【HEAT44】春日井たけしと対戦、清水俊一─01─「ラウェイをやると、覚悟が固まるのが速くなる」
【写真】ヤンゴンのPTジムで。清水の左がONEファイターのポー・トー。右がヤンゴンで清水が非常に世話になったという原氏(C) SYUNICHI SHIMIZU
3月2日(土)に名古屋市熱田区の名古屋国際会議場イベントホールで開催されるHEAT44に清水俊一が初出場、春日井たけしと戦う。
この試合のオファーを清水が聞いたのは、ヤンゴン滞在中のことだった。昨年よりラウェイで戦うようになり、3度目のミャンマー滞在中に受けたオファー。その独特なキャリアの積み方をしてきた清水は、今も2014年1月に惨敗を喫したUFC=カン・ギョンホ戦のイメージが付きまとう悲運のファイターともいえる。
悪夢の7連敗、今もMMAでは3連敗中で暗中模索のなか、彼には一点明白が事実が存在する。それは『格闘技が好きだ』ということだった。春日井戦を今週末に控えた清水の心境を尋ねた。
──今週末、春日井選手と戦います。コンディションはいかがですか。
「今のところ、コンディションは大丈夫だと思います」
──MMAを戦うのは昨年7月に青森で行われたGlobal Fighting Gameの小倉卓也戦以来になります。
「そうですね。1月に台湾で試合が予定されていたのですが、相手の体重オーバーでなくなってしまったので。その後、1月の終わりぐらいにHEATさんからオファーが届きました。もともとオファーを断ることはないのですが、春日井選手と戦わせてもらえるのはありがたいです」
──ありがたいというのは?
「もちろん凄く強い選手だというのがあります。そして関東圏以外の選手と戦う機会はあまりないと思っていますし、名古屋で試合ができることもありがたいというのが素直な気持ちです。名古屋は東京と違って大会数も限られているので、戦う機会が巡ってくることは少ないのですが、こうやって声が掛かるということはこれからも名古屋で戦えるチャンスができるかもしれない。それも嬉しいです」
──東京の大会より注目を集めるということでしょうか。
「そういうことではないです。新しい場所として戦えることが嬉しいです。脚光を浴びるために試合をしてきたわけではないので」
──なるほど。ところでこの試合のオファーがあったときは日本におられたのですか。
「ミャンマーにいました。1月26日までミャンマーにいて、試合が決まってから帰国しました」
──SNSでもよくミャンマーでの様子がアップされています。昨年はラウェイでも戦っていた流れかと思いますが、なぜミャンマーを訪れているのでしょうか。
「1回目は2月に渡慶次(幸平)選手のセコンドがいなかったので頼まれてミャンマーに行き、2度目はILFJ(インターナショナル・ラウェイ・フェデレーション・ジャパン)から誘われて10月に行き2週間滞在しました。3度目は人の縁でミャンマーに住んでいる原勇二朗さんから、ONEファイターのポートー選手のチームPTで練習と指導をしてみませんかと誘ってもらったんです。
僕なんかで良いのですかとは何度も確認したのですが、原さんは『あの劣悪な環境で生きていける清水さんなら。普通の日本の人ではミャンマーは無理ですから』と言ってもらえて」
──劣悪な環境というのは?
