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【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その壱─マスンヤネ✖澤田龍人「僕も殴らない方」

Bokang vs Sawada【写真】ボカンのアンダーフック✖澤田のウィザー。ねちっこい展開が続いた (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2019年12月の一番、第一弾は6日に行われたONE105からボカン・マスンヤネ✖澤田龍人の一戦を語らおう。


──あけましておめでとうございます。

「あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」

──こちらこそ、宜しくお願いします。年始は静岡で初練習を行ったと伺っています。

「ハイ。でも、もう東京に戻っていますよ。1日中に戻ってこないと新幹線が5日まではいっぱいでとんでもないことになっているので」

──なるほどぉ。では早速ですが2019年12月度の青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合は?

「えぇと……デニス・ザンボアガの試合ですね。ザンボアガは単純にフィジカルが半端ないですよね」

──おお意外なところをついてきましたね。

「ストロー級に新しい顔が来たってことで注目です」

──……。ストロー級? 女子アトム級ではなくて??

「アッ、いやザンボアガじゃなくてマスンヤネでした。マスンヤネ、澤田龍人と戦った南アフリカのレスラーの!!」

──あぁ、ボカンですか(笑)。そういうことですか。

「いやぁ、ゴメンナサイ。完全に名前を勘違いしていました」

──実は私も大沢ケンジさんとのランキングの話で、デニス・ザンボアガをボズビーナ・アントニヤと勘違いしていました。MMA界はブラジル、ロシアに東南アジアが加わり、さらに南アフリカまで参入してくると、もう耳慣れない名前が多くなってしまうので、そういうこともありますね(笑)。

「すみませんでした(笑)。マスンヤネは単純に体が強いです」

──パンクラスで見せた試合とはまるで違う展開になりました。

「パンクラスの時はああいう試合になりましたが、あの時はまだ実力が分からなかったです。言ってみればスープレックスで勝ったのだから、それが反則になるONEでどのような試合をするのかという部分が見物でした」

──結果、バックを制し続けての判定勝ちでした。

「それは澤田選手が頑張ったと見ています。下手に持ち上げて、テイクダウンをしたら頭を打って反則負けになるかもしれない状況ではあったかもしれないけど……。同時に澤田選手をテイクダウンできなかったことに関しては、7連勝をしたとしても過去の対戦相手はレスリングを知らない選手が多かったんだと思います」

──頭から落としていけないは、未だに議論の余地がありますが、決まっていることは決まったことですしね。

「僕の場合は、ONEでは持ち上げたらダメだという気持ちで戦っているので。スラムにならないテイクダウンで戦うしかないですからね。柔道でも内股を仕掛けて、頭から突っ込むと反則負けになりますしね。その逆なのですが、やっちゃいけないことはしない。従うしかないですからね」

──ボカンはテイクダウンよりもバックコントロールを重視し、そこからグラウンドに持ち込みましたね。

「澤田選手も極められなかったし、もっと一方的になると予想していたんです。一方的は一方的だったのですが、ぶん殴られて伸されると思っていたので。まぁフィニッシュが派手、勝ち目が良いとプロモーターも評価するのでしょうが、そこは澤田選手が頑張ったということですね」

──コントロールはしていましたが、殴らなかったです。その点に関しては、どのように評価していますか。

「あぁ、僕とかも殴らない方なので」

──青木選手はコントロールの先に極めがあるではないですか。果たしてボカンに極めがあるのか。

「この間の試合はひたすらコントロールですね。でも、戦った澤田選手からすると一本とかでなくても、もう完敗だっていう風になると思いますよ。頑張って、頑張って、でも何もさせてもらえないと」

──PFLのケイラ・ハリソン✖ラリッサ・パチェコでも、一方的なハリソンのペースで試合が進んだのですが、ハリソンはマウントから腕十字を狙う際、どうしてもアクションが大きくなるので、そこに隙ができて反撃を許していました。一方で、ボカンはそれすらなかったです。でも、試合後に話すと十分に動いたという認識でいました。

「へぇ、そうなんだ。それって解釈が難しいですね。きっと、何が反則になるのかがんじがらめで、勝ち目の良い動きができなかったんでしょうね。これからはどうなるのか。相性によって来る選手だと思います。

ジョシュア・パシオなんかにはテイクダウンが合うかもしれない。その一方でグラップラー同士だと負ける可能性がありますね」

──そうなるとアレックス・シウバ、内藤のび太選手との対戦など見物ですね。

「のび太選手もアレックスも柔術ベース、サブミッションがある。ザンボ……じゃない、マスンヤネはテイクダウン。その強みがどういう風になるのか。下でも相手に合わせるファイトができるアレックスなんか、面白そうですよね。そこで今は残っているマスンヤネ幻想がどうなるのか、だと思います」

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