【Interview】Gloryでの水野&白井の敗北を受けて。長南亮に訊く(02)
【写真】言葉は厳しいが、汗が溜まったマットをすぐにモップでふき取るなど、細かい気配りができる指導者でもある長南亮(C)MMAPLANET
6日にベルギーで開催されたGLORY02に日本を代表するライトヘビー級ファイターの水野竜也、そしてウェルター級国内最強といっても過言でない白井祐矢が参戦し、ジェイソン・ジョーンズ、トミー・デュプレに敗れた。
両者の試合に帯同した長南亮(TRIBE.TOKYO.MMA=TTM代表)が現地で見て、感じた日本の中量級以上の今後の成長とは。世界を相手に戦い、世界と戦う選手の育成に努める彼の言葉とは。長南亮インタビュー後編をお届けします。
text by Takumi Nakamura
<長南亮インタビュー、前編はコチラから>
――両選手それぞれどういった点を改善していく必要があると感じましたか。まずは水野選手から。
「水野はもっと判定を意識しなきゃいけない。水野はここぞという場面で気持ちの弱さが出ちゃうんです。練習でそれを補うのはもちろん気持ちの面も変える必要があると思います」
――白井選手はいかがでしょうか。海外遠征は4連敗となってしまいました。
「白井は外国人慣れしてない、技術的な差がはっきり出たと思います。自分の場合はアメリカで練習して外国人選手と普段から肌を合わせていたから、UFCでも勝負できたと思うんですよ。でも白井は普段の練習では日本人と練習していて、日本人が相手だとパワーでねじ伏せることが出来る。
だから試合で外国人選手の当たりの強さを感じるとパニックになるんです。そういった練習環境や相手の影響はあると思います。本当は米国まで行って練習するのがいいんですけど……、あいつも簡単にそれが出来る生活環境にいるわけではないし、自分も含めてもっと日本の練習で取り組むべきことはあると思います」
――日本の練習も改善できると。
「あと……、昭和的な話かもしれないですけど、白井も水野も試合が終わった日にぐっすり寝ているんですよ。俺からするとお前らは試合でアドレナリンが出てないのかって。少なくとも俺は、試合の日の夜は興奮して一睡も出来なかった。俺はそういう精神状況は、試合に向けた集中力にも影響すると思いますよ」
――今後のことを考えると、日本にいては全盛期のような国際戦の経験を積む場はあまり期待できないという現状があります。長南選手としては海外での試合経験を積ませたいという考えですか。
「自分はそのつもりです。今、日本にいても“世界と戦っている”とは言えないわけですから。もちろんうちの中西(良行)みたいに別に仕事をしながら、自分のスタンスを持って国内で試合を続けることは否定しません。
それはそれでしっかり格闘技と向き合っているわけだから。でもバイトしながら格闘技で上を目指して、プロとして食っていくんだと思っている選手ならば世界を目指さなきゃ駄目でしょう。俺の指導者としての目標は、俺以上の選手を作ること。それが何かと言われたら、現時点ではUFCにレギュラー参戦して結果を残す選手、そこでタイトルに絡んでいく選手です」
――近年は日本以外のアジア地区の選手が急成長していて、プロモーションも大きくなっています。まずはそこで鎬を削っていくことも必要でしょうか。
「それは大事だとは思いますけど、アジアで結果が出せたからって喜んでいちゃ駄目ですよ。自分たちはもっと上を目指してやっているんで」
――今回のベルギー遠征を経て、練習面で変えていこうと思う部分はありますか。
「想定していたことは間違ってなかったと思います。逆にここは気を付けようと練習していた部分でやられていたので、そこでは練習と実戦で誤差を感じていました。
例えばうちは蹴りのマススパーリングを多くやる日があるんですけど、それは軽めのコンタクトの中で相手の攻撃やコンビネーションの反応を上げることが目的なんですよ。だから『余計なローとか絶対にもらうな』と口を酸っぱくして言っていたのに、試合になるともらっちゃう。
要は蹴りマスの目的までを理解していなくて『やれ!』と言われたことをやるだけに終わっている。もっと練習の意図を把握してやらないと身に付かないですよね。
そこにもつながってくるのが2人ともこちらが与えたメニューは頑張るのに、自分たちで練習内容やメニューを考えようとしない。それは俺とかが前に出過ぎちゃったのかもしれないけど、俺はもっと選手の方から『こういう練習がしたい』と提案があってもいいと思うんですよね」
――選手の自主性も長南さんは求めているということですね。
「もちろんこちらはメニューを考えてサポートしますけど試合で体を動かすのは自分じゃないですか。だから自分と対話することも必要なんですよ。そうやって考えることがないから試合と実戦で誤差があるわけで、そこは本人が高く意識をもって補う。こちらも選手と信頼関係を築いて上手く計画を立てて練習させる。どちらも必要だと思います」
――次回の海外遠征でTTMの選手が結果を出すところを期待しています。
「このままじゃ終われないですよ。またうちの選手がGLORYに出るチャンスがあれば、次は舐められないような試合をして、必ず結果を出してきます」