【ADWP】77キロ級 細川が健闘の──レプリは不可解な初戦敗退。残念、サトシは準優勝に
4月19日(現地時間・火)から23日(同・土)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのZAYED スポーツシティ内のIPICアリーナにて、アブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2016が開催された。
大会レビュー第2回となる今回は、ボンサイ柔術ジャパン所属のホベルト・サトシ・ソウザの3度目の優勝が期待された黒帯アダルト男子77キロ以下級の模様を報告したい。
<77キロ以下級1回戦/6分1R>
カイオ・シウバ(ブラジル)
Def. by 4-2
細川顕(日本)
引き込んだ細川は、スパイラルガードからの内回りや、デラヒーバガードからのベリンボロで積極的に崩しにかかる。やがてベリンボロからシウバのズボンの後ろを掴んだ細川は、引っ張って尻を出させて背後に回ることに成功。だがシウバは立ち上がり、グリップを振りほどく。これでまず細川がアドバンテージを先制した。
再び引き込んだ細川は、今度はシウバの左足を引き出してのスイープ狙い。しかしシウバは、これをアキレス腱固めで切り返してアドバンテージを取り返す。その後ここから細川が立って上になり2点を獲得するものの、シウバも立ち上がってすぐに同点とした。
下になった細川は続いてラッソーを作ると、シウバのパスのプレッシャーに合わせて内回りへ。シウバの股間をくぐる形で、再びシウバのズボンを掴んでの尻出しに成功。シウバはアキレス腱固めでの反撃を試みるものの、それを防いだ細川はシウバのバックに。するとシウバは再び立ち上がって振りほどく。細川が再びアドバンテージでリードを奪った。多彩な攻撃を繰り出す細川に対して、シウバがフィジカルを利用して守る展開が続いている。
残り1分半。細川がまた引き込むと、今度はシウバも引き込み。ここで上を選択した細川にアドバンテージがまた一つ加算される。シウバは細川の裾を引き出すと、ワームガードの要領でそれを自分の足に搦めて細川の左膝裏を通して掴んでのスイープ狙いに。前に崩された細川だが、うまく左足を抜く。しかしシウバはその左足を手でキャッチして抱えると、そのままスイープして上に。4-2で逆転に成功した。
土壇場で痛恨のスイープを許してしまった細川は、すかさずシウバの右足を抱えて崩すと、そのままバック狙いに行くが時間切れ。無念の初戦敗退となった。
下から多彩な形で攻め続けて持ち味を発揮した細川。技術ではシウバを上回っていたようにも見えたが、競技者としては要所を抑えて守り、勝負所で確実に点を取ってみせたシウバがこの日は一枚上だったということだろう。いざという所での勝負強さを付けるために必要なのは、フィジカルか、それともさらに精度の高い技術なのか──そんな課題が見えた細川の戦いだった。
<77キロ以下級1回戦/6分1R>
ルアン・カルバーリョ(ブラジル)
Def. by レフェリー判定
ルーカス・レプリ(ブラジル)
優勝候補筆頭のルーカス・レプリ(アリアンシ)は、15年ブラジレイロ王者のルアン・カルバーリョ(ノヴァウニオン)と初戦で対戦。立ち技の攻防でカルバーリョが揺さぶりをかけて足を飛ばすのをやり過ごしていると、なぜか(レプリにペナルティではなく)カルバーリョにアドバンテージが入る。
その後引き込んだレプリは、クローズドガードから横に崩すスイープでアドバンテージを獲得して同点に追い付くと、後半は十八番のハーフガードからのスイープを狙ってゆく。ここでカルバーリョに膝を抜かれかけてアドバンテージを失うが、そのままタックルに移行してテイクダウンに成功。すぐに立ち上がったカルバーリョのバックに飛びついたところで試合終了。
最初に不可解なアドバンテージを取られつつも、結局最後は明確なアドバンテージで追い付いたレプリの勝利かと思われたが、得点掲示板はアドバンテージ2-1でカルバーリョ勝利のまま。その後審判団による協議が開始され、掲示板は改めてアドバンテージ3-2でカルバーリョの勝利に変更された。
しかしながら、延々と続いた協議の果てに勝利を宣告されたのはレプリの方! 勝利を奪われたと泣き崩れるカルバーリョだが、(明確なアドバンテージを2つ奪ったのはレプリの方である以上)この判定は妥当……と思いきや、何と試合後にこの判定が撤回され、結局カルバーリョの勝利に。優勝候補最右翼のレプリが、不可解この上ない判定により、最初の6分間で姿を消すこととなってしまった。
<77キロ以下級決勝戦/6分1R>
ガブリエル・アルジェス(ブラジル)
Def. by 6-4
ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
天敵のレプリが不可解な判定によって初戦敗退したこともあり、3度目の今大会優勝のチャンスがぐんと広がったホベルト・サトシ・ソウザ(ボンサイ柔術ジャパン)。準々決勝でレプリを倒したカルバーリョを弓矢絞めで下すと、準決勝のAJアがザーム戦も4-0で突破。今年のヨーロピアン大会のミディアムヘビー級を、師匠のホムロ・バハウとクローズアウトしたバッハの新鋭、ガブリエル・アルジェスとの決勝戦に駒を進めた。
試合開始早々飛びついて引き込むサトシだが、それに合わせてアルジェスも引き込み。ここでサトシは上を選択してアドバンテージを獲得するが、オープンガードで足を効かせるアルジェスは、すぐにサトシの両足を掴んで後ろに倒してスイープに成功。2点を先制した。
上になって立ち上がると、サトシの体を折り畳むようにパスを狙ってゆくアルジェス。しかしサトシはその勢いを使って横回転してスクランブルで上になり、逆転に成功した。ここからさらにパスを狙うサトシだが、アルジェスは巧みにガードに戻すと、下から足を搦めてサトシの右足を引き出して肩に掛けることに成功。そのままサトシのバランスを崩して立ち上がって再逆転した。
体を折り畳まれたような状態で下になったサトシは、足で跳ね上げてのリバーサルを狙うが、アルジェスはその勢いをうまくすかして横に回ってのパス狙い。抑え込まれかけたサトシが懸命にうつ伏せになったところにバックに付いてギチョークを狙う。サトシはなんとか動き続けて体を翻して上になるものの、ポイントは入らず。逆にアルジェスにアドバンテージが一つ加わった。
立ち上がってのパスを試みるサトシだが、アルジェスは冷静にデラヒーバガードを作り、回転して足を搦めて再びサトシの右足を肩に抱えると、50/50ポジションへ。現在リードした状態で下のポジションにいるアルジェスとしては、このままシーソーを維持すれば勝利というわけだ。
アルジェスは下からサトシのバランスを崩し、お互い足を狙えるポジションに。この体勢のまま埒の開かないサトシはアンクルを極めに行く。しかしアルジェスは回転しながら冷静に対処し、50/50を維持したまま上を奪って6-2としてみせた。残り30秒を切るなか、サトシはなんとか上になり2点差に迫るが、50/50を解除することはできず、万事休す。アルジェスが初制覇を果たした。
あのサトシと上からも下からも互角以上に渡り合う卓越した技術と、勝利のためにもっとも確実な戦略を試合中に選ぶことのできる判断力を併せ持ったアルジェス。この逸材はすでに、中量級世界最強争いの一角を占めているといっても過言ではないだろう。
■アブダビ・ワールドプロ柔術黒帯男子アダルト リザルト
【77キロ以下級】
優勝:ガブリエル・アルジェス(ブラジル)
準優勝:ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
3位:ジョニー・ソウザ(ブラジル)