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【WJJC2018】展望─04─ライト級、難攻不落のレプリに挑むJT。岩崎、表彰台へ向けランギを越えろっ!!

Lucas Lepri【写真】道着のレプリは、まさに難攻不落 (C) MMAPLANET

31日(木・現地時間)から6月3日(日・同)にかけて、米国カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われる。レビュー第4回は、本年度ヨーロピアン準優勝者の岩崎正寛が参戦する──難攻不落の絶対王者が君臨するライト級の見所をお届けしたい。


【ライト級】
Iwasaki最大の注目は、昨年の本大会で絶対王者ルーカス・レプリ相手にアドバンテージ1差の健闘を見せた岩崎正寛(カルペディエム)だ。その名を世界に知らしめたのは、今年1月のヨーロピアン大会。ヘナート・カヌート&エドウィン・ナジミという強豪を連破した岩崎は、決勝で元世界王者のマイケル・ランギにアドバンテージ1差で敗れたものの、見事準優勝に輝いた。

続いて臨んだ3月のパン大会では、初戦でミドル級世界準優勝の実績を持つヴィトー・オリヴェイラと激突。しかし得意のハーフガードを堅実なトップゲームで封じられ、パスこそ許さなかったもののアドバンテージ2差で敗北──世界に名が売れ、戦い方が研究される中で勝ち上がることの難しさを肌で味わうこととなった。

4月には、グアムのマリアナスオープンにおける黒帯賞金トーナメント(契約体重は普段より重い180パウンド)に参戦した岩崎。一回戦の相手は元世界王者にして、現UFCファイターのドゥリーニョことジルベウト・バーンズだった。息詰まるスタンドの攻防で最後まで譲らなかった岩崎は、終盤にシングルレッグで攻勢を取ってのレフェリー判定勝ち──ちなみにこの岩崎の勝利に嶋田裕太は「刺激を貰いました。僕は去年のADCCでMMAと掛け持ちのタンキーニョに負けて、岩崎さんはドゥリーニョに勝つ。この差を乗り越えたいです」と語っている──準決勝こそ階級上のイザッキ・バイエンスに一本負けしたものの、ここ数年磨いてきたレスリング力が、重い体重ですら世界トップに通用することを見せつけての3位入賞を果たした。

そんな岩歳の本大会の初戦の相手は、レアンドロ・ロの黒帯にして、世界大会初出場のヤン・ブアティム(Nsブラザーフッド)。ここを突破すると次はおそらくは国際大会常連、世界的強豪と五分に戦う力を持つヴィクトー・シルヴェイロ(GFチーム)戦だ。そこも超えると、準々決勝ではランギとのヨーロピアン決勝の雪辱戦となる可能性が高い。

1月には、ランギの代名詞スパイダーガードを最後まで崩せずに終わった岩崎。強固なベースを持つだけでは決して崩せない難攻不落のこのガードを突破する手立ては岩崎にあるのか、あるいはスパイダーを作らせる前に決定的なポイントを奪うことはできるのか。マルセロ・ガウッシア道場にて、最高の練習パートナーたちを相手に自分の技術を総点検していったという岩崎が創る、オンリーワンの戦い方を見届けたい。

Topさて、世界の名だたる強豪がひしめくこの階級だが、本命は世界4度優勝、2015年は同門マイケル・ランギで表彰台のトップを譲り、実質は4連覇中の絶対王者ルーカス・レプリ(アリアンシ)だ。立ち技で世界の並み居る強豪たちに遅れを取らず、上からは圧巻のニースライド・パスで攻め立て、下になっても鉄壁のガードを駆使し、さらに各種の極めのキレも抜群。盤石の強さを誇るまさにコンプリートファイターだ。

昨年の本大会でも岩崎にアドバンテージ差で勝利した試合を含め、全試合相手に攻撃らしい攻撃を許さず完勝(決勝戦ではホベルト・サトシが途中、負傷棄権)。現在33歳のレプリ、相手を力でねじ伏せるのではなく、究めた技術で圧倒するスタイルはますます円熟味を増していることだろう。その戦いは、全柔術愛好家必見だ。

JT打倒レプリの一番手として挙げられるのは、JT・トレス(アトス)か。対戦した誰もが舌を巻く強靭な肉体と必殺のバックテイクを武器に、一昨年の世界大会にて唯一レプリと互角に渡り合ったオールラウンダーだ。昨年の世界大会は負傷により欠場したトレスだが、9月のADCC世界大会で復帰。ここを順当に勝ち上がり、準決勝ではサブミッション・オンリーシーンを席巻するゲイリー・トノンをテイクダウンとトップゲームのプレッシャーで防戦一方に追い込んで完勝した。

決勝で実現したレプリとの頂上対決では、延々と続いたスタンド戦の末にテイクダウン狙いからバックテイクに成功。ノーギ・グラップリングの世界の頂点に立ったのだった。トレスは、今年のパンナムでも圧倒的な強さを見せて決勝進出。同門の新鋭マイケル・リエラ・ジュニアとクローズアウトを果たしており波に乗っている。

今大会、レプリと再戦があるとすれば、それはファイナルになる。トレスが制すれば、ギあり柔術とノーギ・グラップリングの世界2大大会連続制覇という、グラップラーにとっての究極の夢の達成となる。

Langhiこの二強&岩崎の他にも、この階級にはレプリの長年の盟友にして4度世界を獲っているマイケル・ランギ(アリアンシ)、05、06、08年の世界王者セルシーニョことセルソ・ヴィニシウス(Xコーチ・チーム)、3月のパン大会にて岩崎を封じた15年ミドル級世界準優勝者ヴィトー・オリヴェイラ(GFチーム)、パン大会でそのオリヴェイラに競り勝ってトレスと優勝を分け合った新鋭マイケル・リエラ・ジュニア(アトス)、一昨年の茶帯世界王者にして、今年の「King of Mats」大会でホベルト・サトシを倒しているヘナート・カヌート(チェックマット)、一昨年世界準優勝の決め技師エドゥウン・ナジミ(グレイシー・バッハ)ら超強豪が勢揃いしている。

さらにここに新しく加わるのが、今年のワールドプロにおいてナジミを倒して優勝したノルウェー人、エスペン・マティスン(KMRBJJキムラヨーロッパ)だ。今年のヨーロピアン大会無差別級にて、スーパーヘビー級の怪物エルベース・サントスから一本勝ちして世界を震撼させたトミー・ランガカーと同門の23歳は、初戦でいきなりリエラ・ジュニアと注目の対決を迎える。ノルウェーといえばかつてADCCでユノラフ・エイネモ、MMAでヨアキム・ハンセンが突然変異のように世界の舞台で、いきなり大活躍を見せた過去がある。ヴァイキングの末裔マティスンが、2018年のムンジで旋風を巻き起こすか、要注目だ。

昨年準優勝のホベルト・サトシ・ソウザが欠場してなお、とてつもなく層の厚いライト級。1日目から最高峰同士の戦いが続々と繰り広げられることになる。

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