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【Pancrase303】田中路教が語る、チーム・ラカイの出稽古「ハングリーさが練習に出ていました」

Nori【写真】チーム・ラカイで初めて、躍進するアジアのMMAに触れた田中は何を想ったか (C)MMAPLANET

3月17日(日)にパンクラス303でウラジミール・レオンティブと対戦する田中が、Abema TVで3月17日に配信される番組のためにフィリピンはバギオ──アジア最強のチーム・ラカイを訪れ、出稽古を行った。

現在発売中のFight & Life Vol.71では「Fight & Life 格闘紀行: 田中路教 in バギオ/チーム・ラカイ探訪編」として、その模様がレポートされているが、ここでは田中がチーム・ラカイでの練習で何を感じたかをお伝えしたい。

「あそこであんなに頑張っているなら、僕ももっと頑張らないといけない」──田中の偽らざる心境と、彼が体感したラカイの実情とは。


──チーム・ラカイで出稽古を行う。Abema TVの企画を最初に貰った時は、それほど乗り気でなかったという話も伝わっていますが、バギオまで行き彼らと3度練習し今はどのような気持ちですか。

「練習に関しては、練習時間も含めて想像していた以上に強度が高かったです。ラカイの選手たちのグラウンド、組み技の能力の高さが予想以上でそこはビックリしました」

2013年5月に田中はラカイ所属のクリサント・ピットピットンゲとPXCバンタム級王座を賭けて戦った

2013年5月に田中はラカイ所属のクリサント・ピットピットンゲとPXCバンタム級王座を賭けて戦った

──それはかつてクリサント・ピットピットンゲとPXCで戦ったときの印象が残っていたということでしょうか。

「それはありますね。昔からラカイの選手の映像を視ているとストライカーが多くて、グラウンドを好まない。フィリピンの選手たちのイメージも相まって、グランドは余りできないという印象があったのが、ラカイの選手達に関しては下からのグラップリング、レスリングの技術が凄くしっかりしているので驚きでした。

ある程度予想がついたケビン・ベリンゴンだけでなく、今回一緒に練習した若い選手たち全員の能力が高く、皆がしっかりした技術を持っているんです。柔術っぽい組み立て方とか、そういうモノを使っていて。名前のある選手だけでなく、他の選手のレベルの高さにも驚かされました」

──日本で練習しているメンバーと比較して、ラカイ勢がONEで結果を残していることは練習を通して納得できたということはりますか。

「あります。本当に……普通に皆が強かったです」

──ホノリオ・バナリオの弟に田中選手がサイドを取っている時にテッポウでリバーサルを許した時は驚きました。田中選手にああいうことができるのは、ベリンゴンだけだと思っていたので。標高1400メートルの土地で5分✖5Rのグラップリング・スパー、さすがに疲れていたということもあるかと思いますが。

「標高が高くて空気が薄いから影響があったのかは分からないですが、疲れました。ラカイ勢は本当によく練習しているんだと思います」

──スパーリングが進むにつれて不機嫌になっているように見受けられましたが。

「僕は自分への怒りが抑えられないので(苦笑)。ちょっと見苦しい部分を見せてしまったと思います。自分が疲れていることに腹が立ってしまって。相手がどうのいうのではなく、自分への怒りです」

──やはり標高1400メートルが影響していたのではないでしょうか。

「う~ん、そうなんですかね。あまり高度とかは関係ないかと思います。だって皆が疲れていたじゃないですか。ラントレでも僕だけでなくて、いつもあそこにいる選手も疲れていた。僕だけが疲れていると、高度の影響はあるんだろうけど。皆が疲れていたので、そこじゃないと僕自身は思っています」

1400メートルでのラントレ、心肺機能がラカイ勢は強いはずだ

1400メートルでのラントレ、心肺機能がラカイ勢は強いはずだ

──なるほどぉ。ラントレ自体は足のこともありましたが、最初の4キロを走った時にはどのように感じましたか。

「普段あまり走らないのですが、意外といけるなと思いました。もうチョイいけたかなとは思いますが、肉離れが怖くてあまり無理はできなかったです」

──80キロぐらいあるフォラヤンが、フライ級やバンタム級の選手と同じように走り、トップのペースについていったことはどのように思いましたか。

「どう思ったか……フォラヤンだけでなく、皆が練習熱心。凄く真面目だと思いました。そういうチームなんでしょうね」

──その真面目な取り組みの裏には、強くなれば財をなせるというのが彼らにはあるのではないかと。日本の若い選手は、現状で彼らのように熱心に取り組めるものなのかと。そういう不安を感じました。

