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【REAL03】ベアナックル王者と対戦桜木裕司 <01>「大きい相手僕の刀が活かせるのか試したい」

Yuji Sakuragi【写真】UFCに燃え上がるものがあって戦い始めたわけでないと明言する桜木 (C)RYO HASEGAWA

12月5日(土)に横浜市中区横浜文化体育館で開催されるREAL03。同大会の優勝賞金200万が掛けられたヘビー級(120.7キロ)トーナメントに桜木裕司が出場、AFCベアナックルMMA無差別級王者ユン・ガンチョルと一回戦で戦うことが決まっている。
Text by Ryo Hasegawa

佐山聡門下も迎えて15年となった桜木に今大会出場への意気込みを尋ねると、自然と桜木の戦う意義、戦い理由を知ることとなった。

――今年は1月にRISE、4月にFGと立ち技の試合が続き、その後9月にGRANDSLAM、そして来月REALを迎える桜木選手です。ルールを問うことなく戦われていますが、立ち技・MMAの違いはあっても“戦い”であることは変わらない、そのような意識なのでしょうか。

「僕はヘビー級では小さいですけど若い時から無差別を想定してやってきて、今はどうしてもヘビー級が少なくなって戦う場所が少なくなっているのを感じています。特に総合はみんなどんどん落としていって、現行のみんなが求めているものとは格闘技を始めたきっかけが根本的に違うのかなと思います。

今の選手たちがUFCで勝つために、それは素晴らしいことですし、戦うことに対する対価もUFCは一番だと思うのですが、僕は元々そこに燃え上がるものがあって始めた訳ではないので」

――では改めてになりますが、桜木選手が格闘技を始めたきっかけは、階級で分けられた中ではなく無差別での強さを求めてであり、それは今も変わっていないと。

「そうですね。最初は極真空手で、4年に1度の世界大会で新極真の緑(健児)代表が優勝したり、小よく大を制すというか、小さい人間が大きい者を倒すっていうのが根源にあったんです。佐山先生もそうですし、その後で目黒ジムで沢村(忠)さんなんかとも接する機会があって、元々は梶原一騎先生が書いてきた劇画の世界に憧れて、男はこうありたい、そんなことを思って格闘技を始めて、気が付いたらこの年になっていました(笑)」

――格闘技のキャリアとしては何年になられるのですか。

「16歳からで今は38歳なので、22年になります」

――では、16歳の時に抱いた思いは、22年経った現在も変わっていないと。

「変わっていないです。同期の人間たちがみんな引退していく中でも、僕はたまたま昨年大山(峻護)選手の引退試合の相手を務めさせてもらって、その前は高橋義生さんだったり、でもいろんな人たちに『頼むよ』って来られるとやっぱり後に引けないですし、まだまだやらなきゃなって思います。ただ、やっぱり体に限界が来る時もあって、今年は正直2回ぐらい、体調の面で死にかけたことがありました。

それでも今生かされている状況を考えたら、戦いの神様はまだやれよって言ってくれているのかなって思います。だから、戦えなくなる時がいつ来てもおかしくないと思いますけど、気持ちが切れない限りは戦い続けます」

――今回はそういった体調不良を乗り越えた後で、REALへの参戦が決まりました。

桜木 ヒクソンの息子がデビューしたっていうのと、今回のメインになると思うんですけど、マルコス・ソウザと1回グラップリングでやっているんですよね(=マルキーニョス・ソウザとして、08年7月に「DEEP X 03」で対戦。1RにRNCで一本負けを喫した)。あれも突然のオファーだったんですけど、これが世界王者クラスかと。そういった部分でも面白い大会だなという印象です」

――打撃系の桜木選手には明らかに不利なマッチメイクでしたが、それでも断ることはしなかったのですね。

「やっぱり自分が信じてきたものを、僕としては戦いを通じて見せたいし、生き様を通していきたいと思うんです。そういう話が来るということは、絶対何かあるはずですし、実際前半で『行ける』と思った部分もあったんです(苦笑)。なので来たお話に関しては、それが基本大きいものであったり強いものであれば拒みません。それが何ていうんですかね、数合わせ的な、僕じゃなくても誰かでいいというものだったら、僕は出たいとは思わないです」

――では対戦相手が強い方が、より闘志が駆り立てられるということでしょうか。

「『みんなが断ってくるんだけど桜木君どう?』っていうんだったら喜んで出ます」

――普通は逆の気がします(笑)。実際そういう形でオファーが来ることがあるのですか。

「そういう形が多いんです(苦笑)」

――“困った時の桜木選手頼み”ですね(苦笑)。

「そういう風に取ってもらえて試合のオファーが来るっていうのはありがたいなと思います。ただ、他の人が断ったものに対して最後に僕のところへ来るのだったら喜んでですけど、僕じゃなくても誰かでいいのなら、その人に譲りたいです。そこはモチベーションが上がってこないです」

――では“受けてくれる選手がいない”というような形で話が来ると、逆に“俺が受けてやる”と思うというか。

「ものすごく気持ちが上がります。でも、そうやって気持ちにムラがあるのがいけないなと僕は思っているんですけど」

――話をお聞していると、桜木選手は強い選手と戦うことが何よりのモチベーションになっているように感じます。

「そうなんです。僕もだいぶ年がいって経験も積んできて、そういうワクワクすることが段々なくなってきたっていう部分もあるんですけど、やっぱり自分より大きい相手に対して、まだ僕の持っている刀が活かせるんだったらまだ試してみたいっていう気持ちがあります」

――体格差・階級を問わない戦いには“修行”のような感覚で臨んでいるのでしょうか。

「いや、修行っていう堅苦しいものではないですね。生き方なんです(苦笑)。それを今さら変えられないっていう(苦笑)。今さらそれを否定するのであれば、今まで生きてきたこと全てがウソになるので。もう格闘技を始めたきっかけがそういうところから始まっていて、やっぱり目の前に強い者がいてそれに対して引く部分があるのだったら、最初から戦うことを拒否すればいいんじゃないかって思うんです。

そこが格闘技をやっていない時から許せない部分があって、やっぱり強さ、権力であったり力に抑圧されることがすごく許せなかったんです。それは佐山先生がものすごく大事にされてきたことだし、ここにいることで“引くことが嫌だ”っていう思い、コンプレックスも解決できるんです。そのためにもまだまだやっていきたいです」

<この項、続く>

■REAL03対戦決定カードと出場選手

<REALウェルター級選手権試合>
マルキーニョス・ソウザ(ブラジル)
藤井章太(日本)

<フェザー級>
飯嶋貴幸(日本)
アムリジリガラ(中国)

<スーパーライト級T1回戦>
ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
上山龍紀(日本)

<スーパーライト級T1回戦>
マーチン・ピオンケ(ポーランド)
星野大介(日本)

<スーパーライト級T1回戦>
金子優太(日本)
ZUZU(北マリアナ諸島)

<スーパーライト級T1回戦>
カルロ・ペデルソリ(イタリア)
岡野裕城(日本)

<ヘビー級T1回戦>
桜木裕司(日本)
ユン・ガンチョル(韓国)

(組み合わせ調整中)
アミル・アリアックバリ(イラン)
クリスチャン・コロンボ(デンマーク)
ラドゥ・スピンゲル(米国)
トム・ササキ(ブラジル)
川口雄介(日本)
ジャック・ゴジラ・チェジェンスキー(ポーランド)

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