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【ADWP】無差別級レポート<02>後半ブロックは波乱続き、ガルバォン、レアンドロ・ロが共に敗退

4月19日(現地時間・火)から23日(同・土)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのZAYED スポーツシティ内のIPICアリーナにて、アブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2016が開催された。

大会レビューの6回目となる今回は優勝賞金30000ドルを目指して競われた黒帯アダルト男子無差別級、後半ブロックの注目試合をレポートしたい。

<無差別級2回戦/6分1R>
ホセ・ジュニオール(ブラジル)
Def. by 4-2
ルイス・パンザ(ブラジル)

柔術界屈指の強烈な極めを持つパンザと、黒帯での活躍こそ少ないものの、UAEの柔術プログラム開発における要職を務める隠れた実力者、ジュニオールの対決。一瞬で相手を壊す爆発力を秘めたパンザと、丸っこい体格で決して身体能力に恵まれているとは思えないが、柔らかい動きを持つジュニオールという対照的な両者だ。

パンザは引き込んですぐに50/50を作るとアキレス腱固めを狙ってゆくが、極まらないと見るや上のポジションを奪取。2-0とリードをした。必殺の極めはポイントを取る手段にも活かされているようだ。しかしジュニオールはすかさず得意のハーフガードからのタックルに。これは防がれてしまったがアドバンテージを取ると、次はディープハーフを作ってスイープを決めて逆転。そこからパスで煽ってバックを取りかけることで、アドバンテージを2つ追加してみせた。

さらに下から攻めるジュニオールは、立ったパンザの脚をすくってアドバンテージを追加。追い詰められたパンザは、ジュニオールのガードを割ると、前転して足を取ってアンクルへ。強烈に絞り上げられたジュニオールは、苦痛に顔を歪めながらもなんとかポイントをずらして防御、上を取ってポイントを4-2と加点に成功する。

最後の勝負に出るパンザは、前転してのトルネードスイープのセットアップから足を取り、アキレス腱固めへ。しかし極め切ることができずに試合終了。アクション満載の激闘の末、国際舞台では無名に近いジュニオールが、極め業師として名高いパンザに技術で対抗して見事に競り勝ってみせた。

<無差別級準々決勝/6分1R>
ホセ・ジュニオール(ブラジル)
Def. by 2-0
ヒカルド・エヴァンゲリスタ(ブラジル)

準々決勝でジュニオールを待ち構えていたのは、長身を誇るエヴァンゲリスタ。昨年の世界柔術にて、当時の世界最強の柔術家、ブシェシャことマーカス・アルメイダと互角以上の戦いを繰り広げた末に負傷棄権に追い込み、名前を上げている。

引き込んだジュニオールはリバースハーフガードの体勢に持ち込むが、エヴァンゲリスタに膝を抜かれそうになってしまう。あわやマウントを取られるかというタイミングでジュニオールが見事に返してみせ、スイープの2点を先取した。

そこから得意のクローズドガードを作ったエヴァンケリスタは、長いリーチを仕掛けて下から仕掛けようとするが、ジュニオールはベースを作ると、脇を締めてエヴァンゲリスタのズボンを押し下げ、ガードを開けようとする固い攻めで対抗。しばらくこの状況が続き、膠着として両者にペナルティが与えられるが、体勢は変わらない。

残り30秒になってもガードを開かなかったエヴァンゲリスタだが、残り10秒でやっと開いて状況打開を試みる。しかし当然時間が足りずジュニオールが2-0で勝利。ガードの中でのジュニオールの固い戦いに苛立ったか、敗れたエヴァンゲリスタは怒りの表情を見せる。しかし体格、スピード、パワーどれを取ってもはるかに上をゆくエヴァンゲリスタを、一瞬のタイミングで返したジュニオールの技術は賞賛に値する。これまで国際舞台で華やかな活躍のなかったテクニシャンが、ホームグラウンドで大歓声を浴びるなか見事に準決勝進出を果たしてみせた。

<無差別級2回戦/6分1R>
アーバース・サントス(ブラジル)
Def. アドバンテージ1-0
アンドレ・ガルバォン(ブラジル)

