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【WJJC2018】ミドル級。トーマス・ミッツ、かく戦えり──フランス人青年が今を生きてきた証の20分間

Thomas【写真】黒帯で世界初挑戦のミッツ。あの相手に競り勝って2回戦進出は立派(C) SATOSHI NARITA

5月31日(木・現地時間)から3日(日・現地時間)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われた。ブラジリアン柔術の頂点を極める同大会レビュー、今回はカルペディエムのフランス人柔術家、トーマス・ミッツが初めて黒帯で経験したムンジアル・ミドル級の2試合をお送りしたい。


01<ミドル級2回戦/10分1R>
トーマス・ミッツ(フランス)
Def. by P4-4 A3-2
フィリップ・シウバ(ブラジル)

青帯としてカルペディエムに入門、やがてインストラクターとなり黒帯を取得したフランス人ミッツの初戦の相手は、フィリッピ・シウバ。昨年のノーギワールズでリエラ・ジュニアを準決勝で下し準優勝に輝いた――極めの強さに定評のある25歳のホープだ。

試合開始後まずシウバが座る。ミッツはクローズドに引き込みにかかるが、右ヒザを入れたシウバは横に倒れこむように崩して上になり、2点を先取した。

下になったミッツはシウバの右足にデラヒーバで絡む。さらにシウバのラペルを引き出し、ヒザ下から通して掴み、外回りのベリンボロで崩してバックを狙っていく。なんとか回って逃れようとするシウバに対し、瞬時に体を反転させたミッツが上を取る。

02さらに、それを嫌がりスクランブルを狙ったシウバのバックに尽き掛けたミッツだが、シウバは場外へ。これで2点とアドバンテージ1を得たミッツが逆転した。

試合がスタンドで再開すると、シウバが引き込んでクローズドガードに。しばらくそのまま展開がなく、残り5分半の時点で両者にペナルティが与えられた。立ち上がって前傾でプレッシャーをかけるミッツに対し、ガードを開いたシウバは左足を内側から抱えてラペルを掴むと、横回転してその足を伸ばしてのヒザ十字狙いへ。ミッツは凌いで再び上のポジションを取るが、この攻防でシウバがアドバンテージを得て、同点に追いついた。

ガードの中にいるミッツは、立ってガードを押し下げる。シウバは体を翻してスタースイープの要領でミッツを崩してタックルにつなげるが、ミッツは腰を引いて耐える。するとシウバは引き込み。その瞬間にミッツは横にパス。シウバはインヴァーテッドの形で防ぐものの、ここでミッツにアドバンテージが加算され、再びリードを得た。

クローズドに戻したシウバは、再び横回転してミッツの左足を取りに。しかし、バランスを保ったミッツは横についてのパスの逆襲へ。サイドを取られかけたシウバは足を入れて戻すが、ここでミッツにもう一つアドバンテージが入った。残り3分弱のところでポイントは同点ながら、アドバンテージ3-1でミッツがリードしている。

何としてもポイントが必要なシウバは、オープンガードを取り、またしても回転してミッツの左足を抱える。さらにラペルを引き出して掴んだシウバは、そのまま前転しながらトルネードスイープのようにミッツを舞わせて2点獲得。ポイント4-2で逆転してみせた。

残り1分。上のシウバの右足と下のミッツの左足が編み込むように絡み合い、お互いその足に絡めたラペルを掴み合った状態だ。ここからミッツが勢いをつけて崩しにかかるが、シウバも右足をポストして耐える。さらにミッツはラペルグリップを用いてシウバを前に崩し、逆の左足を抱えて倒す。

03ならばとシウバも倒立するような状態からミッツの右足を抱え、逆に上を狙う。バランスを崩したミッツだが、すぐに立ち上がってシウバのバックに。逃げようとしたシウバは場外に出る。この攻防ではどちらにも点が与えられなかった。

04残り36秒でのスタンド再開。時間のないミッツは飛び込んでテイクダウンを取ろうとするが、シウバは下がる。そこでミッツは素早く引き込みへ。シウバも遅れて座ったところで、ミッツは前に出て立ち上がりスイープの形を作って2点を獲得する。

05土壇場で再逆転に成功したミッツに対し、シウバもすぐにシッティングから左足にラペルを通して抱える形を作る。そして最後の望みを賭け、立ち上がってのテイクダウン狙いに持ち込む。一度は崩されてヒザを着いたミッツは、ここで踏ん張って立ち上がり、その後は片足で耐え、スプロールしきったところで試合終了に。

最後にシウバに1つアドバンテージが与えられたが、差を埋めることはできなかった。土壇場の死力を尽くした攻防のなかで逆転ポイントを奪い、相手の必死の反撃を凌ぎ切っての見事な勝利。黒帯世界初挑戦で、価値ある白星を上げたミッツは、次戦で優勝候補の一人マルコス・ティノコに挑む権利を得た。

06<ミドル級2回戦/10分1R>
マルコス・ティノコ(ブラジル)
Def. by 6-0
トーマス・ミッツ(フランス)

07引き込んだミッツ、ティノコはすぐにその両足を捌いてパスを仕掛け、サイドを取りかける。ミッツは足を戻したものの、ティノコがアドバンテージを得た。一度スタンドに戻ったのち、再び引き込んだミッツがティノコの左足にハーフガードで絡む。しかし、ティノコはその足を押し下げつつ立ち、さらにミッツの左足に上から強烈なプレッシャーをかけて潰しパスに成功――3点を獲得した。

08そのまま右で自らのラペルを引き出してミッツの頭に枕で通して掴んで固定したティノコは、右足でステップオーバーしてのマウント狙い。が、ミッツもその右足を両足で挟んでハーフに戻す。低く体重を掛けるティノコは、上側の左足を潰してのパスガードの圧力を強めるものの、ミッツは両腕を使って距離を取って防ぐ。

09リードしているティノコは、慌てずゆっくり低くプレッシャーをかける。ミッツは潜り込んで後転するようにスイープを狙うが、ティノコは上四方の側に回り込みながらインヴァーテッドの体勢で潰す。そのままゆっくりミッツの両足の間に体重をかけていったティノコが、上四方の体勢でパスに成功し、ポイントを6-0とした。

残り2分。抑え込むティノコはミッツの首を右ワキで捕らえてのチョークでじっくり圧迫する。防戦を余儀なくされたミッツは、下で動きながらこらえている。終了間際、ミッツは隙間を作ってスクランブルからハーフに戻すことに成功するが、低く抑えてくるティノコのプレッシャーを跳ね返すことはできず時間切れ。ティノコがそのトップゲームの強さを見せつけ、6-0で完勝した。

世界初挑戦にして若手のホープに競り勝ち、世界トップクラスの実力を肌で知ったミッツ。
日本の道場を拠点にして、キッズたちの指導に熱を持ちながら世界柔術黒帯ミドル級でメダル獲得──そんな途方も無い夢のようなことも、彼なら成し遂げてしまうかもしれないとさえ思わせてくれるような、素晴らしい戦いぶり。英国、韓国、中国、そして東京とミッツが今を生きてきた証が見られた。

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