【ONE102】今夜、ジョシュア・パシオに挑戦─レネ・カタラン「60点のルタリーブリが僕を助けてくれる」
【写真】この優しい表情の持ち主は、我々の想像を超える苦労を乗り越えて──このような微笑みを浮かべることができるようになったのだろう(C)MMAPLANET
本日8日(金・現地時間)にフィリピンはマニラのMOAアリーナで開催されるONE102「Masters of Fate」で、レネ・カタランがONE世界ストロー級王者ジョシュア・パシオに挑戦する。
フィリピン人同士の世界戦は、ともに散打がベースの選手同士の一戦だ。ただし、23歳のチャンピオンに対しチャレンジャーのカタランは来月に41歳になる──キャリア僅か10戦目のベテランだ。
13人の兄弟と共に戦うことで人生を切り開いてきたカタランだからこそ、語ることができるフィリピンの現状を試合を翌日に控えた朝に聞かせてもらった。
──明日の夜、ジョシュア・パシオの持つストロー級王座に挑戦するレネ・カタラン選手です。今の調子はいかがですか。
「しっかりと準備してきたよ。やる気に満ち溢れている感じだ」
──マニラでフィリピン人同士の世界戦です。
「フィリピンにとって凄く大切な一戦だね。僕らのゴールはフィリピンでもっと多くのアスリートが活躍して、ファンがエンジョイすることだから。その結果、フィリピン人選手のファイトマネーも上がり、もっと練習に専念できるようになる。そしてアスリートのファミリーも豊かになれるからね」
──なんと、そこまで考えているのですね。
「僕はね、ビサヤ島のイリイロという街で12人の兄弟や姉妹と貧しい家庭に育ったんだ。6歳の時にボクシングを始め大学まで進学できた。この間、ムエタイ協会から国の代表にならないかと誘われ、同時に2001年にフィリピン選手権で優勝した。
そうしたら今度はウーシュー協会から誘われ、散打の試合に出るようになったんだ。SEAゲームとアジアゲームだけでなく、世界大会で優勝できた。
6人の兄弟がボクシングをやってきて、僕を含めた4人が今はMMAファイターになった。妹も1人、MMAをやっている。コンバットスポーツがあったから、僕らは生き残ることができた。マニラのマカティにカタラン・ファイトシステムというジムを持てるようになったんだ。そういう人間が、この国にはたくさんいるはずなんだ」
──チーム・ラカイ勢も貧しい家庭から育った選手が多いです。
「散打のフィリピン代表ではエドゥアルド・フォラヤンがチームメイトで、ジュニア時代はジェヘ・ユースタキオも一緒に戦っていたんだ。フィリピンにおけるコンバットスポーツの頂点はONEチャンピオンシップだから、僕らがここで戦うのは自然の流れだったと思う」
──ところでレネはMMAをONEでしか戦っていないですね。
「デビュー戦まで、準備期間はたったの6週間だったよ(笑)。当時は中国のエンパイアMMAというジムでコーチをしていて、急に試合が決まったんだ」
──6年のキャリアで9試合、試合数は決して多くないです。
「キャリアの序盤でいきなりアレックス・シウバ、デェダムロン・ソーアミュアイシルチョークという強豪と戦い負傷した。それからずっとケガとの戦いだよ。その後もジアーニ・スッバ、ハヤト・スズキとの試合のオファーもあったけど、ケガをしているから戦えなかった。
そんな時、ルエンやロビンという弟達が代わりに試合を受けてくれる環境が僕にはある。だから、あまり試合数は多くないんだ」
──それは特異な環境といっても良いですね(笑)。改めて現在の体調は?
「僕は来月で41歳になる。そしてアスリートにとってケガはつきものだ。気持ちで戦って必ずベルトを手にするよ(笑)。ジョシュアは若くて、強い選手だ。彼には良い練習環境があって最高のトレーニング・パートナーが揃っている。だからこそフィジカル面を強化してきたし、打撃、レスリング、ルタリーブリの練習を積んできた」
──ルタリーブリですか!!
「そうなんだ。僕のコーチのアフォンソ・シーゴ・ジュニオールはブドーカンの流れを組むルタリーブリを習得していた」
──アカデミア・ブドーカン!! ジョン・ヒカルド師範やジョイユ・デ・オリヴェイラ系のルタリーブリですね!!!
「僕はそこまで詳しく知らないけど、偉大な先生の教えを受けているとは聞いているよ(笑)」
──フィリピンのMMAを常にリードしてきたのはチーム・ラカイでした。そして日本人選手の手強いライバルはフィリピン人ファイターでなく、チーム・ラカイの選手たちという状況が長らく続いていました。しかし、3月にレネが内藤のび太選手に勝つことで一つの壁をフィリピンMMA界が越えたと思います。
「ナイトーはとにかく勝負を諦めない男で、絶対的に僕をテイクダウンしてくることは分かっていた。だから、しっかりと準備して戦ったよ。逃げ切ることは無理だから、寝技になってもこっちも根気よく戦おうと思ったんだ。ルタリーブリとレスリングの練習が役に立った試合だったよ」
──パシオもストライカーというよりも、打撃の強いウェルランダ―に成長しました。どのように戦おうと思っていますか。
「打撃でも、寝技でもどこでも真っ向勝負するよ。まだ打撃に比べると僕のルタリーブリは60点ぐらいだ。ただし、この60点のルタリーブリが僕を助けてくれるだろう。明日の夜は日本のファンも喜んでくれる試合をするよ。それは明日のためだけじゃない、これからのためになるからね」
■ONE102対戦カード
<ONE世界ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]ジョシュア・パシオ(フィリピン)
[挑戦者] レネ・カタラン(フィリピン)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
ツォゴーフ・アマルサナー(モンゴル)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
センマニー・サティアンムエタイ(タイ)
アジス・ハライ(モロッコ)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ジェヘ・ユースタキオ(フィリピン)
トニ・タウル(フィンランド)
<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
スタンプ・フェアテックス(タイ)
ビー・ニューイェン(米国)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
リー・カイウェン(中国)
ポール・ルミヒ(インドネシア)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
内藤のび太(日本)
ポンシリ・ミートサティート(タイ)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ゴーンサック・PKセンチャイムエタイジム(タイ)
ハン・ズーハオ(中国)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ロビン・カタラン(フィリピン)
グスタオ・バラルト(キューバ)
<ムエタイ・バンタム級/5分3R>
トゥカートン・ペットパタヤイ(タイ)
鈴木博昭(日本)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
キム・ジェウン(韓国)
ハファエル・ヌネス(ブラジル)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
キム・キュソン(韓国)
藤沢彰博(日本)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ロシャン・マイナン(インド)
コン・シチャン(カンボジア)