【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その参─佐藤天×村山暁洋=報われる部分があっても……
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ昨年12月の一戦=その参は12月10日、Pancrase292から佐藤天×村山暁洋戦を語らおう。
──昨年12月の青木真也が選ぶ、この一番。第3弾はどの試合に?
「佐藤天と村山暁洋選手の試合ですね。佐藤天とは練習もする仲ですし、試合前に彼と話していた通りの試合展開になりましたね。
『行き過ぎないで、圧だけ掛けてコントロールをして戦えば』ということを言っていました。ベースが柔道同士なので、テイクダウンされることもないだろうし。とにかく左ストレートに右ジャブを差して丁寧に戦えば、と。
そういう風に話していたことが、そのままになった。巧く戦えましたよね。村山選手は一筋縄ではいかない選手です。何があるかって感じだけど、皆が苦戦する」
──佐藤選手以外だと、村山選手を圧倒したのは三浦広光選手ぐらいですよね。
「そういう選手に天は一切の攻防を無くして勝てたので、あそこまで圧倒的な勝ち方をすると次のステップアップが楽しみになります」
──阿部大治選手がUFCにステップアップを果たしたのですが、佐藤選手は彼と戦いたかったでしょうね。
「それはね、皆も見たかったでしょうしね。阿部選手がUFCに進んだことは彼も思うところがあるようですが、そこは僕はUFCで戦っていないし、見ていないので……なんとも言えない。
現状、天に関してはパンクラスでは相手がいないというのもあるけど、もう一度頑張ってチャンピオンになってほしいですね。ケガで1年、ブランクがあり27歳になっていますからね。柔道を辞めて23歳ぐらいで長南(亮)さんのところに入ってきて、その頃から見ているので強くなったと思います」
──村山戦や普段からして、どういう部分が強くなっていると思いますか。
「才能は余りない。全然ないと思います。人を魅了する力もそれほどない。プロフェッショナルとして。彼がTTMに入門した時、白井(祐矢)さんがいて、僕も一緒にコツコツと練習を続けるタイプなので、そこにずっと加わっていましたよね。
よく稽古をする子でした。負けん気も強くて。練習でもやられ続けてきた。たくさん練習する癖が、最初についたのではないかと思います。よく頑張っていましたよね」
──地力があるというか、雑草のような強さが感じられます。
「格闘技が好きで、勝ちたくて、よく稽古する。だから、そういう選手が報われる部分があっても良いのにな、この世界もと思います。
あの大会では松嶋こよみ選手も、カイル・アグォンに対して凄く良い試合をしていた。でも、松嶋選手はabemaのONEDAYでも取り上げられていたし、雑誌がある時代もインタビューが掲載されていた。そうなると、天はどうなんだって。
天も松嶋選手と同じように少しでも世に出て欲しい。彼の目標はUFC。どうなるのか、実力的には分からないです。でも行ける時に行く。それは出会いだから。なので……彼に良い出会いがあればいいなと思いす」
──そこが不透明なのが、これからピークを迎える選手にとって一番の難問ですね──今のMMA界は。
「31歳ぐらいまで頑張る。その間にチャンスが巡ってくるかもしれない。UFCは入っちゃうと、あとはどうなるのか分からないですけど、先があれば良いですよね。
今が一番強くなる時期です。パンクラスのベルトを獲ったら、その段階で彼の実力査定となるマッチメイクを組んであげて欲しいです」