「2度目に行った場所がネットはない、テレビもない、英語も通じずコミュニケーションが取れない。スラムの近くにあるところで、ミャンマーの人からしても普通は行かないところらしくて。そういう場所にいたので、声を掛けてもらった形です。
でも、ポートーさんのジムはヤンゴンでいえばすごく良い場所にありますし、日本の感覚だと月に2、3万円支払って通うジムだと思います(笑)」
──ミャンマーは私も2度訪れたことはあるのですが、言葉は通じなくても人は素晴らしく良いという印象を持っています。
「嘘をつかないですよね。言葉が通じなくても、とにかく頑張って対応してくれますし。昭和30年代の日本のようだとはよく言われています」
──あぁ、なんとなく分かります。野良犬はたくさんいるし(笑)。
「なので正直言えば、もう少し居たかったです(笑)」
──ミャンマーと繋がりができたきっかけはラウェイですが、そもそも清水選手はなぜラウェイを戦おうと思ったのですか。
「それはもう10数年前になりますが、田村彰敏選手がラウェイにチャレンジしたときにラウェイを知りました。ムエタイとは全く別モノで、チャンスがあれば戦いたいと凄く興味を持ったんです。でも、日本人がミャンマーに簡単に行ける状況ではなかったですし。それがILFJの活動が始まり、日本にラウェイが持ち込まれたときに、これも人の縁で出ることができて嬉しかったです。怖かったですけど(苦笑)」
──グローブなし、頭突き有りを体験したかったということですか。
「はい。やってみたかったです」
──MMAとはそれこそ別物ですが、どのようにすみ分けていますか。
「最初に出たときの気持ちはMMAにありました。ただし、同時にやっていくことは難しいとも考えていました。練習の比率は変えていないなのですが、どちらに振るかということはまだ結論が出ていません。ベースはMMAですし……。ただ、ラウェイで戦っている選手って、本当に凄いと思うんです。
目に拳がすぐに入りますし、ミャンマー人ですら『ラウェイは危ない』って言っているんです。だからこそ、MMAファイターとして覚悟という部分が生きてくると思うんです。ラウェイ出身のMMAファイターは、寝技とか課題はあります。でも倒しに行くという気持ち、覚悟が固まるのはムエタイの選手よりも速いと思います。
ラウェイには判定がないので、殺しに行く気持ちを皆が持っていますよね。そういう覚悟という部分では、前よりは出せるかと思っています」
──清水選手は本当に特殊なMMAキャリアを誇っていて、いわゆるオンリーワン的な選手です。そして、その部分でもっと評価されて然りの部分があるなかで、UFCで一度戦った。あの敗北の影響を受け続ける格闘家人生になっていると思うのです。
「UFCに出られる……それが決まった時はただ単に凄く嬉しかったです。だから調子に乗っていた部分はありました。それは今でも自覚しています。ただあの時は風潮として、日本でもUFCが間違いなく頂点でした。そこで僕のようなキャリアの人間が出たことは、やはり目立つことだったと思います。
結果的に負けてしまい、あの時は本当にいろいろと言われました。でも、それでも続けてきたのは格闘技が好きなんだろうなって」
<この項、続く>
■HEAT44 対戦カード
<HEAT総合ヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]カルリ・ギブレイン(ブラジル)
[挑戦者]石井慧(日本)
<キック・スーパーヘビー級/3分3R>
ジェロム・レバンナ(フランス)
楠ジャイロ(ブラジル)
<HEAT総合ライト級選手権試合/5分5R>
[王者]オク・レユン(韓国)
[挑戦者]トム・サントス(ブラジル)
<バンタム級/5分3R>
春日井たけし(日本)
清水俊一(日本)
<ヘビー級/5分3R>
チョン・ダウン(韓国)
サシャ・ミリンコヴィッチ(クロアチア)
<55キロ契約/5分2R>
鈴木万李弥(日本)
本野美樹(日本)
<キック・スーパーライト級/3分3R>
ヴィトル・トファネリ(ブラジル)
石田勝希(日本)
<キック・ミドル級/3分3R>
ヒマラヤン・チーター(ネパール)
チョ・ギョンジェ(韓国)
<キック65キロ契約/3分3R>
安川侑己(日本)
加藤駿(日本)
<キック・ライト級トーナメント1回戦/3分3R>
チャオ・ロゲート(タイ)
将輝(日本)
<キック・ライト級トーナメント1回戦/3分3R>
ヘンリー・セーハス(ボリビア)
ジュ・ギフン(韓国)