「いや、ハングリーさは全然違います。何に対してハングリーなのは分からないですけど、そのハングリーさが練習に出ていましたね。本当に皆練習熱心です。あれだけ強度の高い練習を1日に2度やり。夜の練習が終わると、各自が補強とかやっている。

1日目の夜の練習が終わったあとに、僕が腹筋とか補強をやっていると、補強をしてなかった選手もやり始めて。ああいう負けず嫌いな部分、練習へのハングリーさが見え、『これは皆、強くなるわ』と思いましたね」

──そのハングリーさを目の当たりにして、日本✖フィリピンという部分で怖さを感じましたか。

「あのジムはフィリピンの中でも特殊だと思います。色々なジムに行っているわけじゃないけど、選手のハングリーさはちょっと違うなという風に思いました。そこって格闘技のなかで大きいところだと思うので。何かに腹を空かせていないと、強い気持ちをもって戦えないと思うので」

──ジムの大きさや設備は北米のメガジムとは比較にならず、日本に近いです。

「あの小さいジムにあれだけプロがいて、あんな練習をしているのは凄いなって(笑)。プロ選手の数とか凄かったじゃないですか」

──確かに。そして若い選手が多いです。ところでグラップリングの5分✖5Rが終わると、もう一つのグループと交代で5分✖5Rのミット打ちが始まりました。ボクシング、キック、MMAとバック、そしてヘッド・コーチのマーク・サンジャオさんと1分ずつ回していく。あの時、選手がミットを持つ場合もありましたが、サンジャオさんも含め3人の専門のミット持ちがいました。

「そこも日本とは違いますよね。あの規模で、それだけいるのは。あのボクシングのミット持ちの人は、本当に上手かったです。シャドーの切れも凄かった。あの人、強かったと思います」

──フィリピンですねぇ。

「あとサンジャオさんも、基本的にラカイのミットは距離が近いのですが、2ラウンド目になると僕の距離に合わせて遠めでミットを受けてくれて。すぐに僕の特性を見極めてアジャストしてくれた。さすがだなと思いました」

──火曜日の朝のMMAスパーはどのような練習でしたか。

「アレも5分5Rで、ボクシンググローブでワセリンを塗って。でもガチでなく、ある程度当てても良いけどマスで。ヒザは禁止、ケガをするような打撃は禁止のMMAでした。僕とフォラヤン、ベリンゴンとブレイブCFのバンタム級チャンピオンのスティーブン・ローマンという選手の4人で回して。

BRAVE CFバンタム級王者スティーブン・ローマンとのグラップリングスパー

BRAVE CFバンタム級王者スティーブン・ローマンとのグラップリングスパー

僕とスティーブンが5Rやって、もうヒザが限界だったのですが、ミットと補強もやっていました。スティーブンはかなりレベルが高かったですね。体の強さも持っていて、根性もある。ただ、僕が肌を合わしていない選手も強いなって思う選手もいたので、そういうレベルの選手がゴロゴロいるジムだと思います。

シャドーをやっただけで『あっ、この子は強いわ』という選手もいたので。チーム・ラカイっていうのはアジアのなかでもトップのチームだと思いましたね」

(1分×5)×5Rのパッディング・クロスは田中だけでなく、全員が疲労困憊になる

(1分×5)×5Rのパッディング・クロスは田中だけでなく、全員が疲労困憊になる

──それにしても、やはりミット打ちの厳しそうな様子が一番印象に残っています。

「きつかったですね(苦笑)。あの時にヒザもちょっと痛めて。足が上がらないと思っていたのですが、止められないと思って我慢して。でも、そこを関係なしにしても結構きつかったです」

──いつも平然としている田中選手が、一発パンチを打つたびに声を出してました。

「行って良かったです。ああやってフィリピンの山奥でやっている子らが、あれだけ頑張っている。なら、自分ももっと頑張らないといけないと単純に思えましたし、世界のMMAのレベルが上がっていることを実感できました。僕自身、もっと頑張らないとどんどん厳しくなります。

若い芽が育ち、ウェルラウンダーのジムにラカイはなっている

若い芽が育ち、ウェルラウンダーのジムにラカイはなっている

もう既にプロで戦っている10代の子たちのスパーを見ていて、凄く技術がしっかりとしている。あそこからはどんどん強い選手が生まれますね。日本はもっと頑張らないといけないと思いました。

僕自身、暫く海外で練習をしていなくて。やはり定期的に世界のMMAの流れを見ておく必要があると思っていますし、その流れにあるチーム・ラカイで練習できたことは凄く良かったです。

ベリンゴンとフォラヤンは凄く強いんだろうなっていうぐらいは思っていたのですが、他の選手もとにかくレベルが高かったです」

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