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【ONE72】ヤキャエフと対戦、青木真也─01─「格闘技だけをやっていると、自分自身が崩壊します」

Shinya Aoki【写真】ロータス世田谷でのグラップリングを終え、大道塾吉祥寺支部でムエタイのミット打ちに取り組む青木 (C)MMAPLANET

18日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムでONE72「Unstoppable Dream」が開催され、日本から青木真也が出場し、ロシア人ファイター=ラスル・ヤキャエフと対戦する。

ONEライト級での試合は一昨年11月に世界ライト級王座を失ったエドゥアルド・フォラヤン戦以来、1年半振りになる青木の1日をameba TVが制作するドキュメンタリー番組= ONE DAY が追った。

ONEDAYを放送するabema TVではAOKI AWARDという冠番組を持ち、格闘代理戦争に出演中の青木は、試合まで2週間を切っても収録や執筆活動を続けている。

MMAPLANETでは大道塾吉祥寺支部で、14年の交友関係のある──青木をムエタイに導いた飯村健一氏とミット打ちを行った直後に取材をした。青木にとって飯村氏とのムエタイ練習と存在を証明するためのヤキャエフ戦、試合前にも関わらずMMA以外の活動を行う真意を尋ねた。


──激しいミット打ちが終わったばかりですが、息が戻るのも早いですね。

「そりゃ練習していますからね(笑)。格闘代理戦争の椿飛鳥をここで練習させて、練習を見せていたら『青木さん、こんなに打撃できるんですね』って言われて、このヤローって(笑)」

──大道塾吉祥寺シムでのミット打ち、飯村健一さんと青木選手の関係もかなり長いと記憶しています。

Aoki & Iimura「飯村先生とは20歳、21歳の時からだから13年、14年ですね。僕がムエタイの考えに寄っていったのも飯村先生の教えがあったからです。打撃とはこういうものだと思うようになった僕がイヴォルブMMAで、名前を知っていた……参考にしていた凄いタイ人達と出会った。全てがつながっていると思います。いってみればイヴォルブと出会ったのも飯村先生ありきという部分もあります」

──ボクシング、キックでなくムエタイ志向なのも飯村さんの影響なのですね。

「ムエタイに魅せられましたね。イヴォルブでの練習も、飯村先生との練習も済み分けはしていません。DREAMの試合の時にナムサックノーイ(ユッタガーンガムトーン)とオロノー(ウォーペップーン)がセコンドで来日して、あの時にここで練習させてもらったのですが、飯村先生がオロノーのミットを持つというということがあって。

普通は打たせてもらうモノなのに、飯村先生は持たせてもらうという。そしてオロノーが『凄く上手い』と言っていたぐらいなのでイヴォルブでやっていることと、ここでやっていることはほぼ同じです。

飯村先生はムエタイの知識に関しても、日本でトップクラスです。僕がMMAのなかで話すムエタイの考えというのは、全て飯村先生からもらったものですよ」

──ムエタイのアイデンティティが青木選手のMMAのフィロソフィーに似ていると思います。

「そうですね、リスクを背負わないとか。詰将棋の考え方も近いです。だからケージレスリングやフォークスタイルレスリングの詰将棋が好きなんだと思います。最近、盛んに言っている理屈がやっぱりあるんです、ムエタイには。

例えば頭を振ってはいけない。それは蹴りがあるから。できるだけ間で避けなさい。この教えも僕のなかではMMAの理屈として合っている。

だから皆がボクシングに寄っていくときに、僕にはもうムエタイがあったので余り響くことはなかったですね」

──それにしてもロータスでのグラップリング・スパーを終えて、千歳烏山から自転車で吉祥寺に移動し、そのまま激しいミット打ちをするというスケジュールはどのような考えの下で行っているのですか。

「以前は月曜日の夜にやっていました。もう年齢もあってもたないです。朝早くにグラップリングをやり、夜にミット打ちと蹴りマスをやるのは……。もたないというか、もう足がジムに向かわなくなります。

だから、敢えて詰めてやっているんです。一旦収めると、もう出られなくなるので」

──試合で通用するだけのモノを積んでいるように見えます。

「う~ん、これは試合のアイテムとは違った部分でやっているというのもあります。技術を学び、練っていくというのは試合の勝敗とは違ったラインでもあるので。だから、僕の打撃が良くなったと言ってもらえるとそれは有り難いのですが、それはそれだと捉えています」

──でも使えるモノは使えた方が良くないですか。

「試合で使うためにやっているんです。でも、これを埋める作業が単純に好きなんです」

──MMAをずっと戦うことはできないですが、格闘術を追及し続けることはできる。そういうことでしょうか。

「そうですね。飯村先生や大野信一郎さん、大月晴明さんとか、年齢を重ねても蹴りマスが異様に強かったり……実際、飯村先生なんて蹴りマスじゃまるで僕は歯が立たないという現実があります。10年、15年やっても越えられない。

50歳になっても蹴りマスは強いってあり得ると思うんです。だから試合はできなくても技術の交換だったら、色んな競技でもできるし、そこは追及していきたいですね」

──職人肌、実際に動ける仙人願望のような?

「ハイ。イチローが言う『研究者』っていう言葉は良いですよね。研究しつつ、実践しつつを繰り返していきたいです」

──それを試合の2週間前でも行うと。

「ミット打ちはフィジカル・トレーニング、心肺機能の練習にもなっていますし、打撃の基本、間の感覚を把握するのに一番大切に思っているので。試合前だからスパーだけっていう風にはならないです」

──今日はONEDAYの収録ですが、青木選手には格闘代理戦争の収録もあり、またAOKI AWARDの撮影も控えています。さらにいえば執筆活動も試合前にも関わらず継続しています。それで試合に集中できているのでしょうか。

「試合に向けては創り込んでいます。他のことをやらない方が良いという人はいるけど、僕はこれをやっていないと自分を保てないです」

──保てない?

「格闘技だけをやっていると、自分自身が崩壊します。キャリアが長くなり物理的に練習する時間は短くなっています。その合間に何もやっていないと、何をして良いのか分からなくなって崩壊してしまうと思います。

今朝だって、『あっ今日はONEDAYだ。ONEDAYのモードだよな』って風になるんです。AOKI AWARDも格闘代理戦争もそう。だから、ONEDAYのプロデューサーさんには『俺の人格が崩壊したら、責任とってくださいよ』って伝えてあります(笑)」

──青木選手は以前から雑誌のインタビューにしても、聞き手の思考に合わせて人格が変わりますしね。

「チャンネルが変わりますよね。でも、見ている方は困惑するでしょうね。まぁ、本当の僕っていうのはありますよ。でも、求められていることをしたい。一緒にコツコツと積み上げていくことが好きなんでしょうね」

<この項、続く

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