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【JBJJF】中井祐樹インタビュー後編「柔術の大会でさいたまスーパーアリーナを満員に」

Yuki Nakai【写真】中井祐樹の柔術観は、中井祐樹の人間観&人生観でもあるように感じられる (C)ISAO KANDA

日本ブラジリアン柔術連盟の中井祐樹会長インタビュー後編。改めて中井祐樹の柔術観を語ってもらった。
Text by Takao Matsui

<中井祐樹インタビューPart.01はコチラから>


――年齢的にはマスターでも、今もアダルトでも活躍している選手も少なくないです。

「世界選手権の表彰台に上がってきた海外のマスター選手に比べて、日本はグッドシェイプを維持している選手が多くいます。海外のレジェンドに、日本のマスター選手が勝つというロマンがありますね」

――ワールドマスターが盛り上がる要因ですね。若い選手はどうなのでしょうか。

「課題ではありますが、そのためにもジュニアに力を入れていますので、これからが楽しみです。個人的にその年代は、あまり勝負論に徹することなく、生涯スポーツとしての側面も含めてブラジリアン柔術を生活の一部にしてほしいと思っています」

――以前にも話していましたが、ブラジリアン柔術は他競技との連携を目指すと。

「補完です。レスリングの選手が、その能力を最大限に発揮するためにブラジリアン柔術を習うとか、補完できる面はあると思っています」

――ブラジリアン柔術しかやるなという縛りはないんですね。

「これは自分の考え方かもしれませんが、まったくないです。むしろ、ブラジリアン柔術を利用してほしいくらいですね。やってみれば、面白さが分かってくれると思います。

サーフィンの代表選手だけどブラジリアン柔術の世界チャンピオンとか、あってもいいと思います。日本ブラジリアン柔術は、スポーツとしての競技を推進する団体ですが、ブラジリアン柔術をどう捉えるかは各アカデミーに委ねられています。自由ですから、誰でもできて入りやすい競技といえるでしょう」

――クローズの世界はつくらないのですね。

「僕は総合格闘技というものをやってきましたが、修斗創始者の佐山聡先生が『修斗のルールでやってくれれば、みんな修斗なんです』と説明されて、全身を打ちのめされるほどの衝撃を受けました。これ以上の明快なロジックはないわけです。

仮に僕が現役時代に空手の大会に出場していたら、空手×修斗といった騒がれ方をされたかもしれません。でも本来は空手ルールの試合ですから、そこに修斗の要素は入らないわけです」

――そうなりますね。

「空手ではなくテニスの試合をしたら、修斗の要素は入らないわけです。格闘技は、誰が強いのか、どの競技が強いのかというテーマがあるために、そうした騒がれ方をする傾向があります。そこは格闘技を語る上で興奮する議論の一つでもありますので、気持ちは分からないでもないんですけど、本来は違いますよね」

――MMAが世界へ広まり歴史を創ってきたことで、その価値観は崩れてきているように感じます。異種格闘技は、すでに風化されています。

「話は少しずれましたが、このルールを採用しているブラジリアン柔術の大会は、団体が違ったとしてもブラジリアン柔術です。分裂したと言わることがありますが、ルールのチョイスによって好きな団体に出場することができる豊かな世界だと思っています。

実際に、僕も日本ブラジリアン柔術連盟だけではなく、他の団体にも加盟していますからね。これは分裂ではありません。これは、修斗の役職時代にもやったことです。そうでなければ、いいものがつくれないと思っています。人は、いつかは分かれる時がくるものです。ずっと同じ形でやっていけるものではありません」

――自然の摂理ともいえますね。

「はい、それは仕方のないことです。でも、会場で競技をやることについては、感情論は入り込めないですよね」

――その通りです。

「ブラジリアン柔術から見れば、誰がやってもルールが同じならばブラジリアン柔術のわけです」

――修斗と同じ発想ですね。

「僕が北海道出身だから、そういう考え方になるのかもしれませんが」

――そうなのですか。

「僕の周りだけかもしれませんが、結婚式が会費制ではなかったり、作法に対する拘りがないように思います。オープンマインドというか。空手の団体名で柔術の大会に出てもらっても構いませんしね。他競技名でも、まったく問題ありません」

――その自由さが、ブラジリアン柔術の長所ですね。

「ただし帯に関しては、規定が変わりました。国際連盟からの方針で、アソシエーション外の選手に帯を出すことはできなくなりました。アカデミーも、これまでは茶帯でも代表者登録が可能でしたが、今年から黒帯が条件になっています」

――変わってきている部分もあると。

「ブラジリアン柔術は、次の段階へ入ったということでしょう。日本の組織が発足されて今年で20年、各地区に道場が開設して礎ができたと判断されたのだと思います。これからは責任を持って、広めてもらいたいということなんでしょうね。日本のブラジリアン柔術は、第二段階に入っています」

――最後に、中井会長が描く理想には近づいていますか。

「僕は、ブラジリアン柔術の大会でさいたまスーパーアリーナを満員にしたいと思い、以前から言ってきました。でも、それは理論上、簡単なんです。お客さん全員をブラジリアン柔術の生徒にすればいいんですから。全員というのは大袈裟ですが、着実に増えていると思います。

RIZINと一緒にやったこともその一環ですし、格闘技エキスポです。出展です。その理想は、確実に一歩ずつ近づいていると思っていますよ」

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