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【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その弐─クレイグ・ジョーンズ×ジェイク・シールズ

Jones vs Shields【写真】エディ・カミングス&ゲイリー・トノンから、クレイグ・ジョーンズへ(C)JOSHUA HALVATZIS

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2月の一戦=その壱は2月17日、Polaris06からクレイグ・ジョーンズ×ジェイク・シールズ戦を語らおう。


■「QUINTETで来るとき、セミナーをして欲しい」

──2月の青木真也が選ぶ、この一番。続いて2試合目は?

「ジェイク・シールズとクレイグ・ジョーンズですね。大会前から非常に注目していた試合でした。ADCCやEBIで活躍していて、クレイグ・ジョーンズは本当に勢いがあります。

それがジェイクとグラップリングで戦った時に……。今、流行のサドルロックの攻防とジェイク・シールズの堅実なワキを差してのパスガードを考えた時に、どうしてもジェイクが優位だと思っていたのですが、綺麗に潜って足関節を取った。

02それもこれまでは自分から見て、遠くの足にサドルロックを掛けていたのが、今回は回転する様に手前側の足に掛けている」

──最初に引き込んでシールズの右足にシンガードから後方回転でスイープし、極めたのもその右足でした。

「発想としては誰もが考えることで。これまで通りの遠くの足に掛けるなら、シンガードをフックガードに変えないといけなかった。今回の足だと、フックガードにする必要がない。誰もが分かることだけど、実行する人間がいなかった」

──ジェイク・シールズのシンガードから、サドルをロックされるまでの受け方はどのように感じましたか。

01「シンガードの時、足を畳んでいましたよね」

──ハイ、組んで伸ばされないようにしていました。

「ちゃんとグラップリングの対応はできていたと思います。あれでワキを差して、パスしていったので。だから、技の相性的にもジェイクが有利だと思っていたんです。それを今までにない、手前にある足にサドルロックを仕掛けるのは、作戦だろうし、テクニック的にも非常に高度だと思いました」

──この日の大会を見ていても、PolarisはMetamorisやEBIよりもMMAファイターを上手く活用しているように感じました。

「でもメタモリスもジョー・ローゾンがディロン・ダニスにアナコンダ・チョークで負けたりしていたじゃないですか」

──ブレンダン・シャウブの印象が強くて。

「ハイ、ハイ、ハイ。まぁ、今回のポラリスはAJ・アガザームがベンソン・ヘンダーソンを回したり、ヨーロッパ枠でマーチン・ヘルドが腕十字を取ったり、良いマッチメイクだったとは思います」

──日本のMMAファイターで、ポラリスに出てトップ・グラップラーとあそこまで戦える選手がいるのかと。そういう気持ちにもなりました。

「それはだって……今成(正和)さん、僕、桜庭(和志)さん、宇野(薫)さんはこの文脈に入れて良いのか、微妙なところはありますしね。桜庭さんもレジェンド枠、宇野さんと同じ文脈なので、実質は今成さんと僕だけ。この2人しか、グラップリングのメインストリームに呼ばれないということは、そういうことですよね」

──ベンヘンなどは普通のウェルラウンダーで、グラップラーのイメージはないわけじゃないですか。

「まぁ、ダブルレッグで倒しているレスラーなんですけど、何をやらせても強いですよね」

──そういう日本で開催されるQUINTETにクレイグ・ジョーンズが来日します。

「クインテットは凄いことです。ヒールはないのだが」

──なぜ、中井さん口調(笑)。

「ハハハ。ヒールはないのだが──クインテットをくさす気もないし、期待もない。でも、せっかくクレイグ・ジョーンズが来るならセミナーとかやってほしいですよね」

──グラップリングですが、今のグラップリングの技術的な潮流を除外した。クレイグ・ジョーンズに興味がある人たちを商売の対象とはしていない。競技的にはハードルを下げたグラップリング・イベントといえます。

「その大会を否定しないです。盛り上がってくれれば、それは良い話だし」

──あの規模でイベントを開くことができるから、クレイグ・ジョーンズを見ることができる。

「そう!! だからセミナーをやってほしいです」

──それは試合でサドルからのヒールが見られない代償ではないですか。

「まぁ、見たいと思っちゃいますよね。やっぱりデラヒーバに対して、アームドラッグのようなレッグドラッグというのか下からの作りにしても、ジェイクとの試合で見せた動きもそうだし。それらが今、グラップリング界の旬だから」

──実はクレイグ・ジョーンズは道着とも連動しているし、ヒールがなくても柔術家に見て欲しいです。

「道着とノーギが連動している。レベルや袖を持つのとは違う。僕らに近いというか、そういうグラップリングなので」

──そこの面白さを分かって禁止にするのか。そうでないのか。グラップリングの普及にクインテットが、影響を及ぼせる存在になるのかどうか左右するかと。

「足の攻防は分からないだろう──と、そういう部分はあるので……でも、やっていないヤツは分からないといってしまうともう負けなので」

──その通りだと思います。ボーリングもゴルフも、きっとカーリングにしても見るより、やった方が面白いと思います。だから柔術でもグラップリングでも見ても面白いという方向性を創らないといけないですよね。

「足関節があった方が、よりUWFっぽくて好きなんですけどね。特に足の攻防なんかは、後から見て楽しい攻防。解説して楽しい攻防だから、残してほしいですね。まぁ、でもグラップリングをやってくれるだし」

──我々がここで何をいうってモノじゃない?

「そうそう、上手く回ってくれればね」

──青木選手がこういうと、技術を知って欲しいという想いが上から目線だと捉えられることがあります。

Jones「そんなのはどうでも良いですよ。だって最先端は本当に凄いから。ゲイリー・トノンも凄いけど、今のクレイグ・ジョーンズの勢いは凄い。レアンドロ・ロから取るんだから、普通じゃないですよ(笑)。

ジェイクから取っちゃうんだから。何か僕らの発想にないモノがあるんです。あるいは発想にあっても、僕らが使えていないモノがあるなら、それは何なのか知りたいなって。とにかく、日本でクレイグ・ジョーンズを見られることは良いことですよ」

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