【IF-Project】デラヒーバ杯2016 茶帯2階級制覇=八巻祐、柔道の実力者がいよいよ黒帯へ
【写真】茶帯2階級制覇。いよいよ八巻に黒帯が巻かれることとなった(C)TSUBASA ITO
11月27日(日)、東京都台東区の台東リバーサイドスポーツセンターで開催された『ヒカルド・デラヒーバ杯2016』。X-TREAM EBINAの八巻祐は、群雄割拠のアダルト茶帯フェザー級と同オープンクラスで2冠を達成。この大会で黒帯への昇級を決めた八巻の足跡をたどってみたい。
Text by Tsubasa Ito
3月の柔術新聞杯以来、8ヵ月ぶりの試合出場となったヒカルド・デラヒーバ杯2016でアダルト茶帯フェザー級と同オープンクラスの2冠を達成した八巻。特に11名がエントリーしたオープンクラス決勝は、ウルトラヘビー級の井草紘明に対し、パスガードから流れるように決めた三角絞めで一本勝ちを収める圧巻の内容だった。
「井草選手は自分が苦手としているスパイダー系で力も強いので、ジワジワ攻めて少し体力が消耗してきたかなというところで、うまくパスガードができて腕をくくれました。最後は柔道の三角絞めが入りましたけど、あまり相手は警戒していなかったところかなと思います。本来は腕の中から足を絡めて絞めますが、今回は首をダイレクトに挟む絞め方で、ちょうど頸動脈に自分のヒザの内側が入りました」
「柔道の」というワードからもわかるように、八巻は現役の柔道家としても活動しており、2014年の全日本実業柔道個人選手権では66kg級の準々決勝で、ロンドン五輪銀メダリストの平岡拓晃を一本で破って日本一に輝いたほどの実力者だ。普段は神奈川県内の私立高校で保健体育科の教員として働いており、柔道部の顧問も担当している。八巻が柔術を始めたのは、今から3年前の24歳の時だった。
「柔道部の顧問になるにあたって寝技を勉強したいと思ったので、寝技が好きな生徒を誘ってX-TREAM EBINAに通い始めました。それに、生徒との練習だけではなかなか自分個人の練習にならないこともあって、自分の練習場所を探すという目的もあったんです。立技の練習にはならないですけど、寝技の練習で体幹が鍛えられることは、柔道での経験上わかっていました。柔術を習うことで、結果的に立技にも活かせるような体づくりができるんじゃないかと思ったんです」
体育教師、週6日の部活動、生徒の試合の引率と多忙なスケジュールの合間を縫い、八巻は週2日ほど道場へ通った。柔術の試合にも出場するようになり、柔道で磨いた投技からのパスガードや関節技で、青帯や紫帯では連戦連勝を重ねた。だが茶帯に昇級してからは柔術の壁にぶつかることとなる。
「下から攻める人がすごく上手なテクニックを使っていたので、上からのパスガードがなかなか決まらなくなってきて、負けることが増えたんです。X-TREAM EBINAの柳澤(哲裕)会長からそういった選手への対応を教わって、今の形に至りました。今日(デラヒーバ杯2016)の試合だって、1~2年前だったら簡単にやられていたと思うんですよ」
柳澤会長の指導により、柔術家としてのテクニックを身につけた八巻は、2015年の全日本選手権アダルト茶帯フェザー級と同オープンクラスで準優勝を飾り、茶帯トップクラスの仲間入りをはたした。柔道の幅を広げるために始めた柔術だったが、いつしか柔術そのものの奥深さや魅力に取りつかれていく。
「柔道は投技が67本、固技が29本と数が決まっているんですけど、柔術の場合は技も日々発展していきますし、ブラジルで主流の技が日本に入ってきたりするので、アップデートできるところがおもしろいと思います。そして何よりの魅力は、道場の人たちの存在ですよね。仕事が忙しくても、21時、22時くらいから道場に来て練習をしている姿に感銘を受けましたし、生徒にもそういう姿勢を見習うように言っています。
今までは自分が強くなるためだけにひたすら練習していたんですけど、X-TREAM EBINAは和気あいあいとした雰囲気があって、柔道で経験してきたものとは違ったんです。楽しいという理由でずっと柔術を続けていることが、結果的に僕の競技力の向上につながっていると思います」
地道に柔術の技術を磨いたことで、ヒカルド・デラヒーバ杯2016では2階級を制覇。X-TREAM EBINAからはふたり目となる黒帯への昇級が決定した。
「練習をさせてもらっても黒帯の選手はプレッシャーの強さが全然違いますし、茶帯や紫帯に比べると一気にレベルが上がるイメージがあるので、ここからが本当の勝負だと思います。自分のスタイルが黒帯の選手に通用するか、自分自身に期待しています。まわりの方に応援してもらっている分、もうひとつ上のステージでも楽しんでもらえるような試合をしたいですね」
ヴァンダレイ・タカサキやエリクソン・タケウチなど、茶帯の舞台でしのぎを削ったライバルたちは、一足早く黒帯のステージで戦っている。最高峰の舞台での再会が、今から待ち遠しい。柔道と柔術。似て非なるふたつのジャンルをハイレベルで両立させ、結果を残してきた八巻。異例の挑戦を続ける男の今後も目が離せない。
■ヒカルド・デラヒーバ杯2016 主なリザルト
【アダルト黒帯ライトフェザー級】
優勝 西林浩平(パトスタジオ)
準優勝 澤田真琴(DRAGON’S DEN)
【アダルト黒帯オープンクラス】
優勝 中村大輔(パトスタジオ)
【アダルト茶帯ルースター級】
優勝 中尾亮(ヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜)
準優勝 赤堀祥一(ストライプル)
【アダルト茶帯フェザー級】
優勝 八巻祐(X-TREAM EBINA)
準優勝 横山武司(GRABAKA柔術クラブ)
3位 岡田秀人(SHOOTO GYM K’zFACTORY)
3位 今泉貴史(パラエストラ渋谷)
【アダルト茶帯ライト級】
優勝 新村康行(グラスコ柔術アカデミー)
準優勝 山田洋平(DRAGON’S DEN)
【アダルト茶帯ミドル級】
優勝 岡澤弘太(リバーサルジム横浜グランドスラム)
準優勝 山口勇生(リバーサルジム新宿Me,We)
【アダルト茶帯ウルトラヘビー級】
優勝 井草紘明(ピュアブレッド)
準優勝 カイル・ロードス(ヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜)
【アダルト茶帯オープンクラス】
優勝 八巻祐(X-TREAM EBINA)
準優勝 井草紘明(ピュアブレッド)
3位 岡田秀人(SHOOTO GYM K’zFACTORY)
3位 岡澤弘太(リバーサルジム横浜グランドスラム)
【団体表彰】
優勝 ヒロブラジリアン柔術アカデミー横浜
準優勝 パトスタジオ
3位 DRAGON’S DEN