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【 Column】年末にリン・フォン以外でもMMAが…。どうなるONE、3月のベトナム・ホーチミン大会?!

Lien Phon【写真】FACE OFF──MMA WEEKEND。ジョニー・トゥリ・ウェンさん、やっちゃってくれています(笑) (C)Lien Phong

ベトナムMMA界を考察するうえで、リン・フォンを伝承されたジョニー・トゥリ・ウェンという人物が無届けのMMA大会を開いていたということをFight &Lifeから転載させてもらった。

リン・フォンとジョニーの活動を突然紹介したのは、実はその後のベトナムのMMA情勢に動きが見始め、その現状をお伝えにするには過去を知ってもらう必要があったからだ。


昨年9月6日にONE99がホーチミンで開催されたが、オール立ち技のスーパーシリーズ・ショーとして行われ──MMAの試合が組まれることはなかった。それ以前にも香港ベースのJUST MMAがベトナム進出にトライし、結局──パウンドは認められないということで撤退を余儀なくされている。

9月の取材時点でMMAジム関係者に話を訊いても、そこは社会主義国家──共産党とのやり取りを口にする人間は皆無。唯一、ジョニーだけがぶっとんだ歴史と彼自身の行いを話してくれたのが実情だ。

そんななかサイゴンBJJに在籍する小谷尚孝さんからは、彼らがドゥマウの柔術トーナメントを主催できた裏には柔道協会の承認を得たこと、そしてMMAではないかという念押しの確認をされたという話も聞いていた。

マーシャルアーツはアジア5000年のバリューというのが、チャトリ・シットヨートンのうたい文句だが、MMAはれっきとした西側社会のファイティング・エンターテイメントだ。MMAで著名なベトナム人ファイターの双璧、カン・リーとナム・ファンはベトナム社会主義共和国ではなく、旧ベトナム共和国の国旗をあしらったショーツを用いており、ベトナム共産党としては憎むべき政敵の象徴といえる。

ONEで活躍中のベトナム人選手も実のところ、ベトナム戦争時に母国を離れ米国、豪州に新天地を求めた人々の子孫である。実際9月の立ち技大会にしても、ベトナムのパスポートを持つベトナム在住のベトナム人ファイターを2人出場させることが、ホーチミンの権力者の条件であったという話も伝わってきていた。

そんなベトナムに住む小谷さんから、年末に「ジョニーが何やらやります」という1枚のフライア―が送られてきた。それがトップにあるFACE OFFというMMA大会だ。

12月28日、場所はリン・フォン・トレーニングセンター──ジョニーのジムのケージでキックの試合とともに、MMAマッチが行われ、その模様を彼はYouTubeでも配信している。

Bai Danh Chienと、驚いたことに小谷さんから同日、ホーチミンでなくハノイでもケージを用いた格闘技イベントが開催され、そのなかでMMAマッチが組まれているという情報がもたらされた。

ハノイの大会はBai Danh Chien 03というイベント名で、その名が示す通り3度目のイベント開催で、これまでは立ち技のみだったが、今回は全24試合中2試合のMMAマッチが組み込まれていた。

バイイェンチンという中国生まれで、ベトナムで高い人気を誇るコミックから大会名を拝借している同大会もYouTubeに動画を挙げており、柔術着を着た選手がマウントパンチでムエタイショーツのファイターに勝っている姿が確認できる。

このハノイの大会は、ライセンスが発給されてイベント開催が認められているようだが、後ろ盾となっているのはボクシング協会でも柔道協会でもなく、シークレットな部分が多いという。

ハノイでは昨年9月の時点でMMA協会が存在しているようだったが、同協会関係者への電話取材はおろか、現地の新聞の編集者へのインタビューも固辞されて実現することはできなかった──閑話休題。

この2つの大会、3月20日に予定されているONEにとっての2度目のホーチミン大会開催に影響がないのか。そこをONE関係者に確認すると、「両大会ともチケット発売を行っていないので、問題ではない。動画配信もノープロブレム」ということだった。

実は3月のONEでは、いよいよMMAマッチの実行に動いているという話もあり、ことを荒げたくない様子風でもあったが……。

無法地帯ならMMAを開く手段は、ある。しかし、法も体制も強固ななかでベトナムのMMAはどのような発展の見せるのか。一つの可能性を探ると、意外にもベトナムの格闘家が強いということだ。スポーツに国家の威信をかけるのは社会主義国家の特徴でもあり、11月のSEAゲームスでもベトナムの選手たちは各コンバットスポーツでフィリピンに次ぐ成果を挙げて──それだけ国が力を入れている──いた。

力を示すことができれば、そして利があれば西側文化でいくらでも受け入れるのが社会主義市場経済体制だ。果たして、3月のONEはどのようなイベント形式となるのか。「ジョニー、それまで面倒を起こすな」というのがONE関係者の本音かもしれない。

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