【Arzalet FGC03】同胞イタロに勝利──マルキーニョス─01─「イタロと戦うのは、心情的には辛かった」
【写真】1年5カ月ぶりのMMAを韓国で戦い見事な勝利を手にしたマルキーニョ(C)MMAPLANET
7日、韓国ソウルのクラブ・オクタゴンで開催されたArzalet03でイタロ・ゴンサルベスに勝利したマルキーニョス・ソウザ。
アクロバティックですらあった腕十字で見事な一本勝ちを収めたマルキーニョスは、自信が歩んできた人生を振り返りイタロとの勝負が精神的に厳しかったことを明かした。
──素晴らしい腕十字による一本勝ちでした。
「ありがとう。4月にQuintetに出たときにノーギで腕十字の練習を凄くしていたんだ。ノーギだと僕が一番得意なサブミッションはギロチンなんだけど、腕に少し問題があってギロチンの練習ができなかったから、腕十字の練習が多くなった。そしてクインテットで2試合、腕十字で勝てた(笑)。そのまま引き続き、今回の試合に向けて腕十字の練習をしていたんだ。その結果、MMAでも腕十字を使う自信を得ることができた」
──パスからニーインベリーを許した対戦相手のイタロがケージを蹴って、逃げようとしたところで、彼が腹ばいになる動きに合わせて十字が極まりました。ああいう形の腕十字は見たことがなかったです。
「そうなんだ(笑)。サトシもクレベルもそうだけど、あまり一つのポジションに長い間収まるのは好きじゃないんだ。ガードを超えてニーインベリーになったとき、イタロが僕を腕で押してきた。その瞬間、腕十字を極めるチャンスが舞い込んできたんだ。
あまり残り時間もなかったし、瞬時にして極めようと思った。あのまま殴られることもない時間帯だし、本来は対戦相手にケガをさせたくないけど、タップを奪わないと2Rはタフになるだろうから、思い切り仕掛けたんだ」
──勝負ですから、当然だと思います。
「MMAはそれほどポジションを大切にして練習をしている選手は少ない。ただ、相手は柔術の黒帯だった。それでも寝技に持ち込んだら、勝てると100パーセント自信があったよ。イタロの動きからも、より自信を持つことができた」
──韓国人の記者の一人が、マルキーニョスの腕十字はマンガのような動きだったと言っていました。
「アハハハハ。さっきも言ったように時間がなかった中での仕掛けだったからね。そして、僕にとってゴールはフィニッシュ。だから、あんな風に極まったんだと思う。
残り10秒、そのままポジションをキープするか、フィニッシュを狙うのか。その違いはあるはずだよ」
──もともとキルギス人のヌルスルタン・イリスバイ・ウウルと戦う予定でしたが、試合の5日前に同じブラジル人で柔術の黒帯を戦うことになり動揺しなかったでしょうか。
「実はその前に韓国人選手と戦う予定だったんだ。これだけ対戦相手が代わるのはハードだったよ、正直にいえば。最初の相手はストライカーで、2番目の相手も打撃が強く少し柔術を理解しているようだった。そして、試合直前になって黒帯柔術家と戦うことになった。
個人的にも挑戦だったよ。でも、6月には教え子のクレベルだって、KSWで対戦相手が代わって、大きく柔術が分かっている相手になった。でも、クレベルは恐れることなく戦い勝利を収めた。僕だったそうだ。対戦相手が代わったからといって、戦わないわけにはいかない。教え子のクレベルと同じ状況だったんだから。
チャンピオンは相手を選ぶことはできない。そういう姿勢を教え子の皆に背中で見せなければならない。それが僕の役割でもあるからね。ただ、今回は相手のことを思うとなかなか厳しい戦いだったんだ」
──それはどういうことですか。
「イタロは香港に4カ月前に移り住んだ。英語も話せないし、広東語も北京語も話せない。でも、新しい土地に移り成功を収めようと努力をしている。それって、僕が日本にやってきた時と同じ状況だったから、そういう彼の夢を壊すことになるかもしれない戦いをすることは辛かった」
──イタロにシンパシーを感じていたのですね。
「僕が10年前に日本に移り住んだ時、日本語も分からなかったし、英語も分からなかった。人生を変えることの大変さを僕は知っている。彼にもファミリーがいて、より良い生活を求めて香港に移り住んだんだ。それでもオクタゴンの入り口が閉められたら、全てを忘れるよ。僕が勝たないといけない。でも、それまではイタロと戦うのは、心情的には辛かったんだ」
──私も柔術やグラップリングの試合ですら、日本以外で日本人同士の対戦を見るのは辛いです。
「そうだよね。僕はたくさんの人々に柔術の指導だってしている。だから、イタロの状況を思えば本当に楽ではかったんだ、人として」
──マルキーニョスの心情は本当に理解できます。人として……という部分は特に。
「ファイターとして甘いことは分かっている。勝ったことは嬉しかったよ。でも、きっと最後の腕十字でイタロはケガをした。だから、僕は手放しで勝利を喜ぶことはできなかったんだ。仕事だから勝たないといけない。でも、傷つけたいなんて全く思っていないから」
<この項、続く>