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【2017~2018】金原正徳─01─「キックを戦って改めて感じたことは、MMAが一番。でも……」

2017-2018 03【写真】2017~2018、ファイター達の足跡と一里塚。3人目は金原正徳に話を訊いた(C) TERUTO ISHIHARA & MMAPLANET

まもなく終わりを告げる2017年。情報化社会の波のなかで格闘技の試合も一過性の出来事のように次々と生産&消化されている。

まだ右の拳は使える状態ではない師走の金原だった

まだ右の拳は使える状態ではない師走の金原だった

しかし、ファイターにとってその一つの一つの試合、ラウンド、一瞬は一過性のモノでは決してない。大袈裟でなく、人生が懸っている。

試合に向けて取り組んできた日々は何よりも尊いはず。そんなMMAファイター、そしてブラジリアン柔術家がこの1年をどのように過ごし、そして来るべき2018年を如何に戦っていくのか。

MMAPLANETでは9人の選手達に2017年と2018年について語ってもらった。3番手は今年、MMAを戦わずキックボクシングのリングに2度上がった金原正徳に話を訊いた。

なぜ、キックだったのか。その戦いで見せた素晴らしい技術をケージのなかで再び見ることはできないのか。今、金原と練習する選手の全員が口を揃えて、「とてつもなく強い」という日本を代表するMMAファイターの気持ちは、今どこにあるのか──2017~2018、金原正徳の足跡と一里塚。


──12月10日、KNOCK OUTでの不可思戦の映像を見させてもらいました。何ですか、あの試合は?

「えっ? どういうことですか? 気に入らなかったですか?」

──いや、あの遠い位置から左をずっと入れ続けて。あの戦いがキックボクシングでできるなら、金原選手のMMAが見たくてしょうがなくなりましたよ。

「あっ、そっちですか(笑)。予想した展開ではあったんですよ。実は試合前に上迫(博仁)君と練習していて、右の拳をやってしまい、パンチは左しか使えなかった。だから、ああやって飛び込む。そこでローは貰ってしまう。予想できた通りの展開でした」

──でも、あの距離はテイクダウンにいける距離ですから。

「それはキックなので(苦笑)」

──いや、金原選手の技量に関してなのですよ。本来であれば、あの距離で打ち合う必要がない金原選手が、国内キックのトップ選手と打撃だけ戦うことができて、遠目の距離では優勢だった。

「確かに、試合中に怖さはそれほどなかったです。MMAの方が怖いですよ、グローブは小さいし。グローブが大きいと反応しやすかったです。やっぱりテイクダウンがあるのは全然違います。いってみればパンチと蹴りしかないので、キックボクシングは」

──その分、キックとパンチに特化した素晴らしい選手がいて、素晴らしい戦いが見られる。そのなかで、競技としてどちらが上とかはないです。ただ、テイクダウンのない戦いで、金原選手があれだけ打撃を駆使できたことが素晴らしくて。

「MMAの方がやっぱり難しいです(笑)。僕としてもキックの現役のトップの人の打撃の能力がどれだけあるのか、それを知りたくて戦ったんです。本当に挑戦するつもりで、そこの部分に。

別にキックボクサーになるつもりもないし、ただ自分の打撃だけの力を知りたかっただけで。その結果、試合もそうだけど過程が良かったですね」

──というのは?

「これまでMMAをやってきて感じてきた大切な部分と、キックボクシングとやることで感じることができた大切な部分を繋ぎ合わせて、MMAに生かせることができるなって感じました。キックを戦うことでコレを経験できたのは大きいです」

──その大切なモノとは?

