【Bu et Sports de combat】武術の叡智はMMAに通じる。岩﨑達也─04─ガマク? チンクチ??
【写真】武術空手を知る前に、専門用語といって良い『空手語』を知る必要がある(C)MMAPLANET
MMAと武術は同列ではない。ただし、通じている部分が確実に存在している。そして、如何に武術の叡智をMMAに落とし込むのか。AACCでMMAファイターが習う剛毅會空手──武術空手とは何なのか。さらにいえば、空手なのは何のか──を剛毅會空手・岩﨑達也宗師に尋ねる、この企画。
前回、武術とは法則性という言葉があったが、今回はそれらの要素を今後知っていくために、まず基礎段階として武術空手を知るための空手用語について尋ねた。
──だれもできるようになるものが、武術空手と捉えて良いのでしょうか。
「できるというのではなく、誰もがなるということです。眠くなったら欠伸が出る、鼻に何か入ったらクシャミが出るのと同じです。それは誰でも同じ条件が整えば、同じ症状が出る。それが私の中の武術なんです」
──素人も達人も理論は同じだと。
「同じです。私の考えでは、達人とはソレが身についた人ではなく、法則性に気付いた人なんですよ。ガリレオ・ガリレイと同じです」
──地動説と同じで、MMAにおいて武術空手の有効性を説いても理解されない点まで似ています。
「そうそうそう、そうなんですよ(笑)。ただね、MMAをやっている人たち、MMAのファンが武術空手の有効性について、どのように興味をもってくださるのか。それは、もう私の力の及ぶ範囲ではないです。ただし、空手家をこちらに引き込みたい。空手とはどのような状況でも強さを追及したものですからね」
──地上最強のカラテがその根底にあるということですね。
「まぁ、それが極真だったんだろうということです。そこは置いといて、先ほどのガリレイですが彼は地動説だけでなく、落下する物体は質量に関わらないという落体の法則も発見しました」
──ハイ。
「その質量の話をすると、人の体は変るんです。突きにしても軽いと届く、重いと届かない。速さと距離が変わってきます。これは相対性理論と同じなんです」
──相対性理論と同じと言われても、ピンとくる人はいないのではないでしょうか。
「これも……ですね、おいおい説明することになります。すぐに理解されることではないです。答は出ていても、すぐに答を求めるものでもない。選手は自分で考えることも重要なんですよ」
──そもそも武術空手を知る上で、知っておくべきなのか専門用語をMMA界の人間はしっかりと理解できていないと思います。
「いわゆるガマクやチンクチなどですね」
──ハイ。チンクチが掛かった突き、ガマクが入るなど、オモプラッタやペダラーダよりピンと来ない読者がほとんどだと思われます。
「ガマクやチンクチとは沖縄の方言、沖縄の言葉ですよね。チンクチは筋骨と書きますが、一般的に空手界に伝わるチンクチとは、この筋骨の使い方、関節という繋ぎの部分に力が加わることで、突きなどの威力が増すとされています。
多くはワキから背中の部分を指しています。背かからワキを通り、肩から拳という流れ。つまり手首、肩、腰が繋がっていく力の作用ですね。ガマクは腰から上、決して腰ではなくて英語でいえばウェストの後ろの部分になります」
──存在するとして、くびれの部分のですね。
「ではガマクが入るとは、普通は空手界でどのような状態のことを意味するのか。ガマクを使うということは、このウェストの後ろの部分を使うことで少しの力の作用で、突きは大きな威力を得ることができる。つまり重い突きになるといわれています」
──なるほど。
「ただし、私が言うガマクやチンクチはそれらのガマクとチンクチとは違ってくるのです」
<この項、続く>
■岩﨑達也
1969年6月20日、東京都出身。極真空手90年、95年全日本重量級チャンピオン、世界大会三度出場。2002年国立競技場Dynamite!!でヴァンダレイ・シウバと対戦。現在、剛毅会空手道主宰、武術空手の指導、MMA選手の育成に励む。