【WJJ Expo】Day2 リスター、必殺の切れ味を見せつける
【写真】冷蔵庫というかブルドーザー、いやブルドックというべきか、凄い体になってきたリスター。伝家の宝刀の切れ味は増すばかりだ
9~10日(土~金・現地時間)、カリフォルニア州ロングビーチにあるロングビーチ・コンベンションセンターで開催されたワールド柔術エキスポ。Day 2の10日は、10人の選手が参加した黒帯グランプリに加え、前日にも増して豪華なスーパーファイトが4試合行われた。まずは黒帯グランプリと、スーパーファイト2試合の模様をお届けしよう。
Photo by Susumu Nagao
<黒帯グランプリ決勝>
ヒカルド・へゼンジ
Def. by 膝十字
ジェームズ・プオポロ
当初16人が参加予定となっていた黒帯グランプリだが、募集期間が短かったこともあってか、集まったのはその半数。そこで前日の茶帯グランプリにも出場したロンドン五輪柔道米国代表のトラヴィス・スティーブンスと、シロー・ロバーツを加えた10人が、2グループに分かれて予選を行う形で大会は行われた。
前日に続き注目されたスティーブンスは、ジェームズ・プオポロとヒカルド・へゼンジには、それぞれ膝十字と腕十字で一本負けを喫するも、アセッサンドロ・フェレイラとエリオット・ケリーという二人の黒帯を撃破する健闘ぶり。前日も優勝したティム・スプリッグスと唯一ほぼ互角の試合を演じ、5勝2敗という好成績を残したスティーブンス。世界レベルの柔道家は、柔術においても世界クラスの実力を身に付けつつあると見て良さそうだ。
結局この日のグランプリ決勝は、スティーブンスを倒した上述の二人の黒帯の間で争われることになった。プオポロはラファエル・ロバトJr、ヘゼンジはサイボーグことホベルト・アベルーとそれぞれ高名な黒帯を師と仰いでいる。
上から強いパスのプレッシャーをかけてくるプオポロに、2階級下のヘゼンジは得意のラッソー(巻きスパイダー)ガードやスパイダーガードを駆使して対抗する。やがてプオポロがレッグドラッグを成功させると、へゼンジは腹這いでエスケープ。ピンチに陥ったかに見えたが、ここで回転して逆転の膝十字一閃。予選でプオポロに極められた技を、決勝では逆に極め返したヘゼンジが優勝を飾った。
<ノーギ・IBJJFルール/10分1R>
ブルーノ・マルファシーニ
Def. 5-2
ジェフ・グローバー
近年は勝負へのこだわりよりも、ショーマンとしてのパフォーマンスが目立つグローバーは、この日も笑顔でファンを盛り上げる仕草をしながら登場。体も以前より大きくなった模様だ。対するマルファシーニは、前日のメインで見事に締めたカイオ・テハとともに、柔術最軽量級の世界ツートップを長年張っている選手。こちらは生粋のルースター級の体格。グローバーより頭一つ小さい。
試合開始するとすぐにテイクダウンを仕掛けたグローバーは、それを防がれると背中を付けてマット場を回転する。やがて立ち上がるとゴリラのように胸を張って前進しては、またマットに背中を付けて回転してゆく。座ったグローバー相手にパスを仕掛けたマルファシーニは、やがてグローバーの脇を差すことに成功。そのまま膝で股間を割るとあっさりパスに成功する。
パスされても表情を変えないグローバーが下から動くと、マルファシーニはそれに乗じて猫の如きスピードでバック狙い。しかし、グローバーも負けないスピードで回転して逃れ、両者はスタンドに戻ってみせた。その後もゴリラ歩きや、両手をマットに付けて相手に尻を向けるなど変則的な動きを見せたグローバーは、下から仕掛けるマルファシーニの足を取って膝十字の体勢へ。外側から掛けた足を反則にならないように伸ばした上での仕掛けだったが、レフェリーはここでブレイク。足を解いた所から再開させ、両者は離れることに。
残り時間が少なくなってくると、下からキムラグリップを作ることに成功したグローバーは、そのままスイープに成功。下になったマルファシーニもすぐに上を奪い返してみせた。その後もグローバーは前進して攻撃を仕掛けようとするが、リードしているマルファシーニに流されてタイムアップに。勝負への妥協なき姿勢を貫いたマルファシーニが、playfulに戦ったグローバーを制する形となった。潔く勝者を称えたグローバーだったが、試合後自身のFacebookにて、自分が仕掛けた膝十字をブレイクして足を解いたレフェリーの判断に疑問の声を吐露。大きなチャンスを台無しにされたことを残念がっていた。
<ノーギ・サブミッションオンリー/20分1R>
ディーン・リスター
Def. ヒールフック
タルシス・フンフェリー
負傷欠場となったトキーニョことホジマール・パリャレスの代わりにリスターと戦ったのは、2009年アブダビプロ柔術二階級制覇をはじめとして、ギ、ノーギともに実績を残すアリアンシのタルシス・フンフェリー。37才にして冷蔵庫のような肉体を誇り、解説のブラウリオ・エスティマからも「ヒールフックを決めるのに最適な体型」と評されたリスター。当然狙いは足を絡ませてのヒールだが、それを承知のフンフェリーは下になることは徹底的に避け、またリスターが下から足を絡めてくると、すぐに距離を取ることで対応する。
リスターがハーフガードを取ると、直後にまたいで逆ハーフの体勢をつくり、さらにリスターの片足を抱えて決して足関節の体勢になることを許さないフンフェリー。そのうち、下のリスター相手にアキレスを仕掛けるという果敢な動きもみせた。リスターは親指を二本突き立てて余裕をアピール。やがてリスターが足関節で切り返す素振りを見せると、フンフェリーはすぐさま距離を取って離れる。
しかし、組みついてきたリスターが背中でグリップを作ると、フンフェリーは思わずクローズドガードに飛びついてしまう。誰もが「やってしまった」と思うなか、リスターは当然のごとくヒールを仕掛け、一本。フンフェリーが不用意だったと言ってしまえばそれまでだが、ここは相手に読まれていても必殺技を極めてしまうリスターの熟練ぶりを賞賛すべきだろう。