「口では説明しづらいのですが、距離ですね。僕がこれまで思っていた距離、それは多くの人が思っている距離と同じで、相手の立っている位置と自分の間にある距離だったんです。その距離ではなくて、懐の広さの距離というモノをキックで戦うことによって学ぶことができたんです。単純にパンチを避ける、避けられないではなくて、体重が前にある状態か後にある状態かで、懐の距離は変ってきます。

アップライトで構えると、パンチを避けることもできて、蹴りも使うことができる。クラウチングだと、自分のパンチも当たりやすいけど蹴りは使えなくなる。そして蹴りをもらってしまう。ただし、アップライトで構えるとテイクダウンを取られるリスクが高くなり、クラウチングだとテイクダウン狙いに反応できる。この懐のバランスというのは、キックをやらないと感じられなかったと思います」

──なるほどぉ!!

「でも、アップライトだとテイクダウンを切れないのかと言えば、もともとの距離があれば対応できる。僕はケージを使ってのテイクダウンディフェンスは自信があるので、アップライトで構えて蹴りを使って戦っても、テイクダウンを食わないでいられる。こう考えると、自分の戦いにバリエーションが増えることになります」

──ガードに関しても、ノーガードが何もいけないのではなく、ノーガードでも大丈夫な距離があるのと同じですね。

「そうです。そういう意味で、キックをやって大沢(ケンジ)さんとも話したのですが、MMAに繋げられる……落とし込める技術はあるだろうと。もちろん、試行錯誤は必要ですが、打撃のスキルは確実に上がっていると思います」

──だからこそ、金原選手のMMAが見たいのですよ。

「そこが難しいところなんです。今回は正直、試合をすることに関して悩みました。キックも一度切りと自分のなかでは決めていたので。ただ、KNOCK OUTはどの団体よりもオファーは早いですし、選手のことを考えてくれている。そういう部分に心打たれて、出ることにしたんです。

そうしたら今回も、試合の次の日にまた話をもらったり(笑)。キックボクシング業界の熱を感じました。MMAとの熱の差は感じました……。MMAが負けているとか、そういうことではなくてキックの勢いは凄まじいです。

そして、キックを戦って改めて感じたことは、MMAが一番だなってことなんです。でも……」

──それでも金原選手のMMAを見ることは難しい?

「戦いたいです。オファーも、いくつか貰っています。ただ俺……去年の12月にDEEPでチャーリー・アラニツと戦った時、試合前にセコンドの人達に『これで最後にするかもしれない』って言っていたんです」

──……。

「純粋に試合に対するモチベーションがゼロだった。皆の前でもう一度戦う、その使命感だけでした。だから、減量していても……『俺はなぜ、こんなことやっているんだ』って考えて、本当に頭がおかしくなりそうになっていました」

──過酷な減量を乗り越えてケージに入るという大義名分がもうない?

「やっぱりUFCを目標にしている時、UFCで戦っている時は人生を賭けて戦うことができていました。でも、それを失った時に試合に出る、減量をすることに『俺、何やっているんだろう?』って自問自答するしかなかったです。

ただ中途半端な気持ちで戦いたくはなかったから、自分のなかでは全力で取り組みました。ただし、あれが自分の100パーセントかと問いただされると、それはどうか分からないです。減量に失敗するかもしれない。それぐらいのモチベーションだったから、あのままMMAを戦ってもしょうがないとは本当に思いました」

──……。

「だから引退する前に一度、キックボクシングを経験しておきたいと思ったんです。そういう軽い発想のまま、今年は終わってしまいますね」

──それなのにキックで経験したことが、MMAに落とし込むことができるだとか、そういう気持ちはあり続けると。

「格闘技が好きなんです。純粋に技術を追い求めること、格闘技を見ること、MMAが好きなんです。キックをやっていてもUFCを視ていたし、週に一度はMMAの練習はやっていましたからね。だから今もMMAを戦いたいという気持ちはあります。ただし、確実に言えることは、優先順位は下がりました。今はジムと家族、そして試合の3つの中で、優先順位をつけると試合は一番下です。

そんな状態でMMAを戦えるほど、甘くないことは僕は十分に知っているつもりですから」

<この項、続く

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