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【WPJJC 2015】キーナン攻略。最大激戦区勝ち上がったエスティマ弟だが、ロの壁は切り崩せず

4月22日(水・現地時間)から25日(土・同)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのザイード・スポーツシティ内のIPICアリーナにて、アブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2015が開催された。

WPJJC2015レビュー、今回は大激戦区85キロ級の模様をお届けしたい。強豪が続々とエントリーし、大注目のこの階級。しかし、優勝候補本命の一人のアンドレ・ガルバォンが参加を見送ったこともあり、同ブロックにいた世界最強の中量級柔術家、レアンドロ・ロ(シセロ・コスタ)が順当に決勝に進出。もう一方のブロックは大激戦となった。

<85 キロ級準々決勝/6分1R>
キーナン・コーネリアス(アトス)
Def. 11-0
クラーク・グレイシー(クラーク・グレイシー)

早々に引き込んだクラークに対して、コーネリアスは横に倒れ込みながらバックを狙うなどの攻撃を見せる。さらに両足担ぎでクラークの体を折り畳むと、プレッシャーをかけて後転を余儀なくさせて背後に付き、そのままパスに成功。さらに上からクラークのギを掴んで引き起こしながらバックについて両足フックを完成、7-0とリードを広げた。さらにラペルを掴んだコーネリアスは、ニーインザベリーからマウントへ。さらに上からの三角締めの仕掛けから腕十字を狙った所で試合終了。ラペルガードのイメージの強いコーネリアスが、オーソドックスな上攻めでも強さを発揮し、クラークに何もさせずに圧勝した。

<85 キロ級準々決勝/6分1R>
ヴィクトー・エスティマ(グレイシー・バッハ)
Def. レフェリー判定
クラウジオ・カラザンス(アトス)

引き込んだエスティマは、カラザンスのラペルを引き出してスパイダーガードのように足を当てる、兄譲りのギャラクシーガードを作る。カラザンスの右上半身をコントロールしたエスティマは、さらに左足を引き出すことに成功。そのまま肩に抱えて立ち上がって倒そうとするが、カラザンスも耐えて上をキープ。この攻撃でエスティマにアドバンテージが入った。

残り時間が少なくなってゆくなか、カラザンスはアンクルを仕掛けて勝負に。エスティマは回転してプレッシャーを緩めようとするが、カラザンスもしつこく絞り続ける。やがてカラザンスにもアドバンテージが与えられて同点となったところで時間切れとなった。レフェリー判定はエスティマに。最後のカラザンスの極めより、下からのコントロールとスイープ狙いが認められた形となった。

<85 キロ級準決勝/6分1R>
ヴィクトー・エスティマ(グレイシー・バッハ)
Def. レフェリー判定
キーナン・コーネリアス(アトス)

世界柔術では階級が異なるため、なかなか見られないテクニシャン対決がここに実現。まずはエスティマが跳び付いてクローズドガードに。コーネリアスの右足を抱えながら右腕を狙ってゆくが、凌いだコーネリアスは立ち上がる。するとエスティマはコーネリアスの左脚を内側から抱えると、そのまま横回転してコーネリアスのバランスを崩す。コーネリアスが上をキープしたためスイープこそ成功しなかったものの、まずアドバンテージを先行した。

さらにエスティマは、自らの右手でコーネリアスのラペルを取り、そこに右足をスパイダーの要領で絡めるギャラクシーガードに。ラペルの攻防を熟知しているコーネリアスは、バランスを保ちつつ回り込んでのパスを仕掛けるが、エスティマも足を超えさせない。やがてエスティマは、準々決勝と同じ要領でコーネリアスの左足を引き出して伸ばすことに成功。アキレス腱固めのように抱えて上を狙うがコーネリアスはバランスを保つ。

残り時間が少なくなって来ると、エスティマは再びガードを閉じてハイガードでコーネリアスにしがみつく。コーネリアスが立ち上がると、またもやその左足を掴んでバランスを崩すエスティマ。それでも体勢を戻したコーネリアスは、横に大きく動いてパスを仕掛け背中を見せたエスティマの背後に回ることに成功。アドバンテージで同点に追いついた。さらにシングルバックで足を絡めるが、エスティマも体勢を戻すと下からコーネリアスの左脚に膝固めを仕掛ける。さらに右足でギャラクシーガードの仕掛けを作ったところで時間切れとなった。

そして、レフェリー判定の結果、勝者はエスティマに。いわゆるモダン柔術とはひと味違った、クローズドガードとギャラクシーガード、そして相手の足を下から引き出してのアキレスやスイープ狙いといったエスティマ兄弟独特の技術を駆使して、見事に階級上の超新星を下した。拮抗した技術を持つ同士の凌ぎ合いでは、試合が長引くと体重差が響いて来るのが必然であることを踏まえると、これも6分間という試合時間が生み出したドラマと言えるかもしれない。

<85 キロ級決勝/6分1R>
レアンドロ・ロ(シセロ・コスタ)
Def. アドバンテージ 3-0
ヴィクトー・エスティマ(グレイシー・バッハ)

大奮闘の末に決勝に進んだエスティマを待っていたのは、世界最強の中量級柔術家レアンドロ・ロ。エスティマは去年のこの大会の決勝、そして世界柔術の準決勝でロに苦汁を舐めさせられているだけに、期するものは大きいだろう。

試合開始早々に引き込んだエスティマは、クローズドガードに。そこからさっそくギャラクシーガードを作って前方に崩して煽るが、ロは抜群のバランスを発揮して倒れない。それでも執拗に前に崩すエスティマは、ダブルガードの体勢に持ち込んでアキレスを仕掛けるが、ロは対処して上を取る。ここで両者にアドバンテージが一つずつ入った。

さらにギャラクシーガードを作り直すエスティマ。ロは立ち上がると、丁寧にエスティマの足を押し下げてラペルの仕掛けを解除し、さらに横に回ってのパスを仕掛ける。エスティマはなんとか立ち上がって凌いだものの、残り40秒の時点でロにアドバンテージが加算されてしまった。両者スタンドで再開すると、すぐに引き込むロ。時間のないエスティマはアキレス腱固めに。しかしロは長い足を伸ばして防ぐと上を取る。もう一つロにアドバンテージが追加されたところで試合が終了した。

今回大活躍を見せたエスティマだが、ロの壁は敗れず。エスティマのさまざまな仕掛けにも、ロの抜群のバランスは崩れることはなかった。昨年キーナン・コーネリアスのワームガードに苦しめられ、ラペル掴みへの対処を磨いてきたことがここでも役に立ったのかもしれない。階級を超えて凄まじいペペースで闘い続けることで、ありとあらゆるタイプの敵の、ありとあらゆる技への対処をマスターしている怪物ロの強さが際立った決勝戦だった。

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