【WJJC 2015】世界柔術決勝リポート<03>フェザー級、ハファがホイラー&コブリーニャ越え
【写真】ホイラー・グレイシー、コブリーニャを抜き5度目のフェザー級制覇を成し遂げたハファは、5本の指を突き立て偉業達成をATOS応援団とともに喜んだ(C)MMAPLANET
5月28日(木・現地時間)より31日(日・同)にて、カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア州立大ロングビーチ校内ピラミッドで、IBJJF主催World Jiu-Jitsu Championship=世界柔術選手権が行われた。今年の競技柔術世界一を決めるこの大会、第3 回はフェザー級決勝&ライト級を振り返りたい。
<フェザー級決勝/10分1R>
ハファエル・メンデス(ブラジル/アトス)
Def. by 6-0
フーベンス・シャーレス(ブラジル/アリアンシ)
アリアンシ、アリアンシ・インターナショナルという名称で4選手を投入し、大本命のハファエル・メンデス包囲網を築いた最強アカデミー=アリアンシ勢。準々決勝でジョナサン・トーマスがマリオ・ヘイスに勝利を譲り、準決勝でもジャンニ・グリッポがフーベン・シャーレス・コブリーニャもクローズアウトとし、レギュレーションの不備を突いた物流作戦は功を奏すかと思われた。
迎えた準決勝、ハファは個の力で最強アカデミーを切り崩し始める。圧倒的な圧力でヘイスのガードを潰してパスを決めると、上四方から三角で固めて腕を狙い、たまらず腹這いになったヘイスをクルスフィックスで捕獲。左手首をモンジ・バカで極めて圧勝したメンデスは決勝進出を決めた。決勝は前述したように盟友グリッポに勝利を譲られたコブリーニャ、今年もまた、この二人による頂上対決が再現された。
開始早々引き込んだメンデスは、いきなりベリンボロでコブリーニャの尻を取ることに成功。そのままレッグドラッグに移行しつつ上を取って2点先行した。メンデスの技のあまりの力強さと精度に場内が震撼するなか、なんとか足を戻したコブリーニャは50/50の体勢へ。これまで何年にも渡ってこの二人の間で繰り広げられた態勢が、今年はモダン柔術否定派のコブリーニャの仕掛けによって見られることとなった。
一昨年まではもっぱらシーソーゲームが延々と続くのが常だったが、昨年はメンデスが上からダイブして尻を取ってバックを奪うことで差をつけているが、今年は時間的に見てもさらなる実力差が感じられる内要となった。昨年同様、6分過ぎにコブリーニャの体とマットの間に入り込んでバックを奪取したメンデスは、思わず視線の先にあったセコンドのギィ、そして振り返ってATOS応援団に笑みを浮かべる。
その後はあのコブリーニャを一方的に攻撃。世界一の座を欲しいままにして、なお進化を続ける怪物メンデスの強さは恐るべしとしか言いようがない。
それでもバックからチョークを狙われ万事休すと思われたコブリーニャだが、試合終盤までしぶとく守り続ける。やがて腰を浮かせメンデスのグリップを引きはがし、その体を自分の正面に持っていきながら上体を起こすことに成功する。ディフェンス面だが意地を見せたコブリーニャにも場内から大歓声が沸き上がる。コブリーニャはメンデスをリフトしたままの状態で客席に微笑みかけ、さらにメンデスにも言葉をかけたのだった。
しかし、残り時間僅かでコブリーニャが有効な反撃を見せられるはずもなく、試合は6-0でメンデス勝利。ホイラー・グレイシーとコブリーニャの4度を抜くフェザー級5度目の優勝を果たした。長年にわたって宿命のライバルと呼ばれたこの二人だが、ここにきて大きく差が開いてしまったようだ。5度目の世界制覇に対し、ATOS勢は声を大きく「ワン、ツー、スリー、フォー、ファーイブ」と喜びのチャント。対して、今大会で10度のアカデミー制覇を果たすことが決定的なアリアンシ勢は、それを上回る10カウントを返すという大人気のなさを見せる。
そんなアリアンシの重鎮コブリーニャはATOSのキッズ勢と笑顔を握手を見せるジェントルマン振りを発揮。終盤メンデスのチョークを凌ぎ切って体を起こした時に見せた──まるで敗れてなお長い間閉じ込められていた暗闇からついに脱出し、光の中に舞い戻ったかの晴れやかな表情といい、敗れなお勝敗やポイント争いとは関係ない部分で、見る者に生きる勇気を与えてくれる、記憶に残る試合だった。
<ライト級決勝/10分1R>
マイケル・ランギ(ブラジル/アリアンシ)
Def by Closing out
ルーカス・レプリ(ブラジル/アリアンシ)
昨年、ライト級を制して以来、圧倒的なパスガードの威力で勝利を重ねるルーカス・レプリが今年も決勝に進出。
もう一つのブロックでは、昨年同様にレプリの盟友ランギと、JTトレスの一戦が実現した。ここでランギは序盤に、得意のスパイダーからのスイープでトレスを返すことに成功。体勢が固定される間もなくトレスがすぐにスイープを返したことで、両者に2点が入るのではなく、ランギのみアドバンテージを獲得。その後ランギは、50/50のシーソーを経た上でこのポイントを守り抜いて勝利、去年の雪辱を果たし涙を浮かべる。
トレスとしては、スイープされた瞬間すぐさま返したことが仇となっての残念な敗北となってしまった。ある意味、「仕掛けに時間をかけてスイープをした側の方が、一瞬でスイープを返した方より得をしてしまう」というルールの盲点が露呈した試合であった。
とまれ、決勝はアリアンシ勢によるクローズアウト。昨年の覇者のレプリが、今年一番の難敵を倒したランギに優勝を譲った。来年はやはり、今年は負傷を理由に出場を見送ったホベルト・サトシ・ソウザの初戴冠を期待したいところだ。