【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その弐─キム・ミンウ×ムン・ジェフン「リクエストすべき」
【写真】強い韓国人の今後と、日本人選手のキャリアの築き方とは (C)ROD FC
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2月の一番、第2弾は23日に開催されたRoad FC52からロードFCバンタム級王座決定戦=キム・ミンウ×ムン・ジェフンの一戦を語らおう。
──2月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?
「キム・ミンウとムン・ジェフンですね。僕はムン・ジェフンは強いと思うんですよ。元谷の評価が高いから、元谷を軸に彼とやって頑張ったら祖根のように評価は高くなる。ムン・ジェフンは元谷に勝てた試合でした。あのボディへの効かせ方を見ると。
それを思うとムン・ジェフンは強いと思うけど、キム・ミンウはバックテイクからグチャグチャとスクランブルになって三角絞めでキュッと取るってことは、キム・ミンウだって普通に強い」
──1勝1敗で決着戦、ロードの流れでいえば殴り合いになるのかと思いきやまるで違いました。
「バックに回ったとき、ゴードン・ライアンとかがやる手も足でフックするのでいったかと思ったんです。それが滑って、でも三角絞めにもっていった。マニアックな話をするとこの間、橋本知之選手と話をしたときに韓国は凄く柔術が盛り上がっていると聞いて──キム・ミンウの三角絞めがそこに繋がったんです。
韓国人、寝技が強くなっている。『どうすんのよ?』って。そうなると打撃は粗い、ガッツなので韓国はこれからは寝技の国になるのかなって」
──荒い打撃というのも韓国MMA団体の色ですし、韓国人選手はガチャガチャでも✖北米等で見ると多くの日本人選手よりも打撃戦で渡り合えています。
「ガッツが違いますからね。ガッツが担保されているから、あの打ち合いがある。引かないですよね。そこにあのキム・ミンウのフィニッシュを見ると、これは組み技も案外と伸びてくるんだろうなって」
──キム・ミンウは1年10カ月前にキム・スーチョルに挑戦し敗れ、復帰戦が今回の王座決定戦でした。ムン・ジェフンもRIZINで敗れている。さらにいえば昨年末にロードFC女子アトム級王者ハム・ソヒに挑戦したパク・ジョンウンもJEWELSで敗れた後の試合でした。
「この1年の韓国のMMAはロードにしろ、トップFCにしろ落ちているから、マッチメイクにもそこが出てきてしまっていますよね。でも、その選手たちが強い。それは地力が上がってきているということだし、ここから先彼らはどうなっていくのか」
──国内のイベント数が減ってくると、やはり海外に目を付けますよね。すでにロシアのMPFなどに団体から派遣されていますし。
「ACBにも出て行っていましたよね。ヒョードルの頃から韓国とロシアって関係がありますしね。そうやって選手の目が外に向かっているというのは、国内の地盤沈下が関係しているのは間違いないです。トップも新宿FACEみたいなところでやっているんですよね?」
──シンドリム・テクノマートですね。ロードも昨年のテジョン大会や次回のチェジュ大会のように地方都市の開催も増えてきました。
「韓国の情勢は興味があります。ロードは本当に凄かったじゃないですか、金の使い方とか」
──中国資本があった時の活動で、あれだけ良い大会があってなお根付かなかったとすれば、本当に我が事のように捉える必要がありますね。
「今から思うと、大きく見せていたのか……。中国経済がどうなっているのかですよね。アオルコロとかスターにして、中国人アップのカードを組んでいたけど、アレはどうなったのか。ロードで戦った日本人選手たちだって、結構良い選手が行って負けていたし。これからのロード、韓国はどうなるのか。選手が日本に流れてくることも十分に考えられますよね」
──キ・ウォンビン、キム・ギョンピョという次世代のトップファイターが既にGladiatorから修斗に来日して結果を残しています。
「HEATにオク・レユンがいたり、日本に強い韓国人がやってくると良いことですよ。ちゃんとした実力者と戦えるんだから。そういう選手と戦いたいとリクエストすべきですよ、自分のキャリアを作るために」
──HEATのバンタム級王者キム・ミョンギュは赤尾セイジ選手、春日井たけし選手に勝っているわけですし。
「そうですよ。だからUFCを目指す選手とかは特に『韓国の××と戦いたい』って口にすべきですよ。佐藤豪則とかは元UFCファイターだっていうことで、トップFCに呼ばれていたわけだし。逆にロードやトップで結果残している韓国人選手やオク・レユン、キム・ミョンギュの名前を出すべきですよ。自分のためにね。
前に春日井がチョ・ナムジンと戦いたいといって実現さけたじゃないですか。アレと同じですよ。国内のプロモーション間では日本人のチャンピオンは行き来ができない。それはプロモーション活動としては理解できます。ただ、そうすると戦うことができる強い日本人選手の数も限られてくるわけですから、韓国人選手と戦ってキャリアを築く。それは一つの手段だと思います。『キム・ミンウとやらせてくれ』っていうバンタム級の選手、出てこないですかね?」