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【Special】『2018年中に話しておきたかった人』。藤野恵実─02─「夢が叶わないのを理由に辞めたくない」

Hamasaki & Fujino【写真】やり切ってきたコンビ、浜崎朱加と藤野サンタ (C)MMAPLANET

2019年を迎え、MMAPLANETでは2018年の間にどうしても話を聞いておきたかった格闘家を5人ピックアップした。

『今、この人と話しておきたい──2018』。後編『2018年に話しておきたかった人』は藤野恵実の話の続きからお届けしたい。先が見えない状況ながら、確実に訪れる終幕を意識した藤野の想いとは。

<藤野恵実インタビューPart.01はコチラから>


──ぜひ、アイドルは目指してほしいです(笑)。可能性もありますよ。

「ありますか(笑)。じゃぁ、そっちに行こうかな」

──アハハハ。

「とにかく、MMAをずっと続けてきたのは強い相手と戦いたいからです。なので、そういう選手と戦わせてくれるところで戦ってきましたし、そうできるならありがたいです」

──15日にインヴィクタFC33でシャロン・ジェイコブセンが試合終了間際の大逆転負けまで、ケイ・ハンセンを圧倒していました。つまりジェイコブセンに勝利している藤野選手は、十分にインヴィクタで戦っていける実力があると思われるのですが。

「アレは何なんですかね(笑)。最後の反り投げなんて、遊んだんですよね。あそこまで圧倒していて。ジェイコブセンは弱くないですからね」

──インヴィクタには藤野選手やジェイコブセンより弱い選手も少なくないです。

「結局、今のインヴィクタはプロの戦績が全然ない選手がたくさん出ていて。米国に住んでいて出たい選手は出場できる感じだから、う~ん交通費の問題なの?って。インヴィクタで戦っていると、UFCに引き上げられやすいのでしょうけど、私はこの年齢になったし。魅津希ちゃんが在籍していて。その魅津希ちゃんが、UFCにまだいけていない。そいうことですよね、インヴィクタって」

──キャリア的にいえばONEという選択肢もあるかと思うのですが。

「シィォン・ヂィンナンがいて、あとアンジェラ・リーが階級を上げる。それぐらいですよね。ヂィンナンは強いです。ただ、それほど層が厚くない」

──普段の体重に近い状況で戦う。そのONEの大前提があると、藤野選手はフライ級にならないですか。

「水抜きなしで56キロはいつも作っている体重です。だから、体重としては問題ないです」

──フライではなく、ONEのストローが適正なわけですね。藤野選手の水抜きを考えると、水抜きなしのONEストロー級の方が体調も良くなるのではないかと。

「そこは考えています。最後の4キロは水抜きで落としていますし、水抜きがなければ北米規定ではフライ級ですからね。だから、ONEではどれだけ強い相手と戦えるのか」

──注目されると選手は集まってくると思います。

「日本から女子はV(.V Mei)がいて、あとは格闘代理戦争から取るってことなので、需要があるのか……ですね」

──格闘代理戦争という固有名詞が出てきたのですが、藤野選手はどのような印象を持っているのでしょうか。

「選手ですか? まぁアマチュアですよね。番組としては、あれだけ注目されて女子MMAを目指す子が増えてくれると良いですよね。ただし、あそこで勝ってONEに行った子がどれだけできるのか。ONEの東南アジアの女子選手も、あの規模の大会が継続して行われているので、力は急激につけていますよね。

そういう場で、アマチュアから一足飛びであの場でどれだけ戦えるのかは、やはり慎重にならないといけないですね」

──どのような育てられ方をするのか。そこは新しい可能性でもあるかと思います。

「ONEに行けなかった子は、あの華やかな場を経験し、そうでない女子MMAを続けることができるのかも気になります。MMAを続けてほしいですし、そのためには選手自身よりも周囲が冷静でいることが大切かなって思います」

──藤野選手自身はチャンスがあればONEで戦いたい気持ちは?

「正直、微妙です。私はやり切りたいんです。でも、判定がなんだか一つの大会でもバラツキが見られるから。負けても勝っても……判定はどうなんだろうという部分で、やり切れないような状況にはなりたくなくて。

そういうことばかり考えていると、私が望むイベントはどこになるのかって……。本当にそういう状況です。見えないんです……だから、声をかけてくれるところがあれば有り難いし、戦いたいです。

もう実際問題として、区切りをつける時が近づいています。それが2019年ということも十分にあり得るので」

──……。

「今、38歳です。考えないといけないです。ケガもありますし、どこまで体がもつのか。出産ということも考えないわけではないですし。体が大丈夫で、ずっと続けることができるなら、MMAを続けたいです。格闘技が好きだから練習はいつまでも続けるとは思います。ただし、表に出てできるのって……もう限りはあります。だから、出たいと思える試合で戦いたい。

そうするためにヒザも目も直したので。辞めないといけない時が来ることは分かっています。勝って辞めたい……出し切って辞めたいです。ヴィヴィとの試合のように中途半端な試合では終われないですから」

──強い選手と戦うと、自分がやり切れたと思うことも困難かもしれないです。

「だからといって弱い相手にスカ勝ちして、辞めるなんて何も楽しくないです。全力を出し切って辞めたい。ヴィヴィ戦でも、体が限界にきて終わりになっても良いという覚悟で挑みました。

でも、全く満足できる試合じゃなかった。息すら切れない試合では辞められないです。頑張れば夢が叶うなんて甘い世界じゃないことは、もう分かり切っています。でも、叶わないのを理由に諦めるのは絶対に嫌で」

──夢があるがの人生でなく、夢の実現に向かって努力した。それが人生ではないでしょうか。藤野選手を含め、やりたいことを貫いているMMAファイターの皆さんは豊かな人生を送っていると思えます。

「ずっと格闘技を続けている人間は、クセの強い人が多いです──実際に(笑)。自分も含めて、どこか壊れているからもしれないですが、本当に格闘技が好きなんです。そんな人、あんまり世の中にいないですよね」

【女子フライ級及びストロー級王座を認定している主なプロモーション】

Bellator MMA(米国)=フライ級
Cage Warriors(英国)=フライ級
Invicta FC(米国)=フライ級&ストロー級
Jewels(日本)=ストロー級
ジャングルファイト(ブラジル)=フライ級&ストロー級
KSW(ポーランド)=フライ級&ストロー級(事実上フライ級のみ)
KOTC(米国)=フライ級&ストロー級
LFA(米国)=フライ級
ONE(シンガポール)=フライ級&ストロー級
パンクラス(日本)=ストロー級
UFC(米国)=フライ級&ストロー級

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