この星の格闘技を追いかける

【on this day in】1月14日──2012年

01 14 12【写真】強さを結果に結びつけること。パイセンには道場主だけでなく、格闘家としての集大成も見せてほしい(C)Marcelo Alonso/PVT

UFC142
@ブラジル・リオデジャネイロ、HSBCアリーナ
「いきなり白状すると──、小見川道大のことは苦手だった。PRIDE時代は知らない。戦極で猫を話題にしている時でさえ、柔道で強かった人らしい、強さが全て的な空気感が充満している彼が苦手だった。大晦日に3つのチャンネルで格闘技のイベントが生中継されている時代も、僕が取材する格闘家の多くが──名も知られぬ存在だったこともあり、柔道界から流れてきた人たちの強者のオーラが苦手だった。そんな彼と距離が近づいたのは、2度目のUFC参戦を機に、ひかりTVで一緒に解説の仕事をさせてもらうようになってからだ。あっけらかんとして、本当に豪快な人だった。で、礼儀正しい。その豪快さが、人並み外れているだけで、苦手意識を持つ自分の小ささを再発見させてもらった。解説の仕事は、決して彼に合っていたわけではない。でも、2度目、3度目と必ず改善が見られた。マイクのレベル調整のテストを下ネタで済ます僕に流されたのか、本番でも下ネタに走ってしまった唯一の解説者が小見川だった。会話のなかでの下ネタ占有率が僕以上なのは、今も小見川とマモルくらいだ。そんな小見川の左腕をユーリ・アルカンタラの腕十字が襲ったのは、今から3年前の今日。明らかにヒジから先がえぐい角度で、逆側に曲がっている。それでもタップをしない。この頃になると、下ネタでなくても会話も成立し、パイセンと呼ばせてもらうようになっていたが、負傷した腕を振りまわす小見川に、苦手だった頃の強さが全てという雰囲気を思い出した。そして、豪快な言動の裏に潜む繊細さや、様々な葛藤があったことを後に知った。そんなパイセンが改めて自らの道場を開いた。この締切が終わったら、お祝いがてらまたパイセンと下ネタ──もとい格闘技の話でもしにいきたいと思う」

on this day in──記者生活20年を終えようという当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。

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