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【Special】月刊、青木真也のこの一番:6月編─その弐─青井人×タクミ 「若い子が出てきた空気は作れた」

2017.07.06

Aoi vs Takumi【写真】タクミは最後までタクミらしく戦った(C)KAORI SUGAWARA

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ──作業の都合でかなり遅くなってしまいましたが──6月の一戦=その弐は6月25日のプロ修斗公式戦から青井人×タクミ戦を語らおう。


──続いての6月の一番はどの試合になりますか。

「中山さんの試合ですか……ね」

──修斗大阪大会、青井人×タクミ戦ですね。試合後にタクミ選手が引退を発表しました。

「中山さんが引退というのは、やはり想うところがあります。肉体的というか、凄い体とは対照的にケガで厳しいというようなことは僕の耳にも入っていましたので。とにかく、長い間ご苦労様でした。

2005年だったと思いますが、中山さんがKOTCでチャンピオンになって、修斗の後楽園ホール大会で天突頑丈と戦ったときに僕もキース・ウィスニエフスキーと試合をしたんです」

──記録を見ると青木選手が第4試合、タクミ選手がその後。セミにはブライアン・エバーソールが須田匡昇選手と戦っているという今からすれば興味深い大会です。

「KOTCでチャンピオンになったっていうのに、優しくないマッチメイクで(笑)。あの時は大会が1月29日で、中山さんも正月にパラエストラ東京にやって来ていて、練習してもらったりしていたんです。

あの頃は中山さんの方が僕らより先に行っていて、ブレイクしていた。ただ、僕らのなかではあんまり強くないって空気もあって(苦笑)」

──それこそタクミ選手らしいです。決して絶対的な強さを持った選手ではなく、脆い部分があった。ただし、MMAが好きで、必死で努力を続けていたという印象しか自分にはありません。

「『RRIDE出んねん』って言ったのにDEEPで長岡弘樹に負けたり……、少し危ういところのある先輩で。僕がマッハ(※桜井マッハ速人)さんに負けて、北岡さんが廣田(瑞人)、ホルヘ・マスヴィダルに負けた時とか、『パラエストラの皆負けているんで、俺がやり返します』なんて言って。

僕と北岡さんが切れて、『俺たちと同じことやっている思うなッ!!』なんて言っていたら、SNS上で謝罪してきたり(笑)。僕らは若くて、社会性がなかった。そういう後輩にもそんな感じで接してくれる人で。なんか、凄く覚えています──あの時のこと。憎めない、おおらかさがある人だったんです、中山さんは」

──丁寧であると同時に、頑固な人でした(笑)。

「最後までパラエストラ愛を貫きましたしね。中井(祐樹)さんへの想いも特別で。ぶっちゃけ、距離的には僕らの方が中井さんに近かったと僕なんか思っちゃうけど、中山さんの中井さんと若林(太郎)さんに対する愛情は半端なかったです。

そんな中山さんを青井君がぶっ潰した。あの子、良い選手ですね。児山(佳宏)をブッ飛ばした試合とか見ていて、『こんな子が出てきちゃうんだ』っていうワクワクしたモノがありました。修斗では時折り、ああいう若い子が出てきますよね」

──個人的には……タクミ選手はフィリピンやタイの噛ませ犬ボクサーではないはずです。ずっとこのスポーツに取り組んできた選手が……地元で最後になるかもしれないという試合で青井選手のアップのために当てたのは、凄く残念でした。

「中山さんは日本のMMA界の功労者ですからね。それに、このところの修斗の若手アップで、ベテランと当てるという流れは、そこに愛はないですよ。あれがね、まだベテランの方が勝ったらというストーリーが見えてくると分かるけど、ほとんど一連のカードは、若い方が勝てっていうアップでしかない」

──自分や青木選手もベテラン側につく、そういう年齢になったというコトではあると思うのですが。ベテランといってもフィジカル的な部分や、個人差があるわけですしね。

「露骨でしたよね。中山さんが最後になるかもしれない舞台、それは30代後半ぐらいの中山さん側にも勝負論のある試合を組んであげてほしかった。あんな感じではなくて、バトンタッチの場になるような……。僕も選手だし、他の選手に対してもやりたいところまでやるべきっていう意識を持っているけど、ただ有望な若い選手の踏み台にするのは、実はその若い選手にもあんまり意味のないことじゃないかなって」

──田丸匠選手と漆谷康宏選手が戦った時は『どっちなんなんだろう』と勝敗の行方を楽しむ要素がしっかりと存在しました。ただ、青井選手はもう児山選手との試合でしっかりとポテンシャルを見せていたので、余計にそう感じましたね。

「完全に若い選手アップの一方通行ですよ。前田吉朗はベテランでも、まだまだ強い。壁になれる。そうですね。踏み台でなく壁になるのかっていう要素がないと……ホント、死んじゃうよってことですよ。業界にいれば、体調が芳しくないとか伝わっているはずだし。

近藤有己選手とミノワマンとか、川口(健次)さんと近藤選手とか。そういうのですよね、レジェンド枠にすれば良いのに。修斗はそういうのは、やらなさそうですよね。

だって、青井君って中蔵(隆志)さんがしっかりと教えている選手ですよね。僕らの方にも関西からは青井君と竹中(大地)選手は本当に良いファイターだって伝わってきていますからね。

まぁ、そこを抜きにしても青井君のような選手が出てくるのは、明るい材料です。今回は負けちゃったけど、覇彌斗とかね。青井君は無敗の良さで勝ち切って。覇彌斗は対戦相手が違うから、ここで立ち返ってまた強くなれる。

その間の層が薄いからこその苦肉のマッチメイクではあったと思うのですが、これで若い子が出てきた空気は作れた。意地を見せることができるベテランも残っている。ここからが、楽しみですよね」

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