【WJJC2018】展望─06─重量級4回級。ロ×メレガリ、キーナン×プレギーサ、ストップ・ザ・ブシェシャは?
【写真】ブラジリアン柔術の未来。オールドスクールからモダン、サブミッションまで穴のないニコラス・メレガリ (C) MMAPLANET
既に5月31日(木・現地時間)から開幕し、日本時間の日曜朝には黒帯も戦いの幕をあけるブラジリアン柔術世界選手権。プレビューのラストとなる第6回は、重量4階級の見どころをまとめて紹介したい。
【ミディアムヘビー級】
昨年優勝のアトス総帥アンドレ・ガルバォン、準優勝のパトリック・ガウジオ、3位のフィリッピ・ペナ&ホムロ・バハウが今年は揃ってエントリーせず。優勝のチャンスがぐんと大きくなったといえる今年度の有力選手としては、今年のヨーロピアン無差別級とパン大会を制したハルクことルーカス・バルボーザ(アトス)、ミヤオ兄弟の兄弟子にして道場最強の異名を持つムリーロ・サンタナ(ユニティ)、2010年の世界王者タルシス・ハンフェリーズ、15年の世界3位のヘナート・カルドッソ、今年のパン3位のマテウス・ディニスのアリアンシ勢3人、さらにKings of Matsでガルバォンらを下して優勝したシャーレス・ネグロモンテ(ホジャー・グレイシー)らがいる。
【ヘビー級】
優勝候補筆頭は、プレギーサことフィリッピ・ペナ(グレイシー・バッハ)。昨年のADCC無差別級決勝にて、サブミッション・オンリーシーンで今をときめくゴードン・ライアンからバックチョークで一本勝ち。ノーギ・グラップリングにて世界の頂点に立った。
道着を用いたスイープ力も抜群で、ギあり柔術の方がさらに強いのではとさえ思われる超実力者のペナだが、なんとも巡り合わせが悪く世界柔術はまだ未制覇だ(14年は優勝したものの薬物使用発覚で剥奪、15年は出場資格なし、16年はそれまで負けたことのないジャクソン・ソウザに準々決勝で不覚、17年は準決勝でアンドレ・ガルバォン相手に終盤明らかに優位なポジションを奪ったものの、不可解とも思えるジャッジングでポイントを認められず惜敗)。
本年度の組み合わせを見ると、打倒ペナの有力候補が別ブロックに集中している感が強く、ペナの決勝進出の可能性は極めて高そうだ。無冠の帝王は今年、とうとう柔術世界一の座に大手をかける。
対抗馬として挙げられるのは、こちらも世界は未制覇のキーナン・コーネリアスだ(アトス)。驚くべき発想力の持ち主は、14年の世界大会にて(相手の胴着の裾を複雑に絡めて掴む)ワームガードを駆使し、レアンドロ・ロの動きを封じて勝利。色帯時代と変わらず、黒帯でも強さを見せ、ポイントゲームに革命を引き起こしてみせた。その後このガードの対処法が研究されると精彩を欠くことも多かったコーネリアスだが、昨年から再び上り調子に。
ADCC世界大会で準優勝を果たすと、今年のヨーロピアンではラペルラバーガードとでも呼びたくなる形を駆使し、ヘビー級&無差別級全試合一本勝ちで完全優勝。続くパン大会でも、ラペルの絡み方を変えたスクイッド(イカ)ガード等を用いてスーパーヘビー級を制している。
キャリアを積んでなおその創造力が冴え渡るコーネリアス。今回、おそらく準々決勝で顔を合わせるティム・スプリッグス(ロイド・アーヴィン)のレスリングベースのトップゲームを制することができたら、準決勝では昨年ミディアムヘビー級で準優勝した優勝者のパトリック・ガウジオ(GFチーム)と、一昨年ヘビー級世界2位のジャクソン・ソウザ(チェックマット)の勝者と当たりそうだ。この熾烈なブロックを勝ち抜いた者を最後に待ち受けるのは、超実力者ペナである可能性が高い。誰が勝っても、念願の世界初戴冠となる。
【スーパーヘビー級】
