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【Special】月刊、青木真也のこの一番:6月─その弐─マーチン・ヘルド×カラン・ポッター「LDからの」

Held vs Potter【写真】青木はヘルドがサドルに入る前、レッグドラッグからの動きを絶賛した (C)ACB

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ6月の一番、第二弾は6月16日に行われたACB88からマーチン・ヘルド×カラン・ポッターの一戦を語らおう。


──6月の青木真也が選ぶ、この一番。では2試合目は?

「マーチン・ヘルド×カラン・ポッターの試合ですね」

──ACB豪州大会の。

「ハイ。ただオーストラリアのACBが、ACBだったかというと……ちょっと疑問符はつきますよね」

──ハイ。その通りだと思います。

「そうですよね(笑)。イギリス大会でもどうなのかっていう部分があっても、それでもメンバーがまだ良いです。そんななかでオーストラリアではPXCバンタム級王者からTOP FCでタイトルは取れなかったトレヴィン・ジョーンズとか、出ているんですよ。しかもブラジル人のホドリゴ・プライアに負けている。なんでオーストラリアで、そんな試合が組まれるんだって(笑)。

12勝3敗のブラジル人にスプリットで負ける。誰のために組んでいるだという試合です。そうやって考えると、ACBなんですけどね。なおかつ、前日までカードの変更が一切発表されない(笑)」

──ACBはプレビューをしても、カードがなくなるかもしれないので、非常に怖いです。

「そう、だからヘルドの試合はなくなっていないよねぇ?──みたいな(笑)。ヘルドの相手はまぁ、そこまでの相手ではなかった」

──それでもHEATに来日しているジャック・ベッカーに勝つなどしていて、HEXのライト級チャンピオンですよね。

「クォリティはある国内トップがワールドクラスに挑むチャレンジ戦であり、ヘルドからすればウェルカム・マッチだったかもしれないし。そういうどっちに転んでも構わない良いマッチアップでしたね。

ヘルドが凄いと思ったのが、普通にテイクダウンしてレッグドラックの態勢になり、ポッターの左足を左腿の上に乗せた。ここで敢えて、左手で逆側の右足を担いだところなんです。そのまま後方に倒れてサドルポジションに入ったけど、右足を担いだ時に同時に左足の抑えがきいていたから、すぐに内ヒールを極めることができた。あれは見事です」

──その見事さまで理解していなかったですが、MMAでレッグドラッグになっているのに躊躇なく足関節に行けるというのが、やはり驚きました。

「普通はスクランブルに誘い込むのが、あそこまで自信がある。つまり足関節はリスクがあるっていう領域にないですよね、もう。僕なんかも反応としてカードを切ってしまった時は、足関節とか三角絞めとかあるんですが……基本はバックテイクがある。そこで足関節を狙うというのは、博打の要素があります」

──実は4月に北岡選手がタラス・サパにトップを取っていた状態で、残り1分を切ったといえどもヒールを仕掛けた時はドキっとしてしまいました。

「要は博打を打ったんですよ。バックテイクとギロチンの狭間で足を戻されて。ただし、ヘルドは博打じゃない」

──スクランブルMMAの心理を利用している感もあります。

「だから、一番にはなれなくても凄く楽しいMMAを見せてくれますよ、彼は。普通はレッグドラックからサドルでも、腿の上に乗せた方の足を抱えるのに、ヘルドはまず反対の足を担いで腰を切れなくしたのは、やっぱりレベルが違います。実はポーランドは柔術大国だっていいますし、奧が深いですね」

──ポーランドは柔術だけでなく、伝統派空手もフルコンタクト空手、キックも強いですしね。

「サンボも柔道も強い。格闘技大国じゃないですか、そうなると。そこにKSWもあるし。何でも強いですね。そういうなかで、ヘルドも今のMMAの流れと違う試合を見せている」

──それでいて現代MMAでジョー・ローゾンにおかしな判定で負けていましたが、しっかりとテイクダウン&スクランブルで内容は勝っていましたし。ヘルド、奧が深いです。

Risov vs Sanchez「ディエゴ・サンチェスは初戦でヘルドの独特の動きを完封したんですよね。それでいうと、ディエゴが6月の終わり(※30日)にACB JJのノーギマッチでACBフェザー級のベルトを返上した(ユーサップ)ラソフと戦っているんですよ。ディエゴ、組み技が強いです。

ADCCで2005年に活躍していますし。やっぱりディエゴ・サンチェスのグラップリングは良いですね。ラソフも強くて、テイクダウンでポイントを取って、ディエゴのバックをワンフックでしのいで勝ちましたしね。

Bagovラソフはライト級に上げて、UFCから来るレザ・マハディと戦う氏、ACB JJにはライト級からアリ・バゴフが出ていましたよ。81キロとかの体重で戦って、ジョニー・ヘンドリックスみたいな体つきで(笑)。パーム・トゥ・パームで名もなき柔術家を取っていたのですが、あのパワーに対してヘルドがどう戦うのか。バゴフにしても、ラソフにしてもヘルドが絡んでくるとACBのライト級が凄く楽しみですよね」

<この項、続く

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