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【Pancrase Blood07】全試合KO勝ちでネオブラ制覇、敢流「カーフとローの蹴り方はサッカー似」

【写真】ふてふてぶしい感じの好青年。スポーツマン精神もサッカーの経験、サッカー時代の指導者によって培われてきたようだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

18日(日)、大阪市の錦秀会住吉区民センター大ホールにて開催されるPancrase Blood07で、敢流が糸川義人と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

敢流は2023年4月にDEEP大阪大会でプロデビューし、ここまで6戦全勝。昨年はパンクラスで4試合を戦い、全てKO勝ちしている。ネオブラッドトーナメントでも全戦KOで制し、同年12月にはランカーの岡田拓真を倒した。強烈すぎるローとカーフを効かせ、スタンドでもグラウンドでも殴りまくるスタイルのルーツは、幼少期から続けていたサッカーにあった。


サッカーでボールを遠くに飛ばすための蹴り方。カーフもローも100パーセントで蹴っている

――MMAPLANETでは初インタビューとなる敢流選手です。よく聞かれると思いますが、敢流とは珍しい名前ですよね。「いさな」という読み方も含めて。

「アハハハ、よく言われます。誰も読めないですね」

――敢流と書いて「いさな」と読む、その由来は何なのでしょうか。

「自分でもよく分かっていないんですけど、僕は8月生まれで。8月の神様から名前を取ったらしいんです(※注)」

注)日本では古来よりクジラが漁業の神として信仰されており、8月には鯨にまつわる行事が各地で開催されている。「いさな」は鯨の古名で、ご両親に確認したところ、名前の由来も「8月生まれ→海の王様クジラ→イサナ」であるとのこと。

――それは凄い由来ですね。敢流選手は子供の頃から格闘技をやっていたのですか。

「いえ、僕は小さい頃からサッカーをやっていました。でも昔から格闘技が好きで、よく見ていたんです。最初はプロレスのWWEにハマッって、そのあと武尊選手や堀口恭司選手のファンになりましたね」

――サッカーは何歳から始めたのでしょうか。

「幼稚園の年中ぐらいから始めて、高校2年あたりまで続けていました」

――当時はJリーガーを目指していなかったのですか。

「小学生の頃は目指していました。でも中学生の頃になると、大阪ではソコソコやれるけど、プロになるのは無理やと思って。

中学校のサッカー部の先生が、僕にメチャクチャ情を注いでくれていたんです。その先生が高校を紹介してくれたので、『とにかく高校まではサッカーをやろう』と。ただ、高校を卒業したら絶対に格闘技をやろうと決めていました。中学の時、空手の道場に通っている友達がいて、たまにその道場で練習させてもらったりしていたんですよ。

だからもう高校の時は、サッカー部にいるけどチョコチョコ練習に行く感じで、格闘技のほうが練習していたと思います。その友達は空手がバックボーンでMMAもやっていて、空手の練習が終わったあと、少し遊びで僕もMMAの練習をやらせてもらっていました」

――MMAでも強烈なローとカーフキックを効かせていますが、その空手道場の練習で培ったものなのでしょうか。

「まずサッカーをやっていたので、稲垣組に入った時点で足腰の強さには自信がありました。あと自分の蹴り方は、サッカーの蹴り方と少し似ていますね。サッカーでボールを遠くに飛ばすための蹴り方で。だからMMAを始めてからも、蹴りはやりやすかったです。カーフもローも100パーセントで蹴っているので、『そりゃカットしやんかったら効くやろ』とは思います」

写真は昨年2月の山中大門戦。カーフとローを放つ時はフェイントを大事にしているという敢流。この時も相手はハイを警戒している。一方、岡田拓真は右ハイからパウンドアウトしており、蹴りの幅も広がっている(C)SHOJIRO KAMEIKE

――蹴る時に体勢が崩れないし、パンチも軽い牽制ではなく強い力で打っていますよね。

「体勢が崩れないことは常に意識しています。パンチは――ただ早く倒したくて。それは良くないところでもあるとは思うんですけど(苦笑)」

――アハハハ。高校を卒業してからMMAを始めるために、稲垣組を選んだ理由を教えてください。

「金太郎君のことがメチャクチャ好きで。北方大地さんのYouTubeも視ていたし、大阪でMMAをやるなら絶対にココやと決めていました」

――本格的にパンチの練習をし始めたのは、稲垣組に入門してからですか。

「いえ、その空手道場でも結構、本格的に練習させてもらいました。素人なのにプロ練習にも参加させてもらって。その時にパンチの当てる感覚は少し掴んでいたし、『自分もMMAの才能があるんかな』と感じていました。『ちゃんと毎日練習したら、上に行ける』って」

――それだけの自信を持って稲垣組に入門した当時は……。

「アマチュアを2年ぐらい経験して、そこからプロ練習に参加するようになりました。アマチュアやったら無双できるとは思っていたんですよ。それで初めてプロ練習に参加した時に、ボッコボコにされて――金太郎君に(笑)」

――アハハハ、憧れの選手にボコボコにされたわけですか。

「最初に分からせてやろうと思ったんでしょうね(笑)。でもボコボコにされて楽しかったです。プロでやっていくならキツい練習も当たり前やと思っていたし。でもプロ練に参加し始めて半年経ったぐらいから『自分もやれるかな』って自信が出てきました」

――寝技については?