昨年初戴冠の怪物エルベース・サントスが欠場している今年のこの階級、もっとも期待されているのは、昨年の世界大会における最大の衝撃──ニコラス・メレガリ(アリアンシ)とレアンドロ・ロ(Nsブラザーフッド)の再戦の実現だろう。
昨年のヘビー級決勝戦。大会5連覇&4階級制覇を狙うロの前に立ちはだかったのは、全試合一本勝ちで勝ち上がってきた新鋭メレガリだった。大会中に23歳となった若者は、決勝の舞台でも長い足を存分に利用したガードワークでロと堂々渡り合う。やがてメレガリはデラヒーバからXガード、そしてラペルを引き出して絡める複雑な行程からスイープに成功する。その後のロの上下からの猛攻をことごとく耐えてポイントを許さず、柔術史に残る大死闘を制して優勝を遂げたのだった。
こうして彗星の如く登場したニュースター、メレガリは今年に入っても強さを発揮。ブラジレイロのスーパーヘビー級は全試合一本勝ちを納めて圧巻の優勝を果たしている(無差別級でも決勝こそ最重量級のヴィクトー・ホノリオに敗れたが、準決勝までは全て一本勝ち)。対するロも、3月のパン大会でヘビー級&無差別級を完全制覇。内容的にも、昨年の重厚な戦い方とは違い、圧倒的な運動量を誇ったそれ以前のロを彷彿とさせるものを見せつけている。
昨年、メレガリの長い足を駆使した圧巻のオープンガードに屈したロだが、その対応力の高さは、(14年に一度敗れた)キーナン・コーネリアスのワームガードの攻略法をたちどころに編み出したことでも証明済みだ。当代きってのパスガードの名手ロなら、恐ろしく懐の深いメレガリのガードをも打ち破れるかもしれない。
あるいは底知れぬ潜在能力を秘めたメレガリなら、怪物ロからすら一本を奪ってしまう可能性もあるだろう。進化&増量を続けるロの(なんとヘビー級を飛ばしての)4階級制覇か、新星メレガリの2連覇&2階級制覇か。この組み合わせが実現するのは、当然決勝の舞台となる。
この階級には、この二人以外にもモハメッド・アリー(ロイド・アーヴィン)、ジェームズ・プオポロ(ヒベイロ)、ジャレド・ドップ(アリアンシ・インターナショナル)、そして今年のパン大会無差別級決勝において強固なベースと圧力でロを脅かしたグテンバーグ・ペレイラ(GFチーム)らの強豪が出場、初戴冠を狙っている。
【ウルトラヘビー級】
大本命は言わずと知れた現在地上最強の柔術家、ブシェシャことマーカス・アウメイダ(チェックマット)。昨年も重量級離れしたスピードと超攻撃的な戦いぶりで最重量級&無差別級を制し、計5度目の世界完全制覇を果たしている。その後に行われたグレイシー・プロ大会ではワンマッチで歴代最強競技柔術家、ホジャー・グレイシーと頂上対決ではチョークで一本負けを喫してしまったが、その後のADCC世界大会で復活──文字通り(スタンドで動かないという意味で)不動の前王者オーランド・サンチェスを崩すことに成功、バックを奪って優勝を果たしている。
打倒ブシェシャの第一候補は、昨年の準決勝でブシェシャ相手に途中まで互角以上に渡り合ったジョアオ・ガブリエル・ホシャ(ソウルファイターズ)か。巨体にしてブシェシャに劣らぬダイナミックなテイクダウン&パス、高度なガードゲームを誇る万能型のホシャは、今年のパン大会でも順当に優勝を果たしている。ブシェシャとの再戦が実現するとしたら決勝戦。重量級の両者の豪快かつスピーディーな動きに、会場が震撼することになるだろう。
他にもこの最重量級には、かつてブシェシャの連覇を阻止して負傷欠場に追い込んだヒカルド・エヴァンゲリスタ(GFチーム)、昨年準優勝のグスタヴォ・ディアス(ヒベイロ)、今年のブラジレイロ無差別級で超新星ニコラス・メレガリを倒したヴィクトー・ホノリオ(カタールBJJ)、昨年のADCC99キロ以下級王者ユーリ・シモエス(ブラザ)、極め技師ルイス・パンザ(チェックマット)等の強豪がエントリー。ブシェシ×ホシャという顔合わせが決勝で見られるとは限らない。