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【ADCC2019】77キロ級─01─トレスがDJを破り、トノンはカヌートとの大会ベストバウトを制し準決勝へ

77 Tonon【写真】スタンドでこれだけの動きを見せるようになったトノンとカヌート。ADCCがノーギ柔術でなくサブミッションレスリング(現在では大会名称はサブミッションファイティングに変わってしまっているが)ことが立証されるようなベストバウトをトノンが制した。 (C)SATOSHI NARITA

9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。

2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー14回目は前回覇者のJTトレスや注目のサブミッションアーティスト、ゲイリー・トノンらが出場した77キロ以下級Aブロックの準々決勝までの模様をレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi


前回ルーカス・レプリのバックを奪って念願の初優勝を果たした本命、JT・トレスは1回戦、英国のロス・ニコラスの下からの攻撃を上からの強烈なプレッシャーで封じて、延長戦でニコラスの引き込みによるマイナスで勝利。準々決勝にてチーム・ロイド・アーヴィンにおける元同門、DJジャクソンと対戦した。

JT vs DJ 01<77キロ以下級準々決勝/10分1R+ExR5分>
JT・トレス(米国)
Def. by 3-0
DJ・ジャクソン(米国)

JT vs DJ02トップゲームに定評のある両者だけに、延々とスタンドレスリングの攻防が続いたこの試合。加点時間が始まる直前、トレスはアームドラッグを見せたと思いきや瞬時に飛び込んで見事な小内刈り&ダブルレッグでテイクダウンを決める。そのまま低く重心をかけてジャクソンにスクランブルを許さず、ガードの中に入る形で上のポジションをキープした。

その後加点時間帯が開始すると、低く胸を合わせてジャクソンの上半身の動きを制したトレスは、片足を超えてハーフに侵攻。脇を差してマウントを狙ってゆくトレスは、ジャクソンが返そうとしたところで巧みに対応してバックを奪取。そのままシートベルト・グリップを作ると、試合終了まで強固なコントロールを維持して勝利した。

Tonon vs Gamrotこのブロックのもう一方の山では、前回4位のゲイリー・トノンがポーランドKSWのフェザー級&ライト級のチャンプチャンプ=マテウス・ガムロと対戦。

MMAでクロスヒールから、アウトサイド・ヒールで一本勝ちを決めるなど、極めの強さを見せたかと思うと、クレベル・コイケ戦ではグラップリングに付き合わない試合で判定勝ちするなど、ポーランドの軽量級一の強さを見せるガムロに対し、トノンは見事なタイミングの横捨て身を繰り出して宙を舞わす。トノンはそのまま背中に回って襷掛けを作り、四の字フックからチョークを決めて勝利。ヘナート・カヌートとの注目の準々決勝戦に駒を進めた。

Tonon 02<77キロ以下級準々決勝/10分1R+ExR5分>
ゲイリー・トノン(米国)
Def. by 本戦 0-0 延長 0-0 マイナスポイント0-1
ヘナート・カヌート(ブラジル)

Tonon 03試合開始早々、トノンは一瞬でカヌートの右腕を引いて崩すとバックへ。背中に付かれたカヌートも動き続けて立ち上がると、トノンを豪快な払い巻き込みで舞わせ、そのまま振りほどいて立ち上がってみせた。

いきなりの激しい攻防を経て、ますますヒートアップした両者。カヌートがほとんど張り手に等しいいなし見せると、トノンはまたしても一瞬のアームドラッグからバックにまわる。が、カヌートはすかさず腰を上げてトノンを前に落とすと、その胸を両腕で突き放した。

その後も頭を付け合い、激しくいなし合う両者。やがてノーガードのような形で頭をカヌートの頭につけて前進したトノンは、一瞬のスナップダウンからギロチンへ。そのまま後方に投げてグラウンドに持ち込もうとするが、カヌートはタイミングを合わせて側転して上になり、頭を抜いた。

試合はまたしても両者スタンドへ。カヌートはトノンの右腕を殺す形でグリップを組むと、豪快に後方に投げてのテイクダウンに成功! そのままサイドにつくが、まだ前半なのでポイントは付かず。

Tonon 04タイトに抑え込むカヌートだが、トノンはやがて立ち上がると、前転して体をずらして正対に成功。トノン下、カヌート上の状態で試合は加点時間帯を迎えた。シッティングを取ったトノンは、そこからダブルレッグに移行し、クラッチを組んでカヌートをテイクダウン。しかしカヌートも押さえ込まれる前に立ち上がる。ダイナミックかつノンストップの攻防を繰り広げる両者に、場内からは大歓声が浴びせられている。

トノンが再びシッティングを取り、今度はカヌートは側転パスへ。トノンも対応して正対する。今後はトノンがシッティングからカヌートの右足を取り、シングルレッグを仕掛けるも、ヌートは素早く足を抜くというノンストプアクションに。

Tonon 04スタンドに戻ったトノンは、アームドラッグからシングル。カヌートが足を抜いて逃げると、そのまま突進したトノンは、すでに場外に出ているにもかかわらずダブルレッグで飛び込んで豪快にテイクダウン。ポイントにはならないが、場内はさらに沸いた。

スタンドでの再開。前に出るトノンと、いなすカヌート。スナップダウンとアームドラッグを中心に仕掛け続けるトノンは、やがてシングルに入りカヌートの右足を掴む。片足で粘るカヌートをなかなか倒せないと見たトノンは、足を離して飛び込んでのダブル。豪快にカヌートをテイクダウンするが、またしても場外でブレイク。

本戦終了寸前。カヌートがシングルに入ると、トノンはそれをさばいてアームドラッグでカウンターし、素早く背後に。さらにカヌートを抱え上げて投げて崩してから、バックに飛びつくトノン。あわや3点獲得かと思われる場面だったが、カヌートは本戦終了まで二つ目のフックを許さずに守りきり、場内を震撼させ続けた大熱闘の10分は両者ノーポイントのまま終わった。

Tonon 06スタンドから再開された延長戦。カヌートは飛びついてがぶるやギロチンへ。トノンは体をひねって投げて振りほどく。次はトノンがシングルで逆襲。カヌートの右足を掴んで背後に回るが、ここでカヌートは本戦に続き豪快な払い巻き込み。そのままグラウンド状態に入った両者はお互い上を狙うが、どちらも譲らず。試合はスタンドに戻った。

その後トノンは突進してダブルを狙うが、これまた場外。再開後、これだけ動き続けて全く勢いの衰えないトノンはアームドラッグやスナップダウンを仕掛けるが、カヌートもさばき、逆にテイクダウンのフェイントを見せる。やや疲れが見えてきて守勢に回る場面が増えてきたカヌートだが、こちらも全く試合を諦めていない。

残り2分のところで、カヌートがダブルレッグに行くと、トノンが反応してがぶる。さらにトノンは瞬時に潜り込んでカヌーとの右足を取ってテイクダウン。カヌートは倒されながらもギロチンを取り、トノンを後方に投げるが、トノンもすかさずスクランブルして両者立ち上がる。今後長く語り継がれるであろうこの大激闘は、まだ決定的な場面を迎えていない。

Tonon 07終盤、さらに前に出て仕掛けるトノンは、またしてもシングルに入ってカヌートの右足を掴むが、カヌートも振りほどく。が、ここでカヌートはついに消極性のマイナスポイントを宣告されてしまうことに。後のないカヌートは残りの力を振り絞ってのダブルに入るが、スタミナと勢いで勝るトノンはあっさりがぶる。

残り20秒。カヌートはテイクダウン狙いから飛びつきを見せるが、トノンはそれも難なく凌いで試合終了。驚嘆すべきアグレッシブさを最後まで切らすことのなかった気力充実のトノンが、ADCC史上に残る大激闘を制した。

2015年の本大会。クロン・グレイシーの腕十字を逃れた後、バックを奪いあわやの場面まで追い詰めることで後年まで語り継がれる名勝負を残したトノンが、4年後にそれに勝るとも劣らない激闘を演じてみせた。クロン戦は至高のサブミッションの攻防で人々を魅了し、今回は凄まじいテイクダウン合戦を中心とした攻防で場内を震撼させた事実は、ゲイリー・トノンがいかに稀有なグラップラーであるかを物語っている。

とまれ、これでAブロックの準決勝は、昨年と同じトレスとトノンによる組み合わせとなった。

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