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【EJJC2017】ルースター級制覇、芝本幸司<03> 「ヨーロピアンの感覚の再現をパンで」

Koji Shibamoto【写真】 (C)TSUBASA ITO

1月22日、ポルトガルのリスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスで開催されていたIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権──最終日。黒帯ルースター級を制した芝本幸司インタビュー最終回。
Text by Tsubasa Ito

アジア柔術選手権2016での敗北によって、「日本で一番」という後ろ盾を失った芝本。悲願のムンジアル制覇へ向け、新たに構築した価値観とは何だったのか。3月に迫ったパン柔術選手権への意気込みも聞いた。
<芝本幸司インタビューPart.02はコチラから>


――黒帯になってから日本人選手に敗れたことは?

「なかったです。最後に負けたのは……金古(一朗)さんですね。茶帯のライトフェザーの時です。ルースター級で日本人に負けたことはなかったです」

――橋本選手という新世代が台頭した形になりますが、世代闘争のような意識はありますか。

「全くないですね。年齢のことを考えているから、年齢にコントロールされてしまうと思うんですよ。それよりも、自分が強くなっているかどうかが重要なんです。その中で、新たに強い相手が出てきただけのことで。

たとえば、もう自分のピークは終わったな、昔より弱くなっているなと感じてアジアの敗戦になっていたら、なかなかモチベーションが上がらなかったと思います。ただ、今回は負けてしまったけど、それでも今の方が強いんですよね。

そう考えると、あの敗戦がモチベーションが落ちる理由にならないんです。自分をどこまで高められるかがテーマであって、周りがどうというのは私にはどうしようもないことなので。自分が強くなり続けている限り、同じように自分を磨いていくだけですね」

――なるほど。

「もし自分が弱くなった時に、それが年齢によるものなのか。以前より練習を怠っているからなのか。以前よりも燃えるものがなくなったからなのか。そのあたりの原因は見極める必要があると思います」

――現在、そういった要素はまったくないと。

「現時点ではないですね」

――ヨーロピアン選手権での戦いぶりやこれまでのお話を聞く限り、アジアでの敗戦を引きずっていないことがわかって安心しました。

「そうですね。試合が終わって1日、2日考えて、早川(光由)先生ともよく話をして、自分の中で結論にたどり着いた。それでもうスパッと終わりです」

――これまで国内では無敵だったがゆえに、僅差とはいえあの一敗はかなり重いものとして受け止めているのではないかと思ったんです。

「私の場合は、早川先生が冷静に分析してくれるのが大きいと思います。先生と話をしている中で出た結論としては、ふたつに尽きるんですよね。

ひとつは先ほども言ったように、2015年のアジアよりも2016年の自分のほうが間違いなく強かった。実力が上がり続けているんだから、まだやれるということ。もうひとつは、単純に橋本選手が強いからということなんです。

私は今まで世界で戦うにあたり、日本で一番であることを自信にしていたんです。それが崩れちゃったんですよ。もう日本で一番じゃない。じゃあお前はどうやって世界で戦うんだと。今まで自分が後ろ盾にしていたものが崩壊したわけです。

そこをどう創り上げていくのかだけが悩ましいところだったんですけど、出た結論としては、日本の柔術界のレベルが上がった結果、もしかしたら彼と私が世界の1位2位かもしれない。それがたまたまアジアの1位と2位だったと。

ブラジル人はブラジルで1位だから世界にいこうなんて発想じゃない。つねにブラジル人同士が世界でしのぎを削っているわけですよ。柔術のリアルな現実である道場対抗戦というフェーズに、いよいよ日本も入ってきたなということですね」

――世界で日本人同士がしのぎを削る時代になったと。

「今までのように、自分は日本人で一番強いという自信を立てようとする気持ちは、もう私には全くありません。ただ、同じ日本人で世界レベルの人が他にいるというだけであって、彼も私も頑張っていければ良いなと。

もし世界柔術の決勝で日本人同士が戦えたら、日本柔術界にとって素晴らしいことですよね。その可能性がある2人だと思っています。アジアの1位と2位が世界の1位と2位だったとして、もちろん世界で戦う時は自分が1位の側になりたいと思っています」

――橋本選手ともう一度戦いたいという気持ちは?

「私の気持ち以前に戦うことになるでしょうね。昔から誰と戦いたいとかは余りないんですよ。自分が出たトーナメントは全部勝ちたいというだけですね。そこに彼がいれば勝ちたいし」

――次は3月のパン選手権になりますが、どういったテーマを持って臨みますか。

「ヨーロピアン選手権の試合内容が納得のいくものだったので、それを再現することです。ヨーロッパの一回で終わってしまったら意味がないよ。今回の手応えをパン選手権で再現できれば、世界選手権もいけると思っています。

優勝はもちろんしたほうが良いですけど、それよりもヨーロピアンでのあの試合感覚をパン選手権でもできるのか。それが最大のテーマです」

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