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【GRANDSLAM06】3年振り、最後のMMA(??)に臨む加藤忠治─01─「どれだけ動けていたか思い出せない」

Chuji Kato【写真】以前から穏やかな表情だったが、日曜日にジョギングをしているぐらいのサラリーマンのお兄さんにしか見えない加藤忠治(C)MMAPLANET

29日(日)、東京都新宿区のGENスポーツパレスで開催されるGRANDSLAM06。同大会でかつてジーニアスと呼ばれた、あの男が実戦復帰を果たす。

能登崇と対戦する元PXCライト級チャンピオン、加藤忠治。昨年11月にグランドスラム出場が一度は決まったが、アキレス家断絶によりキャンセルを強いられた。

今や一般人でしかない加藤だが、天才の片鱗を最後になるであろう舞台で見せることができるのか。相変わらずの飄々としたインタビューの受け答え──この野郎という気持ちを押し殺して、読んでもらいたい。


──3年振りの試合が迫ってきました。

「もう、いつ以来とか数えちゃいないです」

──本来は去年の11月にグランドスラムで戦う予定でした。アキレス腱を切断したとのことですが、どのような状況だったのですか。

「あの日、朝にグランドスラムで練習して……」

──並みいるメンバーを極めまくり、パイオニアが『何のために毎日、練習しているだろう』と思わず口にしたと聞いています。

「まぁ、それはいつも通りのことなので(笑)」

──ったく。失礼ですが、天罰だと言いたくなりますよ。

「ハハハハ。あの日から二部練を始め、マスタージャパンに移動してキックのスパーをやっていたんです。で、前蹴りを蹴っていると、なぜか転んじゃって『なんか変だなぁ』って違和感はあったんです。

で、2発目のミドルを蹴ろうとしたら、爆発音みたいな音が聞こえたんです。蹴り込もうとしたら、軸足だった左足がパーンとなって、一瞬目の前が真っ白に。そうしたら、もう平衡感覚がなくなって、練習も中断しました。

アキレス腱の辺りが、凄く腫れあがっていて。でも痛くないんです。だから、アキレス腱を切ったかも思いつつ『大丈夫だから』って言って冷やしていました。でも痛みはないのに、力が入らなくて歩けない。それで救急車を呼んでもらいました(笑)」

──笑いごとではないでしょう。

「処置はギブスで足を固めるだけで。松葉杖を借りて、茨城まで帰ろうと思ったら、もう階段とか昇るのが大変でしたよ」

──で、即手術へと?

「最初に行った病院でその週のうちに手術が決まっていたのですが、仕事に影響するから切りたくないなって思って。合併症とかの危険性があるので、2週間は入院しないといけなくなるんですよ。それでネットで調べたら、とある整骨院で固定ですぐに歩けるようにする──という情報があったので、手術をキャンセルして、そこに行き次の週から仕事をしていました」

──そういう治療方法もあるのですね。

「MMAを続けるのであれば、手術をすることを選択すべきだと思います。手術をしたくない人間が、その治療方法を選ぶという感じです。再発率は手術の方が低いので。そこに3カ月ぐらい通って、普通に歩けるようになりました。

で、リハビリが始まるという状況で、僕は通院をやめたんです。いざ、試合をすることになって練習を再開したら、全く左足の筋肉がなくて(笑)。スパーとかで、力が入ると固まった血液が取れて、可動域が広がるようになってきました。なんか、バコバコって音がして。

僕の場合は腱がくっついているわけでなく、周りを血で固める再生保存治療っていうやり方だったので、リハビリをしないと足が動かなくなっていたんです」

──なんとも……それで平気でいられる気が知れません。

「普通じゃないですよ。でも、多分大丈夫」

──どれぐらい動けているのですか。

「正直にいうと、自分が元々どれだけ動けていたのか思い出せないです」

──よく試合を受けましたね。

「去年、試合の2週間前に怪我をして迷惑をかけてしまいましたからね。基本はもうMMAをやることはないという気持ちで。ただ、中村ジュニアと試合ができるなら、68キロでやりたい──とはグランドスラムには伝えていました。でも、こんなに自分が動けないとは思ってもいませんでした」

──そのようななか、今の練習内容は?

「試合が決まってから、まず埼玉の桶川にある北眞舘というジムに通わせてもらうようになりました。自分が住んでいる牛久から高速で一本で行けて、一クラスがワンコインで凄くよく見てくれるんです。ミットをして貰ってどれくらい動けるかを試したのですが、余りにも動けなくて焦りました」

──MMAの練習は?

「打撃と組みを一緒にはやっていないです。4週間ほど前から北岡さんに寝技の練習をさせてもらって。あとはグランドスラムで煽り映像を撮る時に寝技をやりました。もう、朝は仕事で練習できなくなりましたから、プロ練習の類は参加していないです」

──今もお父さんの事業である競走馬関係の仕事をしているのですか。

「馬関係ではありますが、実は去年の夏の終わりにオヤジと喧嘩をして、会社をクビになりました(笑)。それでいて、嫁さんは実家で働き人質のように取られています」

──……。

「今、僕は違う競馬関係の会社で働いていて、仕事関係で府中に用があるときに、北岡さんのところで練習させてもらっている感じです。それ以外の変化は、車が国産からドイツ車にグレードが上がったぐらいです。生活面が変わったのは」

──地獄に落ちろと思います。MMAの動向を気にすることは?

「全くないことはないです。稽古をつけてくれていた北岡さんや青木さんの試合結果や、ノリが出る試合……練習仲間のことを気になっていたので。でも、僕のようにやっていないヤツは何も言及できることないです」

──その距離間にいて、急に練習を始めてスタミナなどは問題ないのですか。

「スタミナはないです。ヤバいです(笑)。でも、元からです。一番スタミナがあったのは、1R4分で戦ったアマ修斗のトーナメントの時なので。それでもプロになってから、5分3Rと戦えるだけの練習は、ロータスでやらせてもらっていたのであったと思いますけど。あの時と比べると、今は6割か7割という感じですね」

──アキレス腱を切って、3年間ほとんど練習していなくて6割とかあるのですか。

「何もしていなくて、それぐらいはあるんです」

──本当にムカつきます。

「でも、6、7割から10割にするのは大変です」

──それで試合をする怖さはないのですか。

「怖い?……、相手に負ける怖さはないです」

<この項、続く>

■Grandslam06対戦カード

<バンタム級/5分3R>
田中路教(日本)
ホジェリオ・ボントリン(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
柏崎剛(日本)
堀友彦(日本)

<ウェルター級/5分3R>
レッツ豪太(日本)
濱岸正幸(日本)

<ブラップリング・ライト級/3分2R>
所英男(日本)
伊藤盛一郎(日本)

<ライト級/5分3R>
加藤忠治(日本)
能登崇(日本)

<女子ストロー級/5分2R>
ジェット・イズミ(日本)
KAI(日本)

<フェザー級/5分2R>
滝田J太郎(日本)
SHIN(日本)

<ストロー級/5分2R>
小川竜輔(日本)
三谷敏生(日本)

<ウェルター級/5分2R>
悠輝平(日本)
伊藤夏海(日本)

■GRAND SUVIVOR

<73キロ契約/5分2R>
モリシマン(日本)
鈴木一史(日本)

<フェザー級/5分2R>
本田壮一(日本)
山内雄輔(日本)

<80キロ契約/5分2R>
関幸一(日本)
ハーレー・ビーハン(豪州)

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