「MMAをやっていくには寝技のほうが大事やと思って、毎日練習しました。打撃はある程度、自分のセンスで賄えるけど、寝技は練習せな敵わへん。でも、もともと昔から寝技を見るのは好きだったんですよ。

それで稲垣組に入った当初は、ほぼ打撃の練習はしていませんでした。北方大地さんからも『打撃の練習はいらん。まず寝技とレスリングをやりこめ』と言われて。プロデビューするまではミット打ちも全然やっていなかったですね。打撃の練習を始めたのは、それこそプロデビューしてからです」

国内でKO勝ちできていないとUFCに行っても勝てない

――北方さんも『コイツは打撃ができる。寝技とレスリングをやり込めば勝てる』と感じたのでしょう。寝技を見るのは好きだったということですが、どのようなタイプの寝技が好きですか。

「ヌルマゴ(カビブ・ヌルマゴメドフ)やピョートル・ヤンですね。寝技で極めるのではなく、制圧してパウンドで削るスタイルが好きです。これまでの試合も寝技は、結構コントロール重視でした」

――なるほど。何よりスタンドでもグラウンドでも、動きに迷いがない。それが敢流選手の最大の強みではないかと思います。

「試合中に迷うことは、ほとんどないですね。もともとそういう性格やとは思うけど、やっぱりココで練習しているおかげで、自分の中に動きが染みついている部分は多いです。迷う前に体が勝手に動くというか」

――結果、プロデビュー以来ここまで6戦6勝、4試合連続KO勝ち。昨年は全試合KO勝利でネオブラを制していますが「なぜ自分が大会MVPではないのか」とは思わなかったですか。

「それは思いましたね(笑)。ネオブラは山口怜臣選手ひとりだけが、負傷で別の大会になって。その大会でMVPが選ばれていたので、それはその日の印象が……。中継で視ながら『えぇっ!?』と思いました。おかげで、次の試合は『ちゃんと俺の試合を見とけよ』ってモチベーションになりましたね。アハハハ。次の試合もトップランカーじゃなくランキングが近い選手で……結果で見せていくしかないです」

――昨年12月の岡田拓真戦からここまで、何か大きく変わったところはありますか。

「寝技とレスリングですね。荒東(怪獣キラー英貴)さんに紹介してもらって、3月にタイのバンタオへ行ってきました。何かのイベントでGSPが来ていて、2回ぐらいMMAレスリングを教わったんですよ。内容も『流石!!』という感じでしたね」

――GSPですか! その時の写真は持っていませんか。

「いや、それが……タイに着いてからスマホが水没してしまったんですよ(苦笑)」

――えぇっ!?

「でもスマホが使えなくなったことで、逆に開き直って練習に集中することができました。あとバンタオにはムハマド・モカエフも来ていて。バンタオに着いた日にコンビニへ行ったら、モカエフが歩いとってビックリしました。

タイでは学ぶことが多かったし、以前とは全然違う自分になっていると思います。今は打撃だけが注目されていると思うけど、レスリングもグラップリングも自信はあるので、全局面で圧倒したいです」

――対戦する糸川義人選手については、どのような印象を持っていますか。

「柔道出身やけど柔道を使わずに殴り合う、喧嘩が好きそうな選手ですよね。僕も喧嘩が好きな選手はメチャクチャ好きやし、そういう選手を殴り倒すほうが燃えます」

――次の試合もKO勝ちを期待されるかと思います。

「自分もKOする自信があります。国内の試合で勝たれへんかったらUFCには行けないし、国内でKO勝ちできていないとUFCに行っても勝てないと思うんです」

――目標はUFCですか。

「はい。一番はUFCに行きたいです。次の試合でKO勝ちして、その次はトップランカーに勝ったあと、年内にはベルトを獲りたいです。パンクラスのベルトを巻いてから、来年のRoad to UFCに出たいですね」

■視聴方法
5月18日(日)午後14時~
U-NEXT、PANCRASE YouTubeチャンネル メンバーシップ

■Pancrase Blood7 対戦カード
<フライ級/5分3R>
秋葉太樹(日本)
谷村泰嘉(日本)

<フェザー級/5分3R>
糸川義人(日本)
敢流(日本)

<フライ級/5分3R>
岸田宙大(日本)
織部修也(日本)

<フェザー級/5分3R>ラウンド
岩本達彦(日本)
上田智大(日本)

<フライ級ネオブラッドT二回戦/5分3R>
天坂匡孝(日本)
谷村泰和(日本)

<バンタム級/5分3R>
千種純平(日本)
宮城成歩滝(日本)

<バンタム級/5分3R>
増田怜央(日本)
松元奏太(日本)

<フライ級/5分3ラウンド>
松原聖也(日本)
降旗健太郎(日本)

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