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【DEEP106】中村大介─02─「凄い試合をしたいですね。小見川さんが引退する――最後の試合だからこそ」

【写真】コツコツと無骨に、そして楽しく。漢が惚れる格闘家──中村大介と、無骨に荒ぶりつつ心優しい──パイセンの対戦を思い切りファンも楽しんで欲しい (C)MMAPLANET

26日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP106で、小見川道大と対戦する中村大介のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameika

この試合をもって現役を退く小見川に対して、生涯現役を目指す中村は「もったいない」と言う。その理由を聞いてみると、答えはいたってシンプルだった。
「好きな選手だから――」そんな中村が語る、小見川道大との試合とは。

<中村大介インタビューPart.01はコチラから>


――なぜ小見川選手が引退するのか……引退については各々の理由があるでしょうし、何とも言えません。ただ一つ、小見川選手は自分が強いと思っている間に身を引きたかったのではないかと。

「そうですよね。そんななかで辞めるという決断をするというのは、凄いことだと思います。自分はまだ現役としてやり残したことがたくさんあって……。小見川さん、絶対に強いんですよ。今もバリバリだと思うので」

――小見川選手はMMAにおいて、2014年から試合間隔は空きながらも6連勝中です。

「えっ、バリバリじゃないですか(苦笑)。まだ細かく戦績までチェックしていませんでした……。それで辞めちゃうのは、もったいないですよ」

――対戦相手として考える前に、小見川選手に辞めてほしくなさそうですね(笑)。

「小見川さんのほうが年齢は5歳ぐらい上なんですけど(現在、小見川が46歳で中村は41歳)、同じ時代に戦っていたファイターで、好きな選手の一人なんです。今回は引退試合の相手として、小見川さんからのご指名だと聞いたんですけど、すごく嬉しくて」

――なるほど。

「でも今回は引退する選手ではなく、1人の強いファイターとして戦わないといけないですね」

――その小見川選手を相手に、スタートから一本かKOを狙い続ける中村選手のスタイルは変わるのでしょうか。

「最初に言ったとおり、3R戦うプランとかも、いろいろ考えています。巧みな技で捌いて勝つ、っていう展開もあると思いますよ。もともと秒殺勝利が理想っていうわけではないんですよね。どちらかといえば、シーソーゲームの末に極めて勝つことが好きで」

――中村選手のシーソーゲームといえば、印象深い試合があります。2004年10月の中尾受太郎戦です。中村選手が敗れた試合で申し訳ないのですが……。

「いえいえ、DEEPのウェルター級トーナメント決勝ですよね」

――記者席の正面にコーナーがあり、そのコーナー際で中尾選手が腕十字を仕掛けた時です。そこで両者が回転しながらコーナーを越えると、中村選手が腕十字を仕掛けている側に変わっていました。体勢が変わる瞬間がコーナーに隠れて見えなかったので、会場で取材していた時は衝撃的でした。

「あぁ~、ありましたね。あれは師匠の技なんです」

――師匠というのは、田村潔司さんですね。

「はい。腕十字へのカウンターで腕十字を取るというのは、田村さんから教わった技なんですよ。なかなか試合では極まらないけど、練習ではよくやっています。そう考えると、やっぱり自分も師匠から教わった技の流れがあるんでしょうね。今もそれをやり続けています。

師匠のもとを離れて10年以上経って、独立して自分のジムを持って8年……今でも、当時教わった技を磨き続けているんですよね。あの腕十字の入り方って、特別なものではないと思うんです。技だけじゃなく……また気持ちの話になってしまいますけど、念というか、殺気を磨き続けたくて」

――なるほど。試合の話に戻りますが、中村選手は長くライト級を主戦場としていましたが、当時からフェザー級で戦っていた小見川選手とは、MMAでの接点がなかったのでしょうか。

「MMAでは接点がないですね。一度だけグラップリングで試合をしているんですよ。クインテッドのトーナメントで」

――20218年4月に行われた、クインテットの団体戦トーナメント1回戦ですね。

「あの時は先鋒戦で小見川選手と当たって、時間切れ引き分けでした。あの時も気持ちが浮ついちゃったんです(苦笑)」

――意外と気持ちが浮つくことが多いですね(笑)。

「クインテットの旗揚げ戦で、その第1試合でした。しかも対戦相手が小見川さんですし。そこで自分が、クインテットとはこういうものだというのを見せようとして、空回りしました……。あの時は、僕が腕十字を仕掛けて、クラッチが切れたところでタイムアップになったんですよね。競技は違うけど、今回の試合はクインテットで対戦した時の続きという感じもあります」

――では、グラップリングで組んだ小見川選手の印象を教えてください。

「強いですよ、ブン投げられましたから。柔道なら完全に一本勝ちの投げで。加えてMMAではパンチも強いので、試合するのが本当に楽しみです」

――格闘技について話をしている笑顔を見ていると、本当に楽しみなのだろうなと思います。試合の前に浮つくことが多いのもそうですし。

「アハハハ、それは僕が未熟だからです(笑)。でも本当に、格闘技をやっているのは楽しいですよ。今は自分のジムを持っていますけど、自分が指導者だとは考えていなくて。会員さんと一緒に練習しているというか。それが楽しくて、自分は体がもつ限り続けたいです。小見川さん……、なぜ辞めちゃうでしょう?」

――そこがどうしても引っかかっているのですね(笑)。

「僕は引退する気がないので、そういう人間と引退する人間の試合になりますね。やっぱり気持ちの試合になるというか……いや、小見川さんも間違いなく格闘技が大好きですよね」

――間違いなく、大好きでしょう。

「僕も格闘技をやっていて楽しいし、大好きです。その気持ちが噛み合った、凄い試合をしたいですね。小見川さんが引退する――最後の試合だからこそ」

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