【ONE79】青木真也と対戦するエブ・ティン─02─「誰よりもタフな相手と戦ってきたという自負はある」
【写真】エブ・ティンはきっと野獣的な闘争本能を持っている (C)MMAPLAET
6日(土・現地時間)にタイはバンコクのインパクト・アリーナで開催されるONE79「Kingdom of Heroes」で、青木真也と対戦するエブ・ティン・インタビュー後編。
アジアの血とニュージーランドのオリジン、マオリのファイティングスピリットが融合した度胸の据わったオールラウンダーのティン。そのタフな戦歴より得た生存能力の高さが、青木戦に向けて彼の自信に通じているように感じられた。
この選手、実は相当に過小評価されていたかも……。
<エブ・ティン・インタビューPart.01はコチラから>
──ベースとなる格闘技がなく、ハカに通じるファイティング・スピリットをストリートで養った。なのでアグレッシブなウェルラウンダーというスタイルのMMAファイターになったのですね。
「確かにその通りだと思う。実は格闘技はやっていなかったけど、サッカーではナショナルレベルで活躍できていたんだ。でも、団体競技ではなく個人競技に転じようと思った。そっちの方が自分に合っていると感じていたから。
そして、ベースがなかったからこそスタンドの打撃が好きな……自分の思うがままファイターになれた(笑)。それにニュージーランドはキックが盛んで、アマチュアも含めると2週間に一度はキックの大会が開かれているんだ。だから、みっちりとコーチに鍛え上げてもらったしね」
──MMAのローカル大会は、どれぐらいの頻度で行われているのですか。ダン・フッカー、イスラエル・アデサニャらキウイ・ファイターはUFCで目覚ましい活躍をしていますが。
「MMAはオークランドで年に3度ほど、南島で同じく3度ほど。プロのキックボクシング・イベントが1カ月に1度あるのとは違うね。ただし、豪州のMMA界と近いからHEXやAFC、それにBraceなどの質の高い大会に僕らの国の選手は出場してきた。豪州人ファイターとキウイ・ファイターは強烈なライバル関係にあるんだ(笑)。ただ、豪州以外で戦うというのは簡単でない状況だよ」
──オセアニアはUFC圏といえますが、エブはONEでアジア諸国で戦う道を選択しました。
「僕の目的は強くなること。だから一切無駄な時間を過ごしたくなかったんだ」
──その言葉通り、フェザー級時代にはエドゥアルド・ケリー、マラット・ガフロフ、ホノリオ・ナバリオ、エリック・ケリー、ロブ・リシタ、ライト級ではカマル・シャロルス、エドゥアルド・フォラヤン、アリエル・セクストン、安藤晃司選手ら錚々たる相手と戦ってきました。そして敗北はガフロフとフォラヤンという世界王者になった2人だけです。
「そういってもらえて嬉しいよ。僕にはただの1人もイージーな相手はいなかったし、常にハードな戦いを続けてきたから。自分と同じレベルか、より強い相手と試合をしてきた。元チャンピオンを病院送りにしたこともあったし、ギリギリのファイトを積み重ねてきたんだ。
負けたこともあったけど勝負を諦めたことは一度としてない。そして、誰よりもタフな相手と戦ってきたという自負はある。アンダードッグで戦うこともあったし、決してファンの声援を受けて戦う立場ではなかった。でも、そんな逆境で戦うことにワクワクしてしまうんだよ」
──前回の試合で安藤選手に勝ったことは、レジェンドFC時代を振りかえると感慨深い勝利だったのではないですか。
「僕にとってレジェンドFCのチャンピンだったコージ・アンドーは目標の一人だった。何よりアンドーもONEで常に厳しい試合ばかりを戦ってきたからね。以前、減量のために同じサウナを使っていて……彼は9キロも体重を落とさないといけなくて、本当に大変そうだった。僕は5、6キロだったけど死にそうになっていて。もっと苦しいはずのアンドーはずっと我慢強くサウナにいたんだ。そんな彼と戦うことになって、自分のやるべきことをやって勝てた。僕にとって本当に大切に思っていた選手に勝てたことは何よりも嬉しかったよ。今でも僕は彼のことを最大限に尊敬している」
──レジェンド時代を取材していた私にとっては、涙モノの良い話です。その安藤選手に勝利し、青木選手と戦う機会を得ました。
「僕はタイトルが欲しい。でもマーチン・ヌグエンは色々な階級で戦っていて、ライト級王座を防衛してこなかった。その彼がベルトを返上した今、シンヤとの試合は自分のキャリアのなかで一番大きな戦いになる。彼のようなビッグネームとは戦ったことがないけど、クリアすればタイトル戦が最大限に近づく大切な試合だ」
──チャトリCEOは返上前に、この試合はタイトルコンテンダー決定戦になると発言していました。
「コージに勝った時から、マーチンは防衛戦を行わないなら返上すべきだと思っていた。一般のファンがシンヤのことをどう思っているかは関係ない。でも、コアファンならシンヤがどれだけ強い、リアルなファイターが分かっているはずだ。だからこそ、僕の力を世界に見せることができると信じている」
──実はエブの特徴を聞かれると、大きな武器も大きな穴もない。何が特徴か分からないという風に返答してきたのですが……。
「イエス。僕は本当の意味でウェルランダ―でありたいと思っている。そしで、どのような状況にも対応できるファイターでいたいんだ。過去も未来も考えていない。ただ、その瞬間に必要となる、最適な戦いをする。それが僕のストロングポイントだよ」
──そんなエブが青木選手と戦ううえで、自身のアドバンテージはどこにあると思っていますか。
「絶対的に打撃だよ。そして、レスリングが進化していることを証明したい。典型的なストライカー✖グラップラーの戦いなので、基本的には寝技に持ち込まれたくはない。それでもグラウンドの展開になったとしても、ちょっと驚かせることができるだけのモノは揃えてきたよ(笑)」
■ ONE79 対戦カード
<WBC世界スーパーフライ級選手権試合/3分12R>
[王者]シーサケット・ソー・ルンヴィサイ(タイ)
[挑戦者]イラン・ディアス(メキシコ)
<キックボクシング世界女子アトム級選手権 (※52.2キロ)/5分3R>
[王者]カイティン・チュアン(台湾)
[挑戦者]スタンプ・フェアテックス(タイ)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
エブ・ティン(ニュージーランド)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ノンオー・ガイヤーンハーダオ(タイ)
メディー・ザトゥー(フランス)
<キックボクシング・ライト級/3分3R>
アンディ・サワー(オランダ)
アンソニー・ンジョクアニ(米国)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
レアンドロ・イッサ(ブラジル)
ムイン・ガフロフ(タジキスタン)
<キックボクシング・ヘビー級/3分3R>
アラン・ンガラニ(香港)
アンソレー・ムニエ(豪州)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ペットモラコット・ウォー・サンプラバイ(タイ)
アラヴェルディ・ラマザノフ(ロシア)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
鈴木隼人(日本)
ロビン・カタラン(フィリピン)
<キック・フライ級/3分3R>
シントンノーイ・ポー・テラクン(タイ)
工藤政英(日本)
<女子ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
リカ・イシゲ(タイ)
ボズヒーナ・アントニヤ(ミャンマー)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ペットダム・カイヤンハダオ(タイ)
ケニー・ズィー(豪州)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
フー・チャンシン(中国)
リン・サロス(カンボジア)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ドディ・マルディアン(インドネシア)
ラモン・ゴンザレス(フィリピン)