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【European Open 2016】無差別級の激闘、プレギーサ&ホミーニョの生き様=Jiu Jitsu is life

Open Podium【写真】無差別級を制したプレギーサ、準優勝のホミーニョ。ともに生き様を見せた表彰台だ(C)IBJJF

ポルトガルのリスボン、パヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスで1月20日(現地時間・水)から24日(日・同)まで開催されていたIBJJF主催のヨーロピアンオープン柔術選手権。今回は最終日前の土曜に階級別に先立って行われ、大死闘が展開された無差別級の模様を紹介したい。

<無差別級準決勝戦/10分1R>
フィリッピ・ペナ (ブラジル)
Def. by 片羽絞め
エルベルト・サントス(ブラジル)

重量級最注目選手の一人、プレギーサことフィリッピ・ペナ(グレイシー・バッハ)が順調に勝ち上がり、準決勝で階級上のスーパーヘビー級戦士、サントス(ハイアン・グレイシー)と激突した。

開始早々引き込んだペナは、あっという間にしたから足を搦めると、相手の右足を引き出して抱える得意の形を作る。そこからシングルエックスで相手のバランスを崩しつつ、立ち上がって倒して2点先制。さすがのスイープの強さを見せつけた。

しかし、下になるとすぐにハイガードを取ったサントスは、そのままペナの左腕を十字で捕獲。苦悶の表情を浮かべるペナの腕は、完全に伸びるどころか可動域と逆方向に曲がるまで極められてしまっている。それでもタップをしないペナは、倒れ込みながらサントスの胴に両足を搦めて抵抗。かまわず腹を出してさらに極めを強めるサントスだが、ペナはそれでも諦めずに、空いている右手でサントスの足を自分の顔からどけてエスケープに成功した。それでもサントスは上になり、ポイントは2-2の同点に。

まだ左腕のダメージが残るペナに対して、サントスはさらに横に回ってパスの波状攻撃。完全に足を超えてサイドに付いたように見えたが、ペナは諦めずに動き続けてガードに戻す。恐るべき粘り腰を見せたが、アドバンテージは3-0と大きく差が開いたのだった。

その後も、得意の膝十字を交えて上から攻撃するサントスと、左腕があまり効かないながらも下から攻撃を続けるペナによる攻防が続く。やがて50/50を作ったペナは一度上を奪うも、サントスもすぐに上を取りもどす。さらにペナが足を搦めたままインバーテッドの形を作って下から揺さぶると、豪を煮やしたかサントスは膝十字へ。その機に乗じてペナは上になり、50/50で足が絡んだまま6-4と再逆転してみせた。

残り時間が少なくなり、点を取り返す必要のあるサントスは強引に立ち上がりにかかる。その瞬間、ペナはすかさず足を引き抜いて50/50を解除。すぐさまバックに飛びついてみせた。なんとか逃れようと動いてスクランブルに持ち込んだサントスだが、ペナもそれについてゆきバックを逃さない。そのうち動き勝ったペナが完全に背後に付いたと思ったら、次の瞬間片羽絞めへ。直後にサントスはタップ。残り時間約20秒のことだった。

序盤に左腕を完全に極められたペナ。それでもタップせずに脱出し、直後にはほぼ完全にパスをされかけても、動き続けてガードに戻した。さらに左腕があまり効かない状態で攻撃を続けて上を奪い返し、最後は相手に動き勝っての一本勝ち。凄まじいまでの勝利への執念。それはかつてエリオ・グレイシーが『腕を折られても戦える。絞め落とされると終わり。だから眠らせる』という柔術の原義を語っていた通りの戦いを見せつけるとともに、最後の50/50解除からのバック取りは、モダン柔術のダイナミックな進化を裏付ける、観る者にとっても嬉しい動きだった。

敗れたサントスは、極度の疲労によりその後数分間倒れたまま動けず。そして勝ったペナの方は、十字を極められた左腕の負傷により、階級別の欠場を余儀なくされた。両者ともにまさに身体を極限まで削った、大死闘だった。

<無差別級準決勝戦/10分1R>
ホムロ・バハウ(ブラジル)
Def. by 襟絞め
ジャクソン・ソウザ(ブラジル)

無差別級もう一つの準決勝は、ベテランにしてADCCと世界柔術の両方を制覇したベテランのホムロ・バハウ(グレイシー・バッハ)が3連続一本勝ちで順調に勝ち上がり、やはり順当に勝ち上がったジャクソン・ソウザチェックマット)と対戦した。

試合開始早々、座り込んでハーフガードを作ったソウザは、そのままシングルレッグテイクダウンに持ち込み、場外際でバハウを倒してアドバンテージを先制。仕切り直し後、今度はバハウの方が引き込み。得意のスパイダーガードを作ると、ソウザの体を前倒しにしながら後転してスイープで2点を奪取してみせた。

下になりながらもバハウの左足を引き出して抱えた状態を作ったソウザは、負けじとXガードからのスイープを狙うが、バハウは長いリーチを活かしてバランスキープ。右足をソウザの両足に入れてニースライド・パスの体勢に持ち込んだ。バハウはそのまま低くプレッシャーをかけて膝でソウザの股間をスライド完遂し、サイドで抑え込んで5-0とリードを伸ばした。

そのまま逃げようとするソウザのバックに付いたバハウは、すぐに襟絞め一閃。これが完全に入ってソウザはすぐにタップ。バハウが世界レベルの強敵のソウザ相手に、スイープ、パス、極めとまるで黒帯が青帯を極めるが如く強さを見せ圧勝してみせた。

ということで、決勝はペナ×バハウというバッハ勢同士の組み合わせとなったのだが、ここでは大先輩のバハウが優勝を戦わずしてペナに譲ることになった。

さらにバハウは、続く階級別のミディアムヘビー級でも準決勝まで3試合連続で一本勝ち。決勝は、去年の11月に自ら黒帯を与えた教え子であるガブリエル・アルジェスにまたもや勝利を譲ったのだった。結局、今年のヨーロピアンは無差別で階級別の両方で7試合7一本勝ちという恐るべき強さを見せたバハウは「僕はミッションを持ってこの大会に臨み、まさにそれを達成したんだ。こうして白帯の頃からずっと練習をつけて、その成長を見届けてきた生徒たちや後輩たちが強くなってゆくのを見届けることができるほど、嬉しいことはないよ。僕はもうさんざんメダルを獲得してきたけど、今年もう一度だけ柔術世界王者になりたいと思っているんだ」とコメント。

今大会における充実ぶりを見る限り、その言葉が実現する可能性はかなり高い、と考えざるを得ないだろう。

ちなみにバハウに敗れたソウザは、優勝候補のペナが、上述のもう一つの無差別級準決勝で腕を極められて負傷したため棄権したこともあり、ヘビー級で優勝。ペナの腕を壊しながらも死闘に敗れたサントスは、スーパーへビー級を制覇している。

■リザルト 
【アダルト黒帯・無差別級】
優勝 フィリッピ・ペナ(ブラジル)
準優勝 ホムロ・バハウ(ブラジル)
3位 エルベルト・サントス(ブラジル)
3位 ジャクソン・ソウザ((ブラジル)
※決勝は両者戦わずにクローズアウト

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