【UFC219】24勝0敗のカビブ・ヌルマゴメドフが、ローキックのエジソン・バルボーサと対戦
【写真】ゴツゴツとした堅い試合ができるヌルマゴメドフと、ハイライトリール・ファイトのバルボーサ(C)Zuffa LLC/Getty Images
30日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 219「Cyborg vs Holm」のセミファイナルでカビブ・ヌルマゴメドフ×エジソン・バルボーサのライト級戦が組まれている。
正規王者コナー・マクレガーと暫定王者トニー・ファーガソンが君臨するUFCライト級戦線にあって、正規王者の動向次第だがヌルマゴメドフとバルボーサの勝者がファーガソンに挑戦する可能性が高い──事実上の次期挑戦者決定戦。
ヌルマゴメドフは2008年のMMAデビュー以来、実に24試合負けなし。このレコードは世の残っているMMAの記録では最長だ。恐ろしいことにヌルメゴメドフに続く、21連勝負けなしで世界2位の記録を持つヴィタリー・ミナコフは、ダゲスタンのマハチカラで彼が共同オーナーを務めるイーグルスMMAのチームメイトでもある。
無敗のまま王者になって引退することを公言するヌルマゴメドフにとって、この試合は昨年11月のマイケル・ジョンソン戦以来、1年1カ月振りのファイトとなる。この試合でマゴメドフは、ジョンソンをテイクダウンからのパウンドで圧倒している最中に「もう諦めろ。俺はタイトルが欲しくて戦っているんだ」とタップを促し、これを拒否されると一気にアームロックを極めてしまった。
あのジョンソンを相手に圧倒的に試合を支配できる力の持ち主は、UFC随一のテイクダウン能力の高さを誇る。ヌルマゴメドフのテイクダウンの強さは、前段階の打撃の強さに起因している。逆鉄槌というべき、ロングアッパーは彼以外のファイターが使うことがない。拳を握って親指と人差し指の間の部分を真下から、振り上げるパンチはガードをすり抜けてアゴに直撃していく。
この変則アッパーだけでなく、遠い位置からラッシュをかけて踏み込むと、相手は打撃に反応しておりどうしても重心が高くなっている。そこでヌルマゴメドフはダブルレッグやシングル、クリンチからボディロックで次々とテイクダウンを奪ってきた。
そんなロシアン・イーグルに対して、バルボーサの武器は絶対的に右ローキックだ。アウトサイドから、ヒザ横を正確に打ち抜く強烈無比な蹴り技で、KO勝ちもしており、ギルバート・メレンデスをも封じ込めている。バルボーサのローの特徴は、やや遠目のレンジだけでなく、接近戦でローとパンチのコンビネーションを使いこなすことができる点にある。
それもローからパンチでなく、至近距離で頭を振りつつパンチを放ち、体がくの字になっている状態で、思い切りローキックを蹴り抜く。頭と頭が触れ合うかという距離でローを入れることができる一方で、遠目の距離ではジャブと同じ踏み込みから放たれる後ろ回し蹴りもまたバルボーサの代名詞となっている。
加えて右ミドルも、横回転ではなくヒザ蹴りの要領で下から上に直線的に蹴り上げ、三日月のように指をボディにめり込ませて効かせている。この遠・近距離の蹴りでヌルマゴメドフの圧力を跳ね返すことができれば、バルボーサがテイクダウンの餌食になる割合は減っていくだろう。
もともとバルボーサのテイクダウンディフェンス力が高いのは、打撃の圧力があることで対戦相手の仕掛けが遠目のシングルレッグやダブルになってくることも要因となっていることは間違いない。一方で、ヌルマゴメドフは前述したボディロック系のテイクダウンがレスリングのそれだけでなく、柔道の胸を合わしてからの足技や、腹の上に乗せて反りかえるようなサンボ流の投げも有している。
ノーギ柔道、ノージャケット・サンボ的なテイクダウンはまだまだ世界最高峰でも見る機会が少なく、バルボーサはこれらの技を受けた経験はほとんどないことが予想される。文字で見ればごくごくオーソドックスな技の持ち主のヌルマゴメドフだが、その実は相当に個性的かつ効果のある技術を持っていることになる。
そんなパンチで圧力をかけ組んでくるヌルマゴメドフに対し、ゼロ距離直前のバルボーサの武器は前述したロー以外に、ミドルと同じ要領のヒザ蹴りだ。これらの攻撃で足や腹にどれだけダメージを蓄積させ、前進力を止めることができるのか。バルボーサの勝機は、圧力を返す攻撃と組まれる直前の攻撃に掛かってくる。
■ UFC219対戦カード
<UFC世界女子フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者]クリス・サイボーグ(ブラジル)
[挑戦者]ホーリー・ホルム(米国)
<ライト級/5分3R>
カビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア)
エジソン・バルボーサ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
シンシア・カルヴィーロ(米国)
カーラ・エスパルザ(米国)
<ウェルター級/5分3R>
カーロス・コンディット(米国)
ニール・マグニー(米国)
<ライト級/5分3R>
ダニエル・フッカー(ニュージーランド)
マーク・ディアキーシー(英国)