アトス総帥のガルバォンは、初戦で盟友にして去年のADCC世界王者ダヴィ・ハモスと注目の対決。シッティングからの片足タックルを、強烈なクロスチョークで切り返してアドバンテージを奪うと、さらにスタンドの攻防では小外刈りでハモスをぐらつかせてアドバンテージを追加して勝利。成長著しいアーバース・サントス戦を迎えた。

立ち技に定評のあるサントス相手に、引き込んでの攻撃を選択したガルバォン。シングルレッグX(足絡み)の体勢を作って揺さぶりにかかるが、サントスは一瞬で絡まれた足を引き抜くと横に回ってパスへ。一瞬あわやパスかと思われたが、ガルバォンは必死でうつ伏せに。さらに背後に付いたサントスだが、ここで場外ブレイク。サントスがパワフルかつ躍動感溢れる動きでアドバンテージを先制した。

再開すると、今度は容易には引き込まずにスタンドの攻防を挑んだガルバォン。しかしサントスはその両襟を掴んで揺さぶるなど、ガルバォンに反撃の機会を与えない。やがて両者に膠着のペナルティが与えられる。

残り1分となったところで、再び引き込みを選択したガルバォン。サントスが距離を取ろうとするやシットアップし、そのままシングルレッグに移行。強靭な足腰を持つサントスは片足一本でバランスを保ち崩れない。ならばとばかりに背後に回ろうとするガルバォンだが、サントスはこれも許さず振り解く。残り10数秒で再び引き込んだガルバォン。最後の望みを賭けた仕掛けを作ろうとするが、サントスはがっちりと腰を落として微動だにせず。序盤に奪ったアドバンテージを守り切って見事に大物食いを果たした。

あのガルバォン相手に、盤石のトップゲームで快勝した恐るべき新鋭サントス。翌日、世界最高峰のガードを誇るフィリッピ・ペナからパス&マウントを奪って階級別制覇という快挙を成し遂げるこの男だが、それを予感させるに十分な強さをここでも見せた。

<無差別級2回戦/6分1R>
ヴィクトー・ホノリオ(ブラジル)
Def. by アドバンテージ 2-1
レアンドロ・ロ(ブラジル)

GFチームの巨漢ホノリオは、引き込んでオープンガードからの仕掛けを作ろうとするロに対し、漬け物石のごとく座り込んで頭を下げて腰を引く姿勢で対処。お互いにペナルティが加算されてゆくなか時間が過ぎてゆく。

両者にアドバンテージが1つずつ与えられて、試合は残り1分に。ロはなんとか展開を作ろうと、背中越しに帯を掴む。するとそのロの両足のズボンを掴んで押し下げたホノリオは、低い体勢のまま上半身を前にドライブさせてのパス狙い。押されたロが場外に出ると、サイドに回られかけたこともあってホノリオのアドバンテージが一つ与えられた。

残り40秒。なんとか取り返したいロはすぐに引き込むが、ホノリオはすかさず両腕をロの両足の下にこじ入れるダブルアンダーフックでロを押してゆき、仕掛けを作らせずに再び場外ブレイクとなる。残り時間が僅かとなり、ロは再び引き込んで展開を作ろうとするが、ホノリオはひたすら体勢を低くして守り切って試合終了。敗戦にマットを叩いて悔しがるロ。怪物といえども、短い試合時間で自分よりはるかに重い人間に膠着戦法を取られてしまうと厳しかったようだ。

<無差別級準々決勝/6分1R>
ヴィクトー・ホノリオ(ブラジル)
両者失格
アーバース・サントス(ブラジル)

ロを倒したホノリオ×ガルバォンを倒したサントス、大物食いを果たした者同士の準々決勝は両者スタンドで腰を引いて互いの道着を持ったまま譲らず、動きのない展開が延々と続く。ペナルティが加算されていっても展開が変わらないのを見た審判は、なんと両者失格を宣告。波乱続きの最終ブロックだったが、最後に待っていた大波乱のおかげで準決勝進出者が出ないことに。これで自動的にCブロックを制したホセ・ジュニオールの決勝進出が自動的に決定。この地味な無名のテクニシャンが、世界の強豪ひしめく大舞台で決勝まで来ることを、いったい誰が予想しえたであろうか。

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