【PJJC2019】イアゴ優勝、ジョアオは準優勝、3位にパウロのライトフェザー級。山田と鍵山の戦いを追う
【写真】ミヤオ兄弟がふっくらして見えるポディウム (C)IBJJF
21日(木・現地時間)から24日(日・同)にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。レビュー第3回は、ライトフェザー級における山田秀之(トライフォース)と鍵山士門(デラヒーバ・ジャパン)戦いを振り返りたい。
<ライトフェザー級1回戦/10分1R>
レネ・ロペス(ブラジル)
Def. by referee decision
山田秀之(日本)
一度お互いにペナルティが入った後、上を選択してアドバンテージを得たのは山田の方。下のロペスは得意のスパイダーガードで山田を引きつけるが、山田は座り込んでダブルガードに持ち込む。やがてロペスがシットアップして2点を取ると、山田もすぐにロペスの右足にデラヒーバで絡み、崩して上を取り返してみせた。これで点数は2-2だが、アドバンテージで山田がリードしている。
その後再びロペスがスパイダーを取り、山田が背中を付けてダブルガードに持ち込む攻防が繰り返される。ロペスがベリンボロを仕掛けるが、山田はうまく距離を取って回避する。やがて5分が経過した頃、両者に降着のペナルティと、(2つ目のペナルティによる)アドバンテージが追加された。
その後ロペスはシットアップ、ポイント4-2で逆転すると、山田の足をさばいて左に回ってのパス狙い。山田が凌ぐと、ロペスは倒れこみながら山田の背中とマットに間に入り込んでのバックを狙う。ここで山田は距離を作って立ち上がり、スコアは4-4ながら、アドバンテージ差で逆転してみせた。
残り3分。負けているロペスはスパイダーで山田の体勢を崩すと50/50を作る。ここからもう一度山田の体勢を崩したロペスはトーホールドへ。山田も掛け返して上をキープするが、この攻防でロペスにアドバンテージが与えられ、スコアは完全に同点となった。
スパイダーを作るロペスに対して、山田は横に回ってのパスを狙うが、ロペスは長い右足を伸ばして許さず。そのまま山田の体勢を崩してダブルガードに持ち込んだロペスは、やがて立ち上がって6-4とリードする。かくして試合は残り1分、上を取り返したい山田と上をキープしたいロペスの死力を尽くした最後の攻防に持ち込まれた。
ここでシッティングガードを取った山田は、ロペスの股間の下に腰を深く入れると、ロペスの腕を前に引き付けながら、両足でその体を跳ね上げて後方に投げ捨ててスイープ。そのまま上になり、残り30秒で6-6に追いついてみせた。
下になったロペスはスパイダーから崩しにかかるが、山田は距離を取る。ならばとロペスは山田の右足を取ってバランスを崩すも、山田もうつ伏せになりながらアキレス腱固めを仕掛ける。両者の片足が絡んだままロペスが立ち上がると、山田も片足で立ち上がる。最後、再び下になったロペスに対して、山田がなんとかその足を捌こうと横に動くうちに試合はタイムアップを迎えた。
ポイント6-6 アドバンテージ2-2 ペナルティの数も2-2というまったく互角の試合のレフェリー判定は、ロペスに軍配。お互いにスイープを決め合い持ち味を発揮した両者だが、強いて言えば、ロペスがサブミッション狙いでアドバンテージを取ったことが評価されたか。
ちなみにロペスは次戦でパウロ・ミヤオと対戦。得意のスパイダーガードを駆使してパスを許さず。パウロが終始余裕を持って戦っていたことは否めないとは言え──終盤に奪われたアドバンテージ1つ差で敗れるという健闘をみせた。このような強豪相手に、死力を尽くした紙一重の戦いを展開したこの試合は、山田の大きな財産となることだろう。
<ライトフェザー級準々決勝/10分1R>
ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)
Def. by 腕十字
鍵山士門(日本)
鍵山は一回戦の相手が現れずに不戦勝。初戦でいきなりジョアオ・ミヤオとの大一番を迎えることとなった。
試合開始後、鍵山が座ると次の瞬間ジョアオも座る。ここで鍵山が立ちあがると、ジョアオも続いて立ち、そして改めて座りなおす。鍵山は上にステイし、この攻防で2点が与えられた。最初のコンタクトがダブルガードではなく、鍵山が先に引き込んで上下が成立したと判断されたが故の裁定だ。
とまれ、下になったジョアオは鍵山の右足を腕で掬って崩しにかかるが、鍵山はバランスを保つ。しかし攻撃を止めないジョアオはデラヒーバの形からベリンボロ狙い。動きについて行こうとする鍵山より先にスピンしてその体勢を崩した、さらに後転して上を取り、あっさりポイント2-2で追いつく。
上になったジョアオは、右足を絡められながらも体重を前にかけ、鍵山の襟を掴んで上にある右足を潰してレッグドラッグを狙う。プレッシャーをかけ続けるジョアオは、鍵山の左腕と首をまとめて抱える。やがて完全に鍵山の上半身を制したジョアオは、左足も使って右足の絡みを解除。そのままサイドについて、即マウントに移行。9-2とリードを広げた。
マウントを献上した鍵山だが、エビで隙間を作って距離を取ることに成功すると、ジョアオの左足を肩で抱える体勢を作る。しかしジョアオはバランスを保ち、鍵山とマットの間にダイブして上からのベリンボロ狙いへ。そのまま上体を起こしたジョアオは、レッグドラッグからパスガードで12点目を獲得した。
残り3分。再び下から動いてハーフに戻した鍵山だが、ジョアオはワキを制して上半身を潰し、ニースライスから再びパスガード。さらにニーオンザベリーも決めて17-2とリードを広げた。そのまま低く体重を掛けてスペースを潰すジョアオは、鍵山の頭をまたいでファーサイドの左腕をり腕十字へ。粘る鍵山のグリップを切って、残り30秒のところで試合を決めた。
世界最高峰ジョアオを9分半に渡って体感した鍵山。下からの崩しから迅速のベリンボロにつなぐ連続攻撃、上からの足の潰し方、プレッシャーのかけ方、相手の動かし方等、受けた本人にしか分からない無数の学びを得られたことだろう。
鍵山を破ったジョアオは準決勝でパウロとクローズアウトしたイアゴ・ジョルジに表彰台の頂点を譲り準優勝、パン柔術ライトフェザー級を制しシセロ・コスタ勢が上位を独占した。
【リザルト】
ライトフェザー級
優勝 イアゴ・ジョルジ(ブラジル)
準優勝 ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)
3位 アレクサンドロ・ソドレ(ブラジル)、パウロ・ミヤオ(ブラジル)