【UFC219】サイボーグに組み技、ホルムに接近戦があることを忘れてはいけない女子世界フェザー級戦
【写真】接近戦になったその瞬間、サイボーグが何を狙い──ホルムがどう反応するのか。非常に高度な試合になりそうだ (C)Zuffa LLC/Getty Images
30日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで2017年度最後のUFC=UFC 219「Cyborg vs Holm」が開催される。メインはイベント名の通り、UFC世界女子フェザー級王者クリス・サイボーグにホーリー・ホルムが挑戦する一戦だ。
サイボーグにとって7月にトーニャ・エヴィンガーとの王座決定戦で勝利して巻いたベルトの初防衛戦。対して元UFC世界女子バンタム級王者のホルムは、2月にジャーメイン・デランダミーとの初代同級王座決定戦で判定負けを喫し、6月にバンタム級でベチ・コヘイアを軌道の変わるブラジリアンキックでKOしたことで、早くも2度目の王座挑戦が巡ってきたことになる。
今回の世界戦は当然のように世界最怖女子サイボーグのアグレッシブな打撃と、ホルムの距離をコントロールしたカウンター&テクニックがしのぎを削ることが予想される。キャリア18勝で判定勝ちは2試合のみ、16試合でKO/TKO勝ちをしているサイボーグはガンガンと前に出てパンチ、蹴り、首相撲&ヒザ蹴りをフルパワーで対戦相手を倒してきた。その結果、現時点で12試合連続でフィニッシュ勝利を続けている。
対してボクシング世界6冠でタイトル防衛の合計数が18度を誇るホルムは、MMAにおける11の勝ち星のうち、6試合でフィニッシュしており──うちUFCでは2試合で左ハイキックにより勝利を手にしてきた。実際、パンチでのKO勝ち1試合しかなく、離れた距離でサイドキックや右ジャブによってレンジを支配し、スーパーマンパンチや左の蹴りで試合をコントロールするスタイルを立証している数字といえる。
なぜ、拳の打ち合いで世界の頂点を究め続けたホルムが、MMAではパンチによるKOが少ないのか。当然、テイクダウンが存在しているからだ。組ませず、倒れず、打撃を入れることが信条の彼女は、接近戦で戦うことがほとんどない。カウンターで削り、疲弊した相手には近距離からハイキックを蹴り込むホルムが、サイボーグ戦で制空権を握ることができるのか、その辺りが試合の行方を占う上で最重要となるだろう。
とはいっても、何もホルムは接近戦ができないわけではない。ボクシング時代に近い距離でサウスポーの相手に非常に有効なショートの右ボディフック、そして顔面への右フックを叩きこんできた。
サイボーグが、いつものように思い切り体を左に寄せて、右オーバーハンド気味のパンチを不用意に狙うようなことがあれば、ホルムの強烈な右ボディフックが最怖女子の腹を打ち抜くことも十分にありえる。その一方でサイボーグはその強烈な打撃の勢いに隠れがちだが、グラップリングがしっかりとできるということも重要な要素になってくる。
柔術では紫帯時代に2度世界王者になっており、2009年のADCC世界サブミッションレスリングでも銅メダルを獲得しているサイボーグ。爆発力ののある連打からゼロに距離になればテイクダウン、首相撲&ヒザ蹴りという武器をサイボーグは有している。
また両者とも奥足のミドルキック──つまりホルムは左ミドル、サイボーグは右ミドルも次につなげるためのアクセント&ダメージを与えることができる攻撃だけに、パンチの距離よりやや遠目の時の両者の動きも注意する必要がある。
いずれにせよ、組まれたくないシフトをホルムも用意してくるだろうが、接近戦に関してはサイボーグのパワーを上回るテクニックを持つことも確か。サイボーグが勢いに任せて前に出るようなことがあれば、腹をえぐられて苦しみ、左ミドルから左ハイという必勝パターンも有り得る。また、サイボーグとしても接近戦が思い通りに行かなければ、打撃でつってテイクダウン、またはクリンチ&ヒザからテイクダウンという攻撃も有効となるはずだ。
相手の好きにさせないホルムと、自分の好きなように戦うサイボーグ。対照的な両者の対戦だけに意外性、虚をつく攻撃ができた方が優位になる。加えて5Rを2度経験したホルムと、最長の試合タイムが19分というサイボーグ。スタミナ配分も勝敗を分けるカギとなりそうだ。
■ UFC219対戦カード
<UFC世界女子フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者]クリス・サイボーグ(ブラジル)
[挑戦者]ホーリー・ホルム(米国)
<ライト級/5分3R>
カビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア)
エジソン・バルボーサ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
シンシア・カルヴィーロ(米国)
カーラ・エスパルザ(米国)
<ウェルター級/5分3R>
カーロス・コンディット(米国)
ニール・マグニー(米国)
<ライト級/5分3R>
ダニエル・フッカー(ニュージーランド)
マーク・ディアキーシー(英国)