【WJJ Expo】競技=ロ×MMA=シールズ。素晴らしきかな柔術
【写真】道着、ノーギ、MMA、ポイント、サブミッション・オンリー全てが柔術、まさに柔術博覧会に相応しい数々の素晴らしいファイトのトリをレアンドロ・ロとジェイク・シールズが務めた。
ジェイク・シールズのMMA柔術、「現在世界最強」ロの競技柔術に肉迫。9~10日(土~金・現地時間)、カリフォルニア州ロングビーチにあるロングビーチ・コンベンションセンターで開催されたワールド柔術エキスポ。最終回となる今回のレポートで、Day 2の最終試合、ジェイク・シールズ×レアンドロ・ロのMMAファイター×強豪グラップラーのスーパーファイトを模様をお伝えしたい。
Photo by Susumu Nagao
<ノーギ・サブミッションオンリー/15分1R>
レアンドロ・ロ
Draw
ジェイク・シールズ
数々の豪華な組み合わせが実現したこのイベントのトリは、競技柔術世界最強の座に君臨するレアンドロ・ロと、先日デミアン・マイア戦を制しMMA界最強グラップラーの一人であることを証明したジェイク・シールズによる注目の一戦。レスリングでは不利と見られるロは、予想通り試合開始早々引き込んで下から勝負する。
トップゲームは望むところのシールズ、ハーフを取ったロの首を取って上半身を制しにかかる。だがロは上側の腕と膝を使って距離を作って対抗。首を取り胸を合わせたいシールズと、それを許さずスイープに持っていきたいロの凌ぎ合いが続く。やがてロが潜りに成功すると、シールズはすかさず距離を取り、一歩退いた形に。
今大会で他のMMA選手がことごとく組み技専門家の下攻めに防戦一方を余儀なくされてきたことを考えると、ロに普通に上から圧力をかけて競り合っているシールズのポスチャーの凄まじさが分かる。その後は再び上から圧力をかけてロのハーフを正面突破しようとしたシールズは、ついにロの頭を抱えることに成功する。
ロもすぐに上側の膝を両者の間にこじ入れて隙間を作り、下から煽って首のコントロールを解く。それでもシールズが低く体重をかけて腰をコントロールしにくると、今度は上側の腕を伸ばしてスティッフ・アームを作ってシールズの肩を押して距離を作り、難を逃れてみせた。まさにハーフガードにおけるディフェンスの教科書のような動きだ。
引き続き回転形のムーブで見せ場を作ったロは、ハーフから潜ってシールズのバランスを崩し、立ち上がって逃げようとするシールズの背後からクラッチを組むことに成功する。そのまま投げを放って試合をグラウンドに持ち込んだロだが、次の瞬間シールズがスピン。ロに正対しつつ見事に上を取ってみせた。これは先日のデミアン・マイア戦の勝利の鍵になった動きだ。
上のシールズと下のロ、手に汗握る攻防が続き、試合が終盤に差し掛かる頃、シールズの上からのプレッシャーを利用してロが後転。バランスを崩したシールズにテイクダウンを決め、見事に上を奪うことに成功する。この試合初めて上になったロは、伝家の宝刀のパスガードを狙ってシールズの首を抱える。セコンドのクロン・グレイシーが残り時間を告げる声が響くなか、シールズは膝と腕を使って距離を取る。ここでロが立ち上って一息ついたその一瞬に、シールズは頭を起こしてシッティングガードに。ロはがぶろうとするが、シールズは立ち上がりながら難なく振りほどいてみせた。これまたシールズがMMAにおける得意な動きを炸裂させた場面だった。
ロは最後まで跳びつきガードから攻めに行くが、結局決め手はなく時間切れの引き分け。攻め込んだ場面の多さでいえば、組み技専門家のロが勝ったこの試合は、通常の柔術やグラップリングのようなポイント計算なら、スイープからテイクダウンを決めたロの勝利ということになる。ただし、驚くべきは本職でないというというのにロに上からのプレッシャーで真っ向から対抗し、さらにMMAの中で鍛え上げた動きを要所で披露して決して危ない場面に追い込まれることのなかったシールズだ。実際に試合後のインタビューでロは「ジェイクの柔術は素晴らしい。MMA選手というより、強豪の柔術家と戦っている感覚だった」とシールズの実力を称えてみせた。
テハ、マルファシーニ、リスターら長年世界のトップに君臨している選手たちがその実力を見せつけ、ミヤオ兄弟やコーネリアスも新世代の進化する技術を発揮し、さらにそれにシールズ、フィッチらがMMAで培った体力と技術で対抗してみせたこの大会。まさに博覧会の名に相応しく、さまざまな柔術技術の素晴らしさが披露されたものとなった。
イベントの最後に2日目は観戦に回っていたヘンゾが解説席に登場して大会の大成功を宣言。レバノンの詩人ハリール・ジブラーンの『子供たちについて』の一節(子供たちの未来の可能性への讃歌)を朗読したヘンゾは、この日はニューキッズが輝き、オールドジェネレーションを追い込んだことにご満悦だった。
さらにヘンゾは、自分がミヤオ兄弟とスパーリングしたことについて「非常にユニークな経験だった。彼らはこちらを常に非常にやりにくい姿勢に追い込むことを知っている。私はこの経験をNYの自分の道場に持ち帰るつもりだ。彼らが持つ柔術のビジョン、そのものが新しい。私が今紹介した詩の通りだよ。私は彼らとスパーリングして、『なぜこれまで長年柔術の新しい技術を追い求めていた私が、彼らのようなビジョンに至らなかったのか?』と思わざるを得なかったよ」と熱弁した。
【写真】ヘンゾとホジャー・グレイシー。ヘンゾの情熱が柔術のさらに発展に通じる。
Knowledge is never too much(学びすぎることなど決してない)と常に主張し、柔術の可能性のあくなき追求を続け、彼から見ればまさに「子供たち」に過ぎないようなミヤオ兄弟からも学ぶヘンゾの姿勢。それが今回、きわめて魅力的なイベントとして結実した。