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【Bu et Sports de combat】 武術の叡智はMMAに通じる。岩﨑達也─05─ガマク、チンクチ

Gokikai Karate【写真】言葉を追うことでなく、そうなっている状態を作るには鍛錬を重ねるしかない (C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、通じている部分が確実に存在している。そして、如何に武術の叡智をMMAに落とし込むのか。AACCでMMAファイターが習う剛毅會空手──武術空手とは何なのか。さらにいえば、空手なのは何のか──を剛毅會空手・岩﨑達也宗師に尋ねる、この企画。


前回、空手をより知るためにガマクやチンクチなど、空手特有の言葉の意味合いを尋ねたところ、空手界の一般的な意味としてチンクチとは、背かからワキを通り、肩から拳という流れ。つまり手首、肩、腰が繋がっていく力の作用であり、ガマクは腰の上の部分を使う力の作用を指す言葉だが、剛毅會空手では別の意味を持つということが分かった。

ではそれらの言葉が何を意味するのか、それは言葉を知る、言葉で追うモノではなく鍛錬によって、そのような状態になることを指していた。

――岩﨑さん、そして剛毅會空手で意味するところのガマク、チンクチとは何を指すのでしょうか。

「チンクチやガマクという言葉は有名ですが、各々の先生方によっても意味するところは多少ニュアンスが違ってきます。私は型を学びましたが、それは学説として多少の違いがあるというモノとは違い、あくまでも私が実践してきたなかでのチンクチやガマクになります。

チンクチが掛かった状態というのは、拳が伸びて強い。そして相手から距離が遠い。それらの位置関係と力、向かい合った両者の間にある空間を指します。だから、単に体の部位でいえば背中、ワキ、肩、拳を通した体の連結や動かし方ということではない。チンクチが掛かっていないと位置関係、力、距離が構成されていないので拳は弱い、距離は遠くない、強くない突きになってしまうんです。質量を含めた部分なので他の先生が言われているチンクチとは違うかもしれないですが、私のいうチンクチとはMMAの試合でも使える状態のことを言います。

ただし、普通の空手の組手の状態から出される突きでは、チンクチが掛かっていない。だから、試合では使えないんです」

――つまりMMAにその叡智を落とし込めないわけですね。

「低い位置から拳を使うと、ガードがないから危ないと言われます。でも、チンクチが掛かっていると先ほど申し上げた要素で構成されているので相手のパンチは届かない。つまり安全なんです。ガードを高くした構えではチンクチが掛からないので、相手のパンチが届いて危険です」

――チンクチが掛かっていないとパンチが伸びたとしても、相手の攻撃を受けると。

「つまりチンクチが掛かっていると、間合いを制すことができるんです。伸びるも威力も、距離も全てが良い状況でパッケージになっていないと、危ない状態を生み出すんです。いくら威力があっても、パンチが伸びても、相手の攻撃を受けてしまいます。チンクチが掛かっていない状況ではパンチが伸びても筋肉の収縮で伸ばしているので、威力は弱くなる。チンクチが掛かった状態は背中を使っている。そして背中の動きが変わってきます。これは実際に触ってもらうとよく理解してもらえるのですが、活字では表現が難しいですね。

私が習った先生の――先生は、でもそういう沖縄の言葉を使わなかったようなんです。それは当たり前だから。チンクチ、ガマク、ムチミという言葉を使うと、それが目的と化してしまうからだと私は推測しています」

――どういうことでしょうか。

「当破という言葉があります。あまりにも凄い突きのことを尊敬を込めて、当破と呼んだはずなんです。それが最も威力のある突きが当破ということになって技を追い求めてしまう。そうしてしまうとチンクチやガマクにしても、その言葉を金科玉条(※最も大切な破ることのできない決まり)のごとく追い求めるようになってしまう」

――それでは、なぜ岩﨑さんはMMAの選手と練習するときに使うようになったのですか。

「それは言葉として、チンクチの掛かった状態を説明するより、チンクチという言葉の方が明瞭で簡単になるからです」

――チンクチはどことどこを連係させるという意味合を一言で表現するように用いられますが、岩﨑空手ではそれが先ほど言われた全体を指す言葉になるのですね。

「ハイ、部位でいうとダメです。全部がつながっていないと。だからガマクもチンクチも同時に存在しているんです。ガマクとは後ろ、背中の全ての筋肉と筋肉だけでなく骨格も含めてです。だからガマクはフィジカルに近いかもしれないですね」

――ただ、そのなかで丹田という言葉もよく使われています。

「なので丹田と言う言葉も追われているんです呼吸は皆自然にしています。ところが丹田で呼吸するというような言い方をすると言葉が一人歩きし始めるんです。呼吸は肺でするものですからね。選手は言葉を追って会得しようとするのでなく、身体が「そうなる」状態にならなければいけない。「そうなっている」状態を指しているんです。

見える、先を取る、入る、間を制すということに関すると、見ようするのではなく見ようとしている状態、先を取ろうとするのではなく先が取れている状態、入る――入っている状態。間を制しようというのではなく制している状態が、ただあるだけです。

呼吸をしようとなんて誰も思わない。呼吸をしているので。チンクチにしろ、ガマクにしても言葉でいっても伝わらない。体験してもらわないと。言葉で説明して、言われてやったとしてもならない。マニュアルで伝えるものでなく、手取りとって伝えるもの。だから、大人数に指導できるものじゃない」

――まさに古流沖縄空手が、一対一で教えていたよういなるのですね。

「それが武術なんです。マンツーマンで伝える。だから、本来は稽古は参加人数が少ない方が成果も上がります」

■岩﨑達也
1969年6月20日、東京都出身。極真空手90年、95年全日本重量級チャンピオン、世界大会三度出場。2002年国立競技場Dynamite!!でヴァンダレイ・シウバと対戦。現在、剛毅会空手道主宰、武術空手の指導、MMA選手の育成に励む。

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