同じ言語で技術体系を共有するトライフォースの一員として、ノーギワールドも「チームで戦う」ことを強調した
カリフォルニア州アナハイムのアナハイム・コンベションセンター・アリーナにて、12日(木・現地時間)からスタートしたIBJJF主催の世界ノーギ柔術選手権大会。
道衣を着て行われる世界最高峰の戦い——ムンジアルと同様、大会終盤の2日間(14・15日)に分けて開催されるアダルト黒帯各階級だが、澤田伸大(トライフォース)が参戦するルースター級は7人トーナメントのため、全試合が日曜日に進行されることが発表されている。
ムンジアル2年連続2位のホドネイ・バルボーザ、そしてIBJJFの主要大会で負け知らずのまま黒帯となり、ノーギでも昨シーズンにヨーロピアン(紫・同門シェア)・パン・ブラジレイロ・ワールドのグランドスラムを達成しているタリソン・ソアレスという超強豪のエントリーで注目度も俄然高まるトーナメントを控え、連覇が懸かる前回大会王者はどんな心境でいるのか——池袋のトライフォースを訪ねた。
——ノーギワールドが控える中、先週末(12月7日)にはIBJJFソウルインターナショナルオープンのために韓国へ行かれていましたね。
「1カ月ほど前からエントリーしていたものの、結局は一人優勝でした。コスト的なことや、試合が成立した場合にどうするかとか、いろいろ迷ったんですけど、ポイントはもらえるみたいだし、世界ノーギに向けて減量もしていたから、まあいいかなって。
あと、今年はそれに近いことをしてきたんですよね。ロンドンでアブダビ・キング・オブ・マットとグランドスラムに出て、その5日後にポラリスに出て、と」
——ハイペースな大会参戦は厭わなくとも、柔術とノーギではその調整方法も異なってくるかと思います。そもそもノーギの練習頻度は?
「池袋では隔週の土曜日、新宿では毎週火曜日にノーギクラスを担当していて、そこでスパーリングすることもありますし、試合前はコンペティションクラスでも『ノーギでお願いできますか?』と協力していただいています。MMAの道場に行ってグラップリングクラスに参加することこそないですけど、シーズンみたいな感じで、11〜12月は毎日ノーギですね。
僕は柔術とノーギは100m走と200m走の違いくらいにしか思ってなくて、別モノとは考えていません。もちろんどちらかに絞る選手もいるし、そこにMMAを加える人もいる。そういうふうに、人によって照準の範囲に違いがあるのが陸上競技に似ていると思っていて」
——フィジカル面での違いが語られることもありますが、それについては?
「むしろ僕はノーギのほうが気にならないです。ノーギって体力勝負という印象を勝手に持たれていて、『疲れるんでしょ?』と聞かれることもあるんですけど、少なくとも軽量級においてはギのほうが大変だと思います。グリップファイトが力勝負じゃなくなるんですよね。
手首を持たれた瞬間にすぐ外すとか、個人的には打撃に近いような気がする。道衣の襟を取られて拮抗する、あるいは袖を取る・切るという攻防がなくなる分、スピード勝負というか。あと、グリップの相互性もありませんよね」
——“相互性”ですか。
「ギだと、僕が袖を持てば相手も持てるじゃないですか? でも、ノーギの場合は僕が手首を取ったら相手は取り返せない。早い者勝ちなんですね。だからスピード感が重要になってくるんですけど、瞬間的なパワーとか引く力みたいなものは、そんなに重要だと感じません。
もちろんスタイルによりますし、ノーギは軽量級と重量級で『違うスポーツ』と言っていいくらいですから。ただ、ノーギをガッツリやっている柔術家はかなり賛同してくれると思いますよ、ノーギのほうが疲れないよねって(笑)」
——戦略面ではいかがですか。
「まず、引き込みが意外と難しくて。IBJJFルールだと、ギと同様にどこかを掴んでいないと引き込めないわけですけど、手首を掴んでも座る頃には外されて、ファルタを喰らうことがよくある。トップレベルの選手でもそれが決め手で負けることもありますし、そういえば、去年はそれで相手がファルタを喰らっていました」
——昨年のノーギワールド決勝で、対戦相手のシセロ・パイヴァが開始早々に引き込むも、澤田選手を掴んでいないと判断されてファルタを取られていました。
「だから、引き込みも『引き込みのためのテイクダウン狙い』みたいな考え方をしています。相手の足にアクセスできれば、その時点で決定権は自分にある。それで倒せれば倒してもいいし、倒し切れなかったらそのまま座ってもいい。
それがノーギにおける正しい引き込みかなと。ただ、何故か去年の試合では、そこで座ったら僕が2点を失ったんですが……(苦笑)」
<この項、続く>