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【UFC238】新王者が決まるバンタム級戦線でヤン✖リベラ、ムニョス✖ステーリングが見逃せない

Yan【写真】ここでインパクトを残す勝ち方ができれば一気に世界挑戦もあるいか──ピョートル・ヤン(C)Zuffa LLC/Getty Images

8日(土・現地時間)、イリノイ州シカゴのユナイテッド・センターでUFC238「Cejudo vs Moraes」が開かれる。3月にTJ・ディラショーがドラッグテストで陽性となり、タイトル剥奪前に返上したUFC世界バンタム級王座を現フライ級王者ヘンリー・セフードとマルロン・モラエスが争う一戦がメインの今大会には、セミでUFC世界女子フライ級選手権試合=王者ヴァレンチーナ・シェフチェンコ✖挑戦者ジェシカ・アイ、さらにトニー・ファーガソン✖ドナルド・セラーニのライト級戦とビッグカードが並んでいる。

そんななか新たな頂点が決まるバンタム級戦線ではPPVカードでジミー・リベラ✖ピョートル・ヤン、プレリミでペドロ・ムニョス✖アルジャメイン・ステーリングという見逃せない試合が組まれている。


リベラはムニョス、ユライア・フェイバー、トーマス・アルメイダらを含む強力なメンツを相手にUFCデビュー以来5連勝を記録していたが、王座がさらに近づく大切な一戦でモラエスのハイキックで秒殺され、ジョン・ドッドソンに快勝して再起──も、今年の2月にステーリングとの東海岸ライバル対決で遅れを取ってしまった。

連敗すると王座挑戦からは限りなく遠くなってしまうなかで、ズッファがリベラに用意した相手は昨年6月のUFC入り以来4連勝中のヤンだ。ロシア人、元ACB王者ヤンは世界のMMA界を席巻するダゲスタン軍団ではなく、シベリアの西端に位置するオムスク出身のファイターだ。

幼少期からテコンドーを学び、ボクシングに転じてからはマスター・オブ・スポーツの称号を手にしている。そのボクシングの経験は、ヤンのファイトスタイルに如実に表れている。中間距離から内側の距離でヤンは見事なヘッドムーブで相手の攻撃をかわし、上半身を大きく動かしても体の軸が乱れることはない──ばかりか、上半身を動かすことで得た旋回力で、パンチ力が増している。

さらにいえば5オンスの小さなグローブでブロッキングを見せるなど、世界最高峰にあってもトップクラスのボクシング技術を見せている。それが可能なのも、体の軸が乱れないことでテイクダウンに反応できているからに他ならない。リベラも多くのMMAファイターよりも、早いリズムとタイミングでの踏み込み&パンチを大きな武器としているが、この動きにヤンがどのような反応の見せることができるのか。また、より外のレンジをリベラが取った時に、ヤンの追い足やプレッシャーの掛け方にも注目したい。

上記にあるように前の試合でリベラに勝利しているステーリングは、D3のオールアメリカンレスラーで、ブラジリアン柔術との融合に成功したアスリートといえる。遠い距離での打撃からテイクダウン&コントロールは、真正面&中間距離の打撃戦が増えてきたMMAにあってファンやプロモーター受けはしないが、より安定度が高いアスリートだ。

その安定度の高さは、メインで世界王座に挑むモラエスにこそ敗れてはいるが、過去5試合で4勝1敗という結果にも表れている。対するムニョスもUFCで8勝3敗という好成績を残している伝統空手&ノーギ柔術の猛者だ。ハファエル・アスンソン、リベラ、ドッドソンというところに競り負けてはいるが、今年の2月に元世界王者コディー・ガーブラントを右フックでKOし、タイトル挑戦権争いの主役に躍り出た。

ガーブラントを破ったボクシング力の向上により、ステーリングが打撃への意識が強くなるようだと、本来の強みであるグラップリングで試合を支配することも考えられる。それでも打撃の真っ向勝負をすることはまず考えられないステーリングに対し、自らテイクダウンを奪いにいくのは至難の業だ。

ただし自分のタイミングでテイクダウンを受けるファイトに持ち込むことで、得意のグラップリング+スクランブル=ギロチンという勝利の方程式を成り立たせることもムニョスは可能だ。そのために打撃の圧力を掛けるファイトと、ステーリングのテイクダウンやクリンチの距離が合致すれば、非常にスリリングな試合になるだろう。メインの世界王座決定戦も含め、非常に見応えのあるバンタム級ウォーズが見られるに違いないUFC238だ。

■ 対戦カード

<UFC世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
ヘンリー・セフード(米国)
マルロン・モラエス(ブラジル)

<UFC世界女子フライ級選手権試合/5分5R>
[王者]ヴァレンチーナ・シェフチェンコ(キルギス)
[挑戦者]ジェシカ・アイ(米国)

<ライト級/5分3R>
トニー・ファーガソン(米国)
ドナルド・セラーニ(米国)

<バンタム級/5分3R>
ジミー・リベラ(米国)
ピョートル・ヤン(ロシア)

<ヘビー級/5分3R>
タイ・ツイバサ(ニュージーランド)
ブラゴイ・イワノフ(ブルガリア)

<女子ストロー級/5分3R>
タチアナ・スアレス(米国)
ニナ・アンサロフ(米国)

<バンタム級/5分3R>
ペドロ・ムニョス(ブラジル)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
カロリーナ・コバケビッチ(ポーランド)
アレクサ・グラッソ(メキシコ)

<フェザー級/5分3R>
リカルド・ラマス(米国)
カルヴィン・ケイター(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
イェン・シャオナン(中国)
アンジェラ・ヒル(米国)

<ミドル級/5分3R>
ベヴォン・ルイス(米国)
ダレン・スチュアート(英国)

<バンタム級/5分3R>
エディ・ワインランド(米国)
グリゴリー・ポポフ(ロシア)

<女子フライ級/5分3R>
ケイリン・チューケイギアン(米国)
ジョアン・カルダーウッド(